歯髄やへその緒活用を活用した再生医療

不要な細胞で再生医療 歯髄やへその緒活用

骨髄由来の幹細胞を使うことが多かった細胞薬品の開発に変化が訪れている。
中堅製薬のJCRファーマと帝人は歯の神経である歯髄、日本トリム傘下のヒューマンライフコード(東京・千代田)と東京大学は臍帯(へその緒)を使った医薬品の臨床試験(治験)を始める。
骨髄の採取は提供者(ドナー)の身体的負担が大きい。
これまで捨てていた歯髄や臍帯など入手しやすい細胞を活用し、一般的な治療手段に育てる。

JCRファーマと帝人は歯髄由来の幹細胞を使った急性脳梗塞の治療薬の治験を年内に始める。

歯髄は提携した歯科医院の治療で抜いた歯から、患者の同意を得て入手する。
歯髄は細胞の増殖性が骨髄の倍という特徴がある。
医薬品原料として安定調達がしやすいことから、薬を大量生産でき医療費も抑えられる。
 
開発中の治療薬は静脈に注射する。
脳梗塞による酸素不足でダメージを負う神経細胞の保護や炎症の抑制、血流の改善などの効果を見込む。
発症から数日たってからの投薬でも有効だといい、同様の治療薬はこれまでのところ世界にないという。      

急性脳梗塞の発症者は年間17万人とされる。
発症後早期に治療しないと重い後遺症や死亡へのリスクが高まるが、救急搬送時に近くに対応できる病院が無く処置が遅れてしまうことも多い。
 
骨髄は、背中側から骨盤に専用の注射器をさして吸引するため、ドナーの身体的負担が大きい。
また、骨髄は海外から輸入が多いため、輸入先の国々を巡る国際情勢が悪化した際に原料調達が難しくなる恐れがある。
 
細胞薬の原料として臍帯にも注目が集まる。
ヒューマンライフコードは、臍帯から取り出した細胞を利用する細胞薬品の製品化に向けた治験を20年にも始める。

臍帯は日本国内で集められるうえ、ドナーである赤ちゃんや母親の体を傷つけることなく採取できるメリットがある。
 
同社は東京大学医科学研究所と連携して治験を進める。
同研究所が連携する産婦人科医院から、家族の許可を得てさい帯の提供を受ける。
 
細胞薬品は、白血病の治療に伴う過剰な免疫反応「急性移植片対宿主病(急性GVHD)」の治療に使う。
GVHDは治療が難しいケースも多く、死亡率も高い危険な合併症とされている。
 
開発中の治療薬は患者の静脈に注射する。
臍帯から取り出した細胞が放出するたんぱく質が免疫抑制機能を持つことに注目し、過剰な免疫反応を抑える効果を狙う。
 
臍帯は増殖する能力が高く、1本の臍帯から成人300人分の細胞薬品をつくることができ
るという。
 
米シアトルのバイオベンチャー、ノラ・セラピューティクスは臍帯から取れる「臍帯血」の細胞を利用する細胞薬品の治験を19年にも日本国内で始める。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2018.8.18