冬の「かくれ脱水」に要注意

冬の「かくれ脱水」に要注意 気づきにくく重症化も

https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1702P_X11C12A2000000/
脱水症状は夏の暑い時期だけ注意すればいいと考えがちだが、実は冬場にも、気がつかないうちに体の水分が奪われる「かくれ脱水」がある。
主に空気の乾燥が原因で、症状が出ると、重症化しやすいという特徴がある。
脳梗塞などの原因ともなり、専門家は注意を呼びかけている。

空気の乾燥で知らないうちに
かくれ脱水は体の水分が体重の1~2%程度減ったごく初期の状態のことを指す。
病院に行かなくても、簡単に予防や対応ができるが、甘く見るのは禁物だ。
あらゆる病気に発展する危険をはらんでいる。

夏の脱水は有感蒸泄といい、水分が汗として流れ出るのを自覚しやすい。
水分とともに体内の電解質も減るので、こむら返りなどが起きて気づくこともある。
これに対し、冬は主に皮膚から水分が奪われる不感蒸泄となり、知らないうちに脱水が進む。
電解質の喪失も少なく、症状はなかなか出ない。

不感蒸泄で奪われる水分は体重1キロ当たり1日平均15ミリリットル(年平均)といわれる。
60キロの人なら1日900ミリリットルが体外に出ている計算だ。
乳幼児は大人の3倍の量が奪われる。空気が乾燥している冬場は不感蒸泄の量が増える傾向にある。
かくれ脱水の状態の時は気管、胃、食道などの粘膜が減少し、感染症にかかりやすくなる。
ノロウイルスによる胃腸炎やインフルエンザを発症すると、高熱や下痢、嘔吐によって水分がさらに奪われる悪循環に陥るケースもある。

「食欲がない」も兆候のひとつ
脱水が進むと、血圧が低下し、頭痛になったりろれつが回らなくなったりする。
血液はどろどろになり、消化器の血流障害で消化不良や下痢になる。
これらの症状から二日酔いを連想する人が多いだろうが、二日酔いはアルコールの利尿作用によって起きる典型的な脱水症状だ。

冬は1年で最も心筋梗塞脳梗塞が起こりやすい時期。
日々の気温差が大きく、血圧も激しく変動する。
脱水で血流が悪くなれば、発症リスクは増え、最悪の場合、命を落とすことにもなりかねない。
食欲がない、気力が湧かないなど、少し調子が悪いと思ったら、かくれ脱水を疑う。
ほかに、
・唾液が少なく物が飲み込みにくい
・皮膚が乾く
・排尿回数が減る
・便秘気味
なども兆候だ。

高齢者の場合、認知機能が低下しているような状態になることもある。
原因が見逃され、脱水に伴う症状が進んでしまうおそれがある。
予防するには、小まめな水分補給が不可欠だ。
起床後や就寝前、食事中など1日8回程度、コップ1杯の水やお茶を飲むのが理想的だ。
夏と違い、電解質を含む経口補水液は下痢と嘔吐が1日2回以上あるか、熱が37度を超えるまで意識的に取る必要はない。

部屋の湿度を50~60%に保つこと、手袋や靴下で肌の露出を減らすことも効果的。
冬の野菜は水分の少ない根菜が多くなるため、白菜や水菜などを意識的に多く食べることも大切だ。
気候変動の影響で大気の湿度が低下し、家の機密性が高くなるなど、現代社会はとかく乾燥しやすい。
忘年会などでアルコールの量が増える時期は、意識的な水分補給を心がけたい。

参考・引用 一部改変
日経新聞 2013.1.2