ゾコーバでコロナ後遺症のリスク低下

ゾコーバでコロナ後遺症のリスク低下

https://medical-tribune.co.jp/news/2023/0222555756/

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塩野義製薬は本日(2月22日)、同社の経口新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル(商品名ゾコーバ)に関し、COVID-19罹患後症状(以下、Long COVID)に対する効果を検討したプラセボ対照前向き試験の結果を発表。

6カ月間の追跡期間中、咳や倦怠感、嗅覚異常などのLong COVIDの相対リスクが、プラセボ群に比べエンシトレルビル群で45%低下。

集中力・思考力の低下、物忘れなどの神経症状についても33%低下したと報告した。

結果の詳細は、米国で開催された第30回・レトロウイルス・日和見感染症会議(CROI 2023、2月19~22日)で発表された。

レカネマブ

レカネマブ

アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」(2023.1.16)

https://www.eisai.co.jp/news/2023/news202307.html

エーザイ株式会社とバイオジェン・インク (米国)は、本日、エーザイが抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル1抗体レカネマブ(一般名、米国ブランド名:LEQEMBI™)について、脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度認知症(総称して早期AD)に係る適応で、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に新薬承認申請を行った。

・Clarity AD試験において、レカネマブは、主要評価項目である全般臨床症状(CDR-SB2:Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)について、投与後6カ月以降すべての評価時点において統計学的に高度に有意な悪化抑制を示した。

また、全ての重要な副次評価項目においても統計学的に高度に有意な結果が認められた。特に、アミロイドPET評価では、レカネマブ投与後3カ月からすべての評価時点で、統計学的に有意な脳内アミロイド蓄積の減少がみられ、ADCS MCI-ADL3を指標とする日常生活動作低下の抑制も示された。

安全性評価として、レカネマブ投与群で最も多かった有害事象(10%以上)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(浮腫/浸出)、頭痛および転倒だった。

・本試験の結果は、2022年11月に第15回アルツハイマー臨床試験会議(CTAD)にて発表し、同時に査読学術専門誌the New England Journal of Medicineにも掲載された。

Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2212948

 

米当局、アルツハイマー病治療の新薬を「迅速承認」 エーザイが開発(2023.1.8)

https://www.asahi.com/articles/ASR171SP9R17ULFA001.html

エーザイが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、米食品医薬品局(FDA)は6日、条件付きで承認したと発表した。

病気の進行を長期間抑えることを狙った新しいタイプの薬の承認は、2021年に同様に条件付きで承認された「アデュカヌマブ」以来、二つ目となる。

・症状が軽い段階の患者が対象。

エーザイは米国での価格について、体重75キロなら年間で2万6500ドル(約350万円)と設定した。

FDAは「迅速承認」と呼ばれる仕組みで承認した。

スピードを重視し、効果が十分に証明されていない段階で認めるものだ。

しかし、この段階では米国で高齢者向けの保険が原則として適用されず、すぐに普及するのは難しい。

FDAエーザイに対し、承認の条件として追加で検証試験を実施するよう求めた。

エーザイは近く、22年秋に発表した治験のデータを検証試験として提出する予定だ。

約1800人に18カ月間投与した結果、認知症の程度を評価するスコアの悪化が27%抑えられた。

副作用として脳の腫れなどが偽薬に比べて増えたが「想定内」としている。

FDAは年内に正式に承認するかどうかの結論を出す見込み。承認されれば高齢者向け保険が適用される可能性が高い。

・また、エーザイは3月までに日本や欧州の当局にも同じデータを用いて承認申請する方針だ。

早ければ年内に日本でも承認され、使われ始める可能性がある。

中国ではすでに当局へのデータ提出を始めている。

アルツハイマー病の国際団体によると、世界には認知症の患者が5500万人いて、50年には1億3900万人に増加するという。

そのうち60~80%がアルツハイマー型とされる。

患者数が増える一方で、これまでの薬は症状が一時的に改善するが、やがて薬を使う前と同じスピードで認知機能が低下していた。

<コメント>

問題点は二つ。

まず、高薬価であり、費用対効果がどうかということ。

もうひとつは、脳内アミロイド蓄積の減少というのが蓄積抑制なのか蓄積除去なのか。

後者であれば、脳細胞の不可逆的変化が改善される可能性は薄いことになる。

そもそも「軽度認知障害(MCI)および軽度認知症」が適応ということなので、自ずと限界があり、「軽度」の時点で使用開始すれば使用期間は当然長期間となる。

効果判定自体も難しい。

糖尿病とCKDの国際ガイドライン(2020年版の改訂版)

