採血いらずの血糖値管理

血糖値管理、採血いらずに 糖尿病患者の「痛み解放」

糖尿病のためインスリンを自己注射している患者が、血糖レベルを常時確認できる装置が2017年に登場、9月からは保険適用になった。
指から血を採って血糖値を測る従来の方法と比べ、身体の負担が少ない上、数値の上がり下がりを連続的に見られるため、危険な低血糖になるリスクを減らせる。
糖尿病治療の姿を大きく変える可能性を秘めている。
 
上腕に五百円玉大の白いセンサーを貼り付ける。
そこにスマホを一回り小さくしたような読み取り装置を近づけると、約1秒で皮下のグルコースブドウ糖)値が、無線で読み取られてディスプレーに表示される。
服やコートの上からでも、データの読み取りができる。
 
アボットジャパン(東京・港)が今年から国内で医療機関を通じて「フリースタイル リブレ」という装置を供給している。
センサーは微小な針が、皮膚のすぐ下にある間質液中のグルコース濃度を常時測っている。
センサーは2週間ごとに取り換える。
装着中に入浴や水泳・ランニングなどの運動も可能だ。

インスリンを使っている患者が最も気にしているのが、インスリンの効きすぎや過剰な運動によって低血糖状態になってしまうことだ。
低血糖は発見が遅れると意識障害や意識不明になるリスクがある。
このため患者は食事の前後や就寝前後など多い人は1日7~8回も採血を伴う測定を行っている。
 
この装置は、連続測定をしているため、変動のパターンをたどることができるほか、血糖値が上昇中なのか下降中なのかの判断もできるメリットも大きい。
 
1日当たりの血糖値のチェック回数が増えるほど、低血糖になるリスクが下がる傾向がある。
血糖値の変動パターンを見て、インスリン注射の回数やタイミングを工夫できるためだ。

同様の装着型センサーを使って、最長14日間の計測を行い、患者がこれを医師に持ち込んでデータを見てもらう方法もある。
これは昨年12月から保険適用になった。
 
長期の連続データをもとに患者の血糖の変動パターンを見える化できるので、治療方針の見直しなど的確な指示ができるようになる。
 
患者の負担額は、自分でチェックする装置を使う場合、3割負担で月額5000円ほどになる。
現在は、健診で血糖値が高めだと言われた人が、こうした装置でチェックして進行を予防するといった利用法も有望だ。

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糖尿病の疑い 1000万人 インスリン使用は130万人
糖尿病は血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が異常に高くなる病気。
血糖値を正常に保つホルモンであるインスリン膵臓の障害で全く分泌されなくなる1型糖尿病と、肥満や運動不足、ストレスなどをきっかけにインスリンの分泌が減ったり、効きが悪くなったりする2型糖尿病に大別される。
 
血糖値が高いと血管が傷つき、網膜症や腎症などの合併症のほか、脳梗塞心筋梗塞の原因になる。
血流障害によって足が壊疽を起こして切断を余儀なくされることもある。
治療は食事制限や運動療法、血糖値をコントロールするインスリン療法などがとられる。
1型の場合はインスリン使用が必須となる。
 
厚生労働省が4~5年ごとに行っている国民健康・栄養調査によると、2016年に糖尿病が強く疑われる人は、全国で約1000万人に上ると推計された。
高齢化を背景に、前回推計の12年調査から約50万人増えて、初めて1000万人の大台に乗った。
インスリンの使用患者は130万人を超えるとみられている。

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2017.9.28


<関連サイト>
FreeStyleリブレ フラッシュグルコースモニタリングシステム
http://myfreestyle.jp/products/freestyle-libre-system.html

アボット、糖尿病患者向けグルコースモニタリングシステム「FREESTYLEリブレ」が日本で保険適用となることを発表
http://www.abbott.co.jp/media-center/press-releases/09-04-2017.html

糖尿病患者向けグルコース測定器 「FREESTYLEリブレ」フラッシュグルコースモニタリングシステムが2017年度グッドデザイン賞を受賞
http://www.abbott.co.jp/media-center/press-releases/10-10-2017.html

FreeStyleリブレ、医師が赤字じゃ普及せず? 来春の診療報酬改定での点数アップに期待集まる話題の新製品
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201712/554195.html
(要パスワード)
・点数は「月20回以上測定する場合」の400点から、「月に120回以上測定する場合」の1500点までの6段階。患者が1型または2型糖尿病で、インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬を自己注射していることが条件となっている。
・機器本体のメーカー希望小売価格は7089円。使い捨てのセンサーは単独では販売されておらず、観血的な自己血糖測定(SMBG)に使用する際の電極とセットでしか購入できない。センサーと電極のセットの価格は、電極の枚数とは無関係に、センサー2個で1万3800円となっている。

・本体やセンサー・電極には保険償還価格が設定されていない。
保険で適用する場合は全て病院側の負担になるが、「月に120回以上測定する場合」の1500点を技術料として算定しても、本体料金を含めると初回は赤字になる。本体は使い捨てではないので、2回目以降はセンサーと電極のセットを購入するだけで1500点を算定できるが、それでも利益はわずか。本体をレンタルではなく譲渡するとすれば、1人の患者が6カ月継続使用して、ようやく本体代金を回収できる計算だ。
また2型糖尿病の場合、血糖自己測定器加算で算定できるのは最大でも「月に60回以上測定する場合」の860点なので、2型糖尿病の患者にFGMを1カ月間使用すると、本体をレンタルしたとしても1人当たり数千円の赤字が生じる。