子どもの目を紫外線から守る

子どもの目、紫外線から守るには 屋外スポーツも注意

日差しが強まる季節がやって来た。
背丈が低い子どもは紫外線を多く浴び、目に異変を起こしやすい。
中高生はクラブ活動で紫外線を浴びる機会も多い。
目の病気の予防には、つばの広い帽子や紫外線カットの効果のあるサングラスなどが有効だ。
早いうちから対策をとることが欠かせない。

症状ある生徒 屋外部活で多い傾向も
ある高校野球部3年の梶Kさん(17)は、屋外練習ではサングラスを欠かさない。
今春の選抜大会でもサングラスをつけてプレーした。
 
小学3年のとき右目に異変を感じて病院を受診したところ、紫外線が関係する「翼状片」と診断された。
白目の細胞が増えて血管とともに黒目のほうに伸びてくる病気だ。
悪化すれば視力が低下し、手術が必要になることもある。
 
Kさんは症状の悪化を防ぐため屋外では紫外線をカットするサングラスをかけている。
だが、周りから「格好つけて」と陰口もたたかれたこともあった。
「もっとこの病気のことを多くの人に知ってもらい、偏見がなくなってほしい」と話す。
 
紫外線が関係する病気にはほかに「瞼裂斑」がある。
白目の一部がシミのように濁って盛り上がる病気だ。
これ自体はほぼ無害だが、翼状片に進行する場合があるという。
 
ある大学医学部で2010年に、部活動をする中学生293人の目を調べたところ、野球で6割、サッカーは4割に瞼裂斑が見つかった。
屋内の部活動に比べて約2倍高かった。
16~17年に大学生223人も調べたところ、サッカーの瞼裂斑は屋内スポーツに比べて4.7倍、野球やソフトボールは3.5倍高かった。
 
瞼裂斑はどれくらい目に紫外線を浴びたかの指標になる。
翼状片を手術しても再発の可能性もある。
対策をとることが欠かせない。
 
紫外線が多いとされる豪州では学校でサングラスの着用が認められている例もあるという。
だが、日本ではピアスのような装身具のI種ととらえて校則で着用を禁じる学校もある。
肌への対策の日焼け止めに比べると、目の対策はあまり進んでいないのが実情だ。

帽子・サングラス・コンタクトが有効
紫外線は1990年代以降、国内では増える傾向にある。
環境省によると、大気汚染の改善で日光を遮る汚染物質が減ったことや、天候による影響などが原因という。
 
地面の反射で、身長100センチの子どもは170センチの大人に比べて目に浴びる量は1.1~1.4倍になる。
紫外線は白内障や老眼の早期発症にもつながる可能性があり、早い時期から目を守ることが重要だ。
 
目に入る紫外線を防ぐには、
①つばのある帽子
②紫外線カット効果のあるサングラスか眼鏡
③紫外線カット効果のあるコンタクトレンズ
が有効だ。

ある実験で、3点の中から複数の対策をうまく組み合わせると、目に入る紫外線をほぼ防げることもわかった。
 
帽子はつばの長さが7センチ以上で全周にあり、やや下向きの形が最も効果的という。
野球帽の場合は、目の前に影ができるよう深めにかぶる。
 
サングラスは、激しい運動をしても外れにくいスポーツタイプのものが市販されている。
透明でも紫外線カット効果があるレンズを選ぶ。
色が濃いレンズは、瞳孔が開いて目に紫外線が入りやすくなることがあり、注意が必要だ。
 
コンタクトレンズも、透明でも紫外線カット効果があるものを選ぶ。
紫外線カット効果が無いコンタクトレンズ利用者は、サングラスに比べて瞼裂斑の大きさが約3倍だった。
 
著しく光を反射するタイプでないサングラスは、高校野球やリトルリーグでは審判などに申し出れば、診断書がなくても試合で使える。 
あるん団体が2月、NPO「紫外線から眼を守る Eyes Arc」を立ち上げた。
沖縄県の小中学校での調査をしたり、通学や体育でかける子ども用サングラスを寄贈したりしている。
事務局では「子ども用の紫外線カットサングラスの使用について、教育現場に理解を求めたい」と話す。
 
環境省は「UVインデックス」という紫外線の強さを示す基準が「3」以上になる日中の時間帯の屋外での活動を避けることを勧めている。
有害紫外線モニタリングネットワークで紫外線情報を公開している。

朝日新聞・朝刊 2018.6.6

関連サイト
紫外線から子供の目を守る
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/262