糖尿病とCKDの国際ガイドライン SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・MR拮抗薬の推奨事項を更新(2023.1.19)

https://dm-rg.net/news/9f141494-2d5e-4fe0-b11f-f93caa356e73

・KDIGOが先ごろ発表したガイドラインは、2020年版の改訂版に当たり、13項目の推奨事項と52項目の実践ポイントが掲げられている。

主要な改訂点は、SGLT2阻害薬(SGLT2-i)やGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)に関する新たなエビデンスを反映して推奨事項が更新されたこと、および新規ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)に関する推奨事項が追加されたこと。

・SGLT2-iについては、腎臓と心血管の保護に関するエビデンスがあり、2型糖尿病でないCKD患者でも安全性とベネフィットが確認されているとし、血糖管理状態にかかわりなく、2型糖尿病およびCKD患者にとって好ましい第一選択薬であると述べられている。

具体的には、従来よりも腎機能が低下した患者に対しての使用が推奨された。

その内容は、「eGFRが20mL/分/1.73m²以上の2型糖尿病またはCKD患者への使用を推奨する(強い推奨/エビデンスレベル:高)」というもの。

また、実践ポイントとして、SGLT2-iで治療されている患者のeGFRが20mL/分/1.73m²を切った場合も、腎代替療法が開始されるまで継続使用することは合理的であると記されている。

・GLP-1RAについては、肥満、2型糖尿病、CKD患者には優先的に使用することで、意図的な減量を図ることが可能とする、実践的ポイントが加えられた。

同薬の心血管系へのメリットは、eGFRレベルにかかわらず認められ、メトホルミンやSGLT2-iでは血糖管理目標に到達していない患者、またはそれらを使用できない患者に推奨されるとしている。

・新規MRAについては、主として非ステロイド型選択的MRAであるフィネレノンに関するエビデンスをもとに、新たに推奨が加えられた。

その内容は、「最大耐用量のRAS阻害薬(RASi)を使用しているにもかかわらずアルブミン尿(30mg/gCr以上)が認められ、eGFR25mL/分/1.73m²以上で血清カリウムレベルが正常な2型糖尿病患者には、非ステロイド型選択的MRAの使用を推奨する(弱い推奨/エビデンスレベル:高)」というもの。

・非ステロイド型選択的MRAに関する実践ポイントとしては、2型糖尿病やCKD治療のためのRASiやSGLT2-iに上乗せ可能であること、高カリウム血症のリスク抑制のため、血清カリウムレベルが正常な患者を投与対象とし、投与開始後は血清カリウムレベルを定期的にモニタリングすること、腎臓または心血管系にベネフィットのある薬剤を非ステロイド型選択的MRAに優先して用いることなどが示されている。

耐糖能異常へのメトホルミン

耐糖能異常へのメトホルミン/生活習慣介入は心血管イベント予防効果を示さず
https://www.m3.com/clinical/news/1064382?portalId=mailmag&mmp=WE220823&mc.l=891024760&eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d
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・耐糖能異常に対するメトホルミンを用いた介入、生活習慣への介入の双方ともに、心血管イベントへの予防効果は示されなかった。

・今回の結果は、追跡期間中に多くの患者が高血圧治療やスタチンの導入がなされていること、耐糖能異常という糖尿病の前段階というステージへの介入であったことなどが理由として挙げらる。
生活習慣の介入に関しては、長期間にわたって継続されていなかった可能性が、アウトカムに影響しなかった理由ではないかと考察される。

・総じて、耐糖能異常という限定されたステージへの介入であったことが、アウトカムに影響した可能性がある。

くも膜下出血に新薬「ピヴラッツ」が登場

くも膜下出血に新薬  血管収縮を阻害、脳梗塞を予防
脳血管にできたこぶ、脳動脈瘤が破裂し出血する「くも膜下出血」に約25年ぶりとなる新しい治療薬が登場した。
発症後2週間以内に起こる血管が細くなる症状を予防する。
半身まひなどの後遺症につながる脳梗塞のリスクを減らす効果が示されており、患者の命を守り、生活の質(QOL)を大きく改善するとの期待がある。

発症後に起きる脳血管の収縮を防ぐことができる唯一の治療薬で、半身まひなどを防げる。患者の生活を大きく変えられる可能性がある。

くも膜下出血は、脳内のくも膜下腔と呼ばれる部位で起こる出血で、脳血管のこぶが破裂することで起こる。

脳血管疾患は日本人の3大死因の一つとされる。
厚生労働省の調査によると、脳卒中患者は97万人ほどいる。
約8割が脳梗塞患者だ。
脳内出血は14万人、くも膜下出血は4万人を占める。

世界的にはくも膜下出血は10万人あたり6~9人が発症するとされるが、「日本では22.5人と2~3倍ほど高いとの報告もある。日本人で比較的多く発症する疾患といえる。

発症する年齢は50~70代が多いが、20~30代の若年層でも起こることがある。
最近は高齢者のくも膜下出血が増えており、男性より女性の患者が多い。

動脈瘤の大きさは数ミリ~1センチを超えるものまで様々だ。
ある程度の大きさまで成長すると、磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影装置(CT)による検査などで偶然見つかることもある。
大きいほど破裂リスクは高まるが、1ミリほどでも破裂することがある。

