飲酒の悪影響、喫煙が助長

飲酒の悪影響、喫煙が助長

日本人男性の発がん原因のトップは喫煙で、第2位はピロリ菌、肝炎ウイルスなどの感染症だ。
第3位は飲酒で、男性の発がん原因の9%を占める。
肥満と野菜不足、運動不足はいずれも1%に満たないので、いかにお酒の影響が大きいか分かる。
しかし、お酒を飲んでもたばこを吸わなければ、がん全体のリスクはほとんど上がらない。
40~59歳の日本人男性約3万5千人を10年間追跡した大規模な疫学研究でも「時々飲む」という人を「1」としたときの相対リスクは、適量といわれる「1日1合未満」でも、喫煙者は1.69だが、非喫煙者は0.87とかえって低下している。
1日3合以上の多量飲酒の場合、非喫煙者はほとんどリスクが上がっていなかったが、喫煙者は倍以上になる。
非喫煙者は、飲酒量が増えてもがんの発生率は高くならないのに対し、喫煙がプラスされると確実に高くなっていく。
つまり飲酒によるがんのリスクは、喫煙によって助長されるわけだ。
ただし、口腔、喉頭咽頭・食道など、飲んだお酒が通過する部位のがんや、アルコールを分解する肝臓のがんは別だ。
「飲酒関連がん」と呼ばれるこれらのがんは、たばこを吸わない人もお酒の量が増えると発がんリスクは増加する。
飲酒量が1日2~3合の非喫煙男性は、時々飲む非喫煙者に比べがん発生率が3倍以上、1日3合以上で5倍弱になっている。
ここに喫煙が加わると、がんになるリスクがさらに高まる。
また、お酒で顔が赤くなる方はより注意が必要だ。
このタイプの人が大量にお酒を飲み、たばこを吸うと食道がんのリスクは桁違いに増える。
受動喫煙は肺がんを3割も増やすが、「受動飲酒」はないからだ。
日本人男性の喫煙率が3割を切るなか「たばこを吸わない酒飲み」が増えている。
このタイプにとっては飲酒関連がんの予防が大切だ。
食道がんでは熱い食物を避け、野菜や果物を摂取することでリスクを下げることができる。
肝臓がんではコーヒーが有効だ。
節酒を含め、生活習慣を見直して飲酒関連がんの予防を心がけよう。

執筆
東京大学病院准教授・中川恵一先生

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2018.11.7