高齢者も危ない! 夏場の感染症

高齢者も危ない! 夏場の感染症 プール熱・はやり目・・・治療薬なく合併症も

夏にかかりやすい感染症の代表例といえばプール熱咽頭結膜熱)や流行性角結膜炎(はやり目)だ。
アデノウイルスと呼ばれるウイルスによる感染症で、実は子どもだけでなく、体力が落ちている高齢者もかかりやすい。
ワクチンや有効な治療薬がなく、合併症を引き起こす可能性も高い。
飛沫や接触による感染で広まるため、その経路を断つ対策が欠かせない。

ある夏の日。都内の介護施設では職員がテーブルの下、いすの背もたれ、車いすの持ち手などをアルコールで丁寧に消毒していた。
単なる清掃にとどまらず消毒を徹底するのは、日ごろから感染症に対する危機意識があるためだ。
「冬だけでなく、この時期も感染症に気をつけている」と、このホーム長は話す。
夏場の介護施設で起きる問題といえば食中毒がまず思い浮かぶが、感染症についても細心の注意を払う。
消毒と手洗い、手袋の着用は介護施設で働く職員の大切な心得だ。
入居者の健康を守るためには欠かせないという。

アデノウイルスは鼻や喉、目などから入り、風邪のような症状を引き起こすウイルスだ。
発熱にとどまらず、目や耳、鼻の炎症、嘔吐や下痢などさまざまな症状が出る。
ウイルスの種類や型によってプール熱、はやり目、感染性胃腸炎など複数の症状が現れ、高齢者が特に注意すべきは、はやり目だという。

38度以上の高熱が続く、喉が赤く腫れる、目が赤く充血する、などが主な症状だ。
国立感染症研究所ではアデノウイルスについて「最大の特徴は感染力が非常に強いこと」と説明する。
感染経路もさまざまで「せきやくしゃみといった飛沫感染だけではない。汚染された水、タオルや手を通じても感染する」というから厄介だ。

感染力の強さは、いったん感染すると1カ月は体内に居続けるしぶとさにも表れている。
一度感染すると潜伏期間が1週間、症状も1週間近く出る。
熱や炎症などの症状が消えても、尿や便などから、ウイルスが2~3週間は出続けるという。
そのため、オムツ交換時にも注意が必要だ。
介護が必要な高齢者はオムツ着用の人も多い。
オムツ交換を終えた段階で、エプロンや手袋の交換を徹底している」という施設もある。
そして、最大の問題はワクチンや治療薬が存在しないことだ。
結膜炎は目薬、咽頭炎は抗炎症剤の服用などで対処するしかない。

どうすれば、アデノウイルスによる感染症を予防できるのか。
対策の一つが手指の消毒だ。
階段の手すりやエレベーターのボタンなどに付着したウイルスに触れ、その手で目をこすったり、触ったりすることで感染するケースは多い。
流水とせっけんでよく手を洗うだけでも、ウイルスを落とす効果があるという。

施設職員への消毒意識を徹底させることが大切だ。
手のひらに消毒液をため、反対の手の指を十分に浸し、液を付け過ぎるくらいのイメージで洗う。
手洗いやうがいは、施設に来る入居者の家族にもお願いする。

二つ目は個人ごとにタオルを使い分けることだ。
一見、地味な対策に見えるが、予防効果は意外と高い。
目に症状が出ている場合、感染している人が顔を拭いたタオルなどを他の人が触ることで、感染がさらに広がりやすい。
洗面所のタオルは毎朝必ず交換する。
こういった、ちょっとした配慮と心掛けが感染の予防につながる。

一般にアデノウイルスは時間がたつと症状が治まることがあり、安易に考える人も多い。
しかし、体力や免疫力が落ちている高齢者にとっては、合併症を引き起こし重症化する危険性がある。
手洗いやうがい、タオル交換などをこまめに実施し、夏場の感染症から高齢者や介護する職員の身を守る心がけが大切となる。

早期受診
アデノウイルス感染症が疑われる症状が出た場合、施設や家庭での感染拡大を防ぐため、早めに受診することが大切だ。
はやり目に感染しているかどうかは、15分程度で結果が出る、迅速診断キットで簡単に調べられる。
 
はやり目に感染すると、目が充血したり、目やにが大量に出たりするなどの症状が出る。
異物感や目の痛みを感じることもある。
症状が重い場合、結膜の表面上に「偽膜」と呼ばれる白い炎症性の膜ができることもあ
る。
当初は片目だけに症状が出ていても、数日後、両目に広がるケースもある。
 
プール熱に感染すると、38度以上の発熱や喉の痛みといった症状が現れる。
はやり目が疑われる場合は眼科、プール熱の場合は内科を速やかに受診したい。
感染に気づかないまま過ごすと、感染が広がるリスクが高まる。
疑わしい症状が出た時点で、すぐに医療機関に足を運びたい。

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2019.8.21