ご飯の「栄養学」

ご飯で健康づくり 長所を生かす食べ方は

近年、ご飯などの炭水化物を「健康のために」と敬遠する人が増えているが、じつはご飯は、毎日の献立の栄養バランスを改善するのに便利な食品なのだ。

ご飯などの炭水化物を控える人が増えたきっかけは、1980年代に食品のGI値グリセミック指数)の考え方が提唱されたことだ。
食後の血糖値上昇の度合いを数値化したもので、値が高いほど食後の血糖値が上がりやすく、肥満などをもたらしやすいと考えられた。
ご飯、パン、麺類など炭水化物中心の食品は、GI値の高いグループに入ったため、これらを控えることがダイエットに向いていると考える人が増えた。

粒で食べる穀物
これに対して、ご飯は上手に食べれば血糖値の上昇を穏やかにしやすい食品だと考える専門家もいる。
小麦など主食に用いる穀類の多くが粉にひいて利用するのに対して、コメは粒ごと食べることが特徴だ。
コメの粒は約18万個の細胞から構成されているため、加熱調理しても独特の食感を保つ。
意識してしっかりかむことで、自然とゆっくり食べることになり、実質的なGI値を下げてくれる。
しかも、かむ刺激によって少量でも食事の満足度をアップしてくれるというメリットもある。
また、コメに含まれるでんぷんのうちアミロースが多いと難消化性になり、血糖値の上昇を穏やかにするという。
最近では、ご飯を冷ますとアミロースの構造が変化し、より消化が穏やかになるという研究報告もある。

健康づくりを意識した社員食堂で知られるタニタの社員食堂担当栄養士も「1食500キロカロリー前後、塩分も3グラム前後という献立づくりに、ご飯はかかせない」と話す。

実際、タニタの社員食堂では、1カ月に数回の麺類の日以外は、白米、胚芽米、玄米のいずれかが提供されている。
しっかりかんで食べられるご飯は、麺類などと比較して量を調節しても満足感が得られるという。

ご飯は、和・洋・中華のどのおかずにも合う上、それ自体に脂質はほとんどなく、塩分を含まないため食事全体の栄養バランスを取りやすい。
一方、パンはこの社員食堂では「それ自体に塩分を多く含む上、脂質の多いおかずが欲しくなる」といった理由で、献立に採用されてこなかったという。
パスタも「おいしく食べるには、ソースに一定の塩分や脂質が必要になる」ので1種類限定だ。

また「糖質のかたまり」と考えられがちなご飯だが栄養面でのメリットもある。
例えば、たんぱく質を効率よく取るためには、食材のアミノ酸バランスを示すスコアが100に近いほどいいが、小麦の38に対してコメは65と高い。
しかも、コメに大豆製品を組み合わせるだけで100にすることができる。

塩蔵品少なめに
もちろんご飯には欠点もある。
コメにはビタミンC、Aはほとんど含まれていない上、ビタミンB群、ミネラル類の多くは糠や胚芽の部分に含まれているので白米にすると失われがちだ。
また、もっともご飯に合う伝統的な和食のおかずは、塩分のとりすぎになりやすい。

白米だけでなく、ときには胚芽米、玄米なども上手に取り入れてみると栄養バランスは改善する。
塩分控えめにする工夫も必要だ。1日の間で、干物とソーセージなど塩蔵品が重複するのは避けたい。
また、みそ汁は、だしをきかせ緑黄色野菜、根菜類などをたっぷり入れた具だくさんにすることでコクを出し、塩分控えめでもおいしくいただける。
ご飯の欠点を補い、長所を生かすことで、食事の健康度は大幅にアップする。

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「ご飯パン」の開発も進む
近年、ご飯以外の食べ方でも、コメの長所を生かすための研究が進められている。
例えば、ご飯は食べる量を調節しやすい半面、炊いたご飯が残ってしまうという問題がある。
そこで新たに開発されたのが、冷凍や残りご飯でパンを焼く「ご飯パン」。
想像以上にしっとりした、おいしいパンができる。
バターなどの油脂を使わないおかずにもよく合う。
「これからは小麦の代用ではなく、栄養効果の優れた独自の食品として開発していきたい」と開発者は説明する。
また、食後の血糖値の上昇を穏やかにするアミロースを増やしたコメは食感が悪くなる傾向があるが、うどんなどの麺類に加工するとおいしいことも分かってきた。
こうした米粉専用の品種を開発することでコメの有効利用が進むことも期待されている。

参考・引用一部改変
日経新聞 2013.9.28


関連サイト
ご飯の長所を生かす食べ方
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/536