食物依存性運動誘発アナフィラキシー

食物アレルギー、運動で発症恐れ

東京都内の中学2年の男子生徒(13)は小学校の時に2度、体調の急変に見舞われた。
 
最初は5年生だった。
サッカー大会前の2017年1月、放課後に自宅に戻って菓子パンをほおばり、自転車で校庭に戻った。
練習を始めて30分ほど経つと目がかゆくなり、せきが出てきた。
トイレの鏡をのぞくと、左目が大きく腫れていた。息も苦しい。
 
保健室に行くと、養護教諭はアレルギーを疑い、母親に直ちに連絡。
これまでにアレルギーを発症したことはなかったが、総合病院で受診すると、じんましんが全身に出ていた。
 
医師は、食後の運動で発症する「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」の疑いが強いと診断。
激しいアレルギー症状が出て、ときには命に関わると言われた。
小麦を食べた場合、最低2時間は運動を避けるよう指導され、一時的に症状を和らげる自己注射「エピペン」を処方された。

この母親は学校と相談し、午後に体育がある日の給食から小麦を除いてもらった。
だが、6年生になった6月。
午後の体力測定で20メートルシャトルランをすると頭が痛み、気持ち悪くなった。
保健室で休むと、胸の奥も痛い。
この日の給食は大麦ご飯だった。
 
休んでも胸の痛みは回復しない。
たまたま健診で学校にいた耳鼻科医の判断でエピペンを打ち、救急車で病院に運ばれた。
やはりアナフィラキシーと言われ、秋に検査入院して「運動誘発」と確定診断された。
 
中学校では、給食の食材に気をつけながらサッカーを続けている。
松原さんは「学校の迅速な対応に救われ、息子は本当に幸運だった。自分も含めて皆で知識を深めないと」と話した。

■直後の運動、避ければ摂取可能 小麦、最も多く
日本スポーツ振興センター(JSC)の14~16年度の学校事故データを産業技術総合研究所産総研)が分析すると、運動誘発は年間平均155件で、食物アレルギー668件の2割超を占めた。
男子が104件と、女子の51件の2倍。
学年別では小学5年から増え始め、中学生が特に多い。
給食後の昼休みのサッカーなど運動の最中や5時間目の体育などに集中していた。
 
日本小児アレルギー学会が症例の研究などをもとに作成した指針によると、運動誘発では、じんましんなどの皮膚症状がほぼ全例で、呼吸困難などが7割で、血圧や意識の低下などのショック症状が5割でみられる。原因の食材は小麦が多く、次に甲殻類。近年は果物も増えている。
 
食後に体を動かす機会の多い学校で初めて発症する子どもが少なくない。
一般に小さいうちは男子の方がアレルギーが多いという。
運動誘発の男女差には、運動量の違いも影響しているとみられる。
認知度が低く、診断の遅れから繰り返し発症することもある。
まずは学校関係者が疾患を知り、食後の運動で血圧低下や呼吸困難などがあれば疑いたい。
原因食材を食べなければ運動は可能で、食べても直後に運動しなければよい。
子どもの生活の質を保つよう注意することが大切だ。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2019.5.13

関連サイト
食物アレルギーに占める「運動誘発」
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/304