増える百寿者 人の限界寿命はいくつ?

増える百寿者 人の限界寿命はいくつ?

高齢化で、100歳以上のお年寄り「百寿者(センテナリアン)」の数が増えている。
健康調査や遺伝学的解析から、何が分かってきているのだろうか。

国内の百寿者は、統計を取り始めた1963年は153人だったが、介護保険が始まった2000年ごろから急増。
18年には6万9785人となった。
男女比はログイン前の続き、男性1に対して女性7です。
急速な増加に国の財政難も加わって、毎年100歳になった人に国が贈る銀杯が、16年度には純銀製から銀めっき製に変わりった。

    □     □

百寿者の共通点として挙げられるのが、体内の炎症の少なさだ。
炎症は、けがをしたり、感染症にかかったりして起きる急性のものと、熱や痛みはないものの血管などの細胞がじわじわ傷つく慢性のものがある。

慢性のものは、細胞の老化が関係していると言われる。
老化した細胞は、炎症を引き起こす物質を分泌。
さらに周りの細胞も傷つき、老化していくと考えられている。
動物実験レベルで、老化した細胞のみを薬でなくす研究も始まっているが、人に応用できるかはまだ分かっていない。

長寿に対する遺伝の寄与率は、2割程度と推計されている。
事故や生活習慣など環境に影響される部分が大きく、長寿に関連する遺伝子を見つけるのは難しいのが現状だ。

そうした中で、人種を越えた長寿関連遺伝子として知られるのが「Apo E(アポイー)Apo E遺伝子」だ。
この遺伝子にはいくつかの型があり、ある特定の型だとアルツハイマー認知症のリスクが高まると言われている。
そして、110歳以上のお年寄りは、その型を持つ人が少ないことも分かっている。

脳の老化である認知症など、生きていく中でかかる様々な病気になりにくい遺伝素因を持つ人が長寿なのではないか、と指摘する専門家もいる。

人の限界寿命が何歳かはまだ決着がついていない。
16年、英科学誌「ネイチャー」に「人間の寿命が125歳を超えることは難しい」とする論文が載った。
一方、18年には米科学誌「サイエンス」で、人の寿命がまだ上限に達していない可能性を指摘する論文が発表された。

どこかに限界はあるだろうが、予防医療などの発達で、まだ人の限界寿命はのびる可能性がある。
決着にはまだ時間がかかる。

実は、ひとくちに百寿者と言っても、その状態は様々だ。
100歳時点で認知症もなく自立している人は全体の2割程度。
残りの人は、認知症があったり、介助が必要だったりする。

    □     □

110歳以上の「スーパーセンテナリアン」は、100歳時点で自立していた人がなる確率が高いと言われる。
15年の国勢調査で百寿者は約6万人なのに対し、110歳以上は約150人と、極めてまれな存在だ。
これらの人々を研究することは健康長寿の秘訣をさぐることにつながる。
百寿者の人口割合が最も高い日本では、特に研究が進んでいる。

延べ約150人の110歳以上の人と直接会ってきた専門家がいる。
喫煙はせず、酒はのまないかたしなむ程度、動脈硬化が軽度で、性格は外向的な人が多かったという。
その結果、健康長寿をめざす人には「認知機能は遺伝的な要素もあるが、生活習慣の改善などは誰もが心がけられること」が勧められるという。
 
これから
110歳以上の人々の健康調査が継続されれば、人の限界寿命がどう決まるのか、生物学的なしくみが明らかになっていくだろう。
協力者からの献体で、脳の病理解剖研究も始まっている。
加齢に伴う認知症など神経変性疾患の原因解明や予防策の構築につながっていくかもしれない。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2019.4.27


関連サイト
増える 百寿者
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/345