ご飯は太らない?

「ご飯は太る」は思い込み? 腹持ちのよさが間食防ぐ

ゆっくり吸収 食物繊維も豊富
ご飯などの穀類やいも類は、炭水化物を多く含む。
炭水化物の最も重要な役割は、エネルギー源になることだ。
「日本人の食事摂取基準2015年版」では、三大栄養素(エネルギーを生み出す栄養素)の蛋白質、脂質、炭水化物のうち、総エネルギーの50~65%を炭水化物から摂取することを勧めている。
この数年、「低炭水化物ダイエット」や「糖質オフダイエット」が話題だが、そもそも「炭水化物」と「糖質」は同じではない。
炭水化物は、消化吸収されてエネルギー源になる糖質と、消化吸収されない「食物繊維」に分かれる。
「炭水化物=糖質十食物繊維」なのだ。

制限し過ぎ注意
食物繊維はエネルギー源にならず、血糖値も上げない。
それどころか、便秘や生活習慣病の予防と改善に役立つ。
ダイエットの際に控えたいのは、炭水化物のうちの糖質ということになる。
ところが、穀類に代表されるように、糖質を多く含む食品は食物繊維も多く含んでいることが多いので、主食の摂取を極端に控えると、食物繊維が不足しやすくなる。
 
食物繊維というと、ゴボウやキノコなどを思い浮かべるが、ヒトは穀類から大半の食物繊維をとっている。
「野菜やヨーグルトを積極的に食べているのに、便秘が改善しない」という人は、主食の量が不足していないだろうか?

糖質は、最小単位である単糖の結合数によって、単糖類、少糖類、多糖類に分けられる。
単糖はブドウ糖など「これ以上分解できない状態」なので、体内に入るとすぐにエネルギー源として使われる。
単糖が2~10個の少糖類も比較的エネルギーになりやすい。
一方、単糖が多数つながった多糖類は、単糖まで分解される過程を経るので、エネルギーになるまでに時間がかかる。
 
ブドウ糖は血液を通して各細胞に運ばれて利用される。
分解の必要のない単糖類や、分解に時間がかからない二糖類は、急激に血糖値を上げる。
血糖値が急上昇すると、下げるためにインスリンというホルモンが大量に分泌される。
インスリンブドウ糖を脂肪に変えて蓄えるため、肥満につながりやすい。
 
多糖類を選ぼう
同じエネルギー量の糖質なら、単糖類や少糖類よりも多糖類のほうが、インスリンが少なくてすむので大りにくい。
特に、穀類やいも類などに多いデンプンには、消化吸収されずに小腸を通過し、食物繊維と同様の働きをする「レジスタントスターチ」が含まれるので、さらに消化吸収がゆっくりになる。
穀類やいも類が腹持ちがいいのもこのためだ。
  
「ごはんを食べると太る」というのは思い込み。
むしろ、主食を変に制限することで、太りやすくなっている人が多い。
例えば、主食の量を控えると甘いおやつが我慢できなくなったり、脂質やたんぱく質を多くとらないと満足できなかったりして、かえって太りやすくなってしまう。
 
主食は極端に制限するよりも、毎食適量を食べ、おやつを控えるほうがダイエットには効果的だ。
主食はごはん、パン、めん類のどれを選んでもいいが、生活習慣病予防の面では、塩分や脂質をほとんど含まないご飯がお勧め。

パンには脂質や塩分が含まれる。
プレーンな食パンでも含まれるが、特に、クロワッサンやデニッシュは、バターがたっぷり使われており、驚くほど指質が多い。
めん類にも塩分が含まれているものが多い。
さらに、めん順には、かけ汁やつけ汁がつくので、塩分や脂質が多くなりがちだ。
 
1日の食塩摂取の目標量は、成人男性で8グラム未満、女性で7グラム未満なので、主食からはできるだけ塩分を取らないようにしたい。
そのためには、ご飯をベースにするのが安心だ。
食べ過ぎれば太りやすくなるが、適量であれば、むしろ、ダイエットや生活習慣病予防・改善の強い味方。
「ご飯をベースにした和食」をいま一度、見直してみてはどうだろう。



糖質 = 糖質 + 食物繊維
糖質 吸収されやすく、エネルギーになる 単糖 > 少糖類 > 多糖類
  単糖;果物やハチミツなどに含まれるブドウ糖や果糖など
少糖類;砂糖に含まれるショ糖、牛乳の乳糖など
多糖類;穀類やイモ類に含まれるデンプンなど

食物繊維 エネルギーにはならない
野菜、穀類、豆類などに含まれるセルロースなど
果物や野菜に多いペクチンや海藻のアルギン酸など

出典 
日経新聞 2015.5.23 朝刊