ナッツ食べて「がんリスク」を減らす

ナッツ食べてリスク減

ナッツ類は、脂質を多く含み、少量でもカロリーの多い食品だが、不飽和脂肪酸、カルシウムなどのミネラル、食物繊維といった栄養素が豊富に含まれている。
ひとにぎり(30グラム程度)のナッツ類を毎日食べることが勧められており、肥満の解消の他、メタボリックシンドロームや高血圧などの予防に効果があることが、多くの研究で確かめられている。

米国のルイジアナ州立大学の研究チームが1万4386人のデータを解析したところ、ナッツ類を日常的に食べている人は、そうでない人に比べ肥満が25%少なく、腹囲が大きい人が21%も少ないことが示され、血糖を下げるインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」も改善していることが示された。

さらに、ナッツ類にはがんの予防効果もあるという研究結果も出ている。
ハーバード大学などの研究チームはナースをはじめとした医療従事者12万人近くを追跡したところ、ナッツを多く食べるほど全死亡率が減少し、がん死亡も有意に少なくなることが分かった。
もちろん、喫煙や運動などの生活習慣や果物や野菜の摂取量など、がんに関わるほかの要素の影響を排した上での結果だ。

また、メイヨークリニックとミネソタ大学の合同研究チームが、食事と発がんリスクとの関連を調べた36件の研究を、統合的に分析する「メタアナリシス」という解析をしたところ、がんの罹患リスクはナッツによって有意に減少することが明らかになった。
特に子宮体がんの発症リスクは42%も減っていた。
すい臓がんで32%、直腸がんで24%減少し、がん全体では15%減と見積もられた。
カロリーの高いナッツで肥満のリスクが減るのは、満腹感を得られ食事の量が減るからだといわれているが、個人的な体験からも納得だ。

がん予防のメカニズムは分かっていないが、がんのリスクを高める肥満やインスリン抵抗性を改善することがポイントかもしれない。

東京大学病院・中川恵一 准教授
日経新聞・夕刊 2017.3.16