わずかな知識で運命分かれる がん

わずかな知識で運命分かれる

今や男性の3人に2人、女性の2人に1人ががんになる。

私的コメント
漠然と2人に1人と考えていましたが、男女で分けて考えると男性の場合は3人に1人しかがんにならないということになります。

特に男性は50歳を過ぎてから急激に発がんリスクが高まるから、定年を迎えてこれから人生を楽しもうという矢先に、この病気で命を落とす人が後を絶たない。
働く世代の死因の半分以上、病死に限れば9割をがんが占めている。
がんを増やす最大の原因は細胞の老化だから、定年の延長はさらにこの割合を高めるはずだ。
 
そして、がんという病気はわずかな知識があるかどうかで運命が大きく分かれてしまう病気だ。
とりわけ、自分自身の発がんリスクを知っておくことが大事だ。
 
例えば、胃がんの原因の98%程度がピロリ菌だ。
胃の中でも生きられるこの細菌は、免疫力が完成していない乳幼児期に感染し、慢性の炎症を起こすことで胃がんの原因となる。
何らかの機会に血液検査などでピロリ菌感染の有無を確かめておくとよい。
なお、除菌をしても慢性胃炎の履歴は抹消できませんから、胃がんのリスクは残るといえる。
 
肝臓がんの原因の8~9割がB型またはC型の肝炎ウイルスで、保健所に行けば無料で検査が受けられる。
子宮頸がんも、発症原因のほぼ100%が性交渉に伴うヒトパピローマウイルスの感染だ。
性経験のない女性にはほとんどリスクはないことになる。
 
乳がんの発症率を高めるのは女性ホルモンだ。
月経のある期間は乳がんのリスクが上がるから、出産経験がなく、生理が長く続く女性はリスクが高まる。こうした方は毎月の自己触診と、2年に一度のマンモグラフィーを欠かさないことが大切だ。
 
O型以外の血液型の人は膵臓がんのリスクが高まるが、血液型以上に膵臓がんの危険を高めるのが糖尿病だ。
糖尿病になると膵臓がんや肝臓がんはなんと2倍、がん全体でみて2割も増える。
糖尿病と診断されたらがん予備軍だと覚悟し、検査を心がけるべきだ。
 
喫煙や毎日3合以上の大量飲酒はがんを6割も増やす。
リスクを知るどころか、自らリスクを高めることになってしまう。

執筆
東京大学病院・中川恵一准教授

参考・一部引用
日経新聞・夕刊 2018.8.29