声は健康のバロメーター

声は健康のバロメーター 変調から心身への負荷に気付く

肺炎や脳梗塞の可能性/ストレスの計測も
「声がかさつくようになった」「話が聞き取りにくいと言われることが増えた」など、自分の声の変調に心当たりはないだろうか。
声は肺炎や脳梗塞などになるリスクを知らせてくれる健康のバロメーターだ。
人の耳では気づかない微妙な声の変化を解析して、心の健康維持につなげるサービスも始まっている。

「あー]と声を出してみて、声が10秒続かなかったら黄信号だ。
息が漏れるばかりで声にならない「かすれ声」を加齢のせいと諦めるのは禁物だ。
声がかすれる原因は声帯の異常にある。
左右2枚の薄い膜からなる声帯は、閉じたり開いたりすることで肺につながる気管の蓋をする役目を担っている。
さらに声帯がぴったり閉じた状態のところを呼気が通過すると、膜が細かく振動して声になる。
ただ、加齢によって声帯やその周辺の筋肉が萎縮すると、2枚の膜がぴったり閉じず、声を出すときに呼気が隙間から漏れ出してしまう。
声がかすれる原因だ。

声帯の萎縮は健康を脅かす。
一つは誤嚥性肺炎。
健康なら食道に流れる食べ物や液体が気管に入り込んでも、声帯がブロックし、むせることで異物を押し返すことができる。
しかし声帯が萎縮すると、異物の流入を防げなくなり、肺炎につながるおそれがある。
さらに、肺に息をため込めなくなるため、全身に力を入れて踏ん張ることも難しくなる。
歩くときや立ち上がるときに力を入れられず転倒につながることもある。
声の響きが悪く、くぐもって聞こえる場合にも注意が必要だ。
首が不自然に曲がって、頸動脈の一部に負荷がかかっており、脳梗塞につながる恐れがある。
声の変調は自分では気がつきにくい。
少しでも気になったら、耳鼻咽喉科を受診したい。
声に注目して心の健康を計測するサービスも始まった。
日立システムズが東京大学と共同で開発した「音声こころ分析サービス」ではスマートフォンスマホ)に向かって話しかけるだけで約1分間で心のストレス状態を測れる。
「ストレスを客観的に見えるようにして、息抜きや業務の改善などに生かしてほしい」と日立システムズはいう。

なぜ声に注目したのか。
開発に関わった日立システムズでは「声には本人にコントロールできない要素があり、ごまかせない」と明かす。
音声こころ分析サービスでは、スマホに表示された短い文を読み上げ、声の周波数を解析してその日のストレス状態を数値で示す。
脳にストレスがかかると、のどの筋肉が緊張し、若干声が高くなる現象に注目した。
人の耳では聞き分けられないくらい微細な周波数の変化を捉えるため「声色を変えようとしても見破れる」という。
アンケート形式でストレスをチェックすることは多いが、自分を偽って答えることもできる。
同社は社員のストレス状態を正確に把握できなければ、職場改善はむずかしいとみて新サービスを開発した。
自分でも意識していなかったストレスを捉えることができれば、対策を早めに打つことも可能になるだろう。