紫外線とがん

悪影響ばかりではない紫外線

嫌われ者の紫外線だが、これを使って皮膚で合成されるビタミンDはがんを予防する効果もあると考えられている。
しかし、疫学的なデータは白人を対象にしたものに限られ、東洋人についての関連は明らかではなかった。
 
国立がん研究センターが全国の約14万人を追跡して健康調査を実施している「多目的コホート研究」は喫煙、飲酒、食事、身体活動など、日本人における生活習慣とがんのリスクとの関係を明らかにしてきた。
今回、研究グループは血液検査をした3万3736人を対象に16年も追跡し、血液中のビタミンDの濃度が高い人は低い人に比べてがんになるリスクが低いという結果をまとめた。
 
このうち追跡期間中にがんになったのは3734人だった。
検査した人の中からまた別に4456人を無作為に選び、対照グループを設定した。
がんになった人と合わせた計約8千人について、血液中のビタミンD濃度を調べた。
 
研究グループはビタミンDの血中濃度が低い人から高い人へと4つの群に分けて、がんの発症との関係を調べた。
その結果、血中濃度が最も低い群を基準にすると、2番目に低い群はがん発症のリスクが19%、2番目に高い群は25%、最も高い群も22%といずれも低下していた。
 
がんの種類では、肝臓がんでリスクの低下が最も顕著だった。
肝臓がんは肝炎から進行するため、ビタミンDの抗炎症作用などがリスクを下げた可能性がある。
 
骨を強くし、がんも防ぐビタミンDは魚に豊富に含まれる。
多目的コホート研究でも魚を食べる人ほど肝臓がんの発症リスクが減ることが示されているが、日本人の魚の消費量は減り続けているため、大問題だ。
 
紫外線は美容の敵と嫌われるだけでなく、皮膚がんを気にする人が多いのも事実だ。
しかし、日本は世界で最も皮膚がんの少ない国の一つで、罹患率ではオーストラリアやニュージーランドの100分の1程度に過ぎない。特に北国の冬は、積極的な日光浴がお勧めだ。

参考・引用
日経新聞・夕刊 2018.5.9