出血すると、突然の激しい頭痛や嘔吐といった症状が出る。
そのまま意識を失うケースもある。
死亡率は3割と高く、一命をとりとめても半数近くの患者で半身まひや言語障害などの後遺症を残すことがある。

発症早期に再出血するリスクが高いため、緊急手術を行う。
動脈瘤の根元をクリップではさむ手術(クリッピング術)のほか、こぶの内部にコイルをつめる血管内手術(コイリング術)が主流だ。

今回登場した点滴薬「ピヴラッツ」(一般名クラゾセンタンナトリウム)が効果を発揮するのは、無事手術が完了し、一命をとりとめた後だ。

出血に伴い放出された物質などの影響で、血管は収縮(脳血管れん縮)を起こしやすい。
血管の収縮が起きると、血管が細くなるため血流が低下し、脳梗塞に陥ることがある。

血管の収縮による血流の低下は発症5~14日に起こることが多い。
8~11日がピークで21日目までに消失する。
血管が収縮した患者の20~50%に脳梗塞の症状が出現する。せっかく手術で一命をとりとめても、その後に死亡や半身まひなどにつながる原因になっていた。
発症後2週間がその後の患者の人生に大きく影響する。

ピヴラッツは血管を収縮させる作用を持つエンドセリンの働きを阻害する。くも膜下出血後48時間までを目安に点滴を開始。
最大15日目まで1時間当たり10ミリグラムの点滴を続ける。
副作用としては肺水腫など体液がたまりやすくなる症状があるため、適切な術後管理が必要になる。

ピヴラッツは世界に先駆け日本で承認・発売された。
開発したのはスイスの製薬企業、イドルシア・ファーマシューティカルズだ

国内57施設で約440人の日本人患者を対象に行われた最終段階の治験では脳梗塞の発症を55%減らす効果も示された。

これまで打つ手がなかった脳血管れん縮を予防できる画期的な薬が登場し、医師の間でも非常に注目されている。

最大15日の投薬で薬価は約240万円かかる。
費用対効果など医療経済的な効果は今後検証する予定だが、半身まひなどを防ぐことでリハビリを必要とする入院期間も短くなる可能性があり、結果的に医療費抑制につながる可能性が期待される。
今後、ピヴラッツ登場で脳梗塞を回避し、健康寿命をまっとうするくも膜下出血患者の数も増える可能性がある。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2022.8.2

新型コロナの全変異株に有効なアルパカ由来の抗体

新型コロナの全変異株に有効なアルパカ由来の抗体、京大などが開発
京都大学(京大)、大阪大学(阪大)、COGNANO(コグナノ)、横浜市立大学(横浜市大)の4者は2022年7月14日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の「懸念される変異株」であるオミクロン株(B.1.1.529, BA系統)を含むすべての変異株に対して、これまで使用されてきたどの治療用抗体製剤よりも中和活性が高い「ナノボディ抗体」を創出したことを発表した。

詳細は、英科学誌「Nature」系の生物学を扱うオープンアクセスジャーナル「Communications Biology」に掲載された。

SARS-CoV-2の現在の主流となっているオミクロン株は、アルファ株からデルタ株までの、これまでの4種類の懸念される変異株と比べ、スパイク(S)タンパク質の変異箇所が圧倒的に多く、以前感染した人やワクチン接種者ですら感染しやすいという特徴を持つ。
また、オミクロン株による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)には、その出現前に開発された治療用抗体の大半が効かなくなることも報告されている。

そこで研究チームは今回、免疫したラクダ科のアルパカの遺伝子(アルパカ抗体)から最適な創薬候補をコンピュータで選択する、コグナノが独自開発した技術をベースに、オミクロン株を含む全変異株に対し、これまで使用されてきたどの治療用抗体製剤よりも中和活性が高いナノボディ抗体を開発することにしたという。

実際に樹立されたナノボディ抗体をクライオ電子顕微鏡にて解析したところ、ヒトの抗体と比べておよそ10分の1と小型で、SARS-CoV-2の表面に存在するSタンパク質の深い溝をエピトープ ( 抗体が結合する生体分子のある特定の部位 ) にしていることが示されたとする。
このエピトープはヒトの抗体が到達できない部分であり(論文中では、「クレバス」または「隠された裂け目」と呼称)、ウイルスの変異がほとんど見られない領域だという。

また、オミクロン株は、ワクチンによって誘導された中和抗体や治療用抗体製剤から逃避する特徴も有しているが、今回の研究で創られた抗体は、変異がほとんど見られない領域に結合することから、これまでに報告されたいずれの中和抗体よりも高い有効性が示されたとする。

さらに、ナノボディ抗体は環境耐性が高く、全SARS-CoV-2変異株を検出することが可能であるため、下水など環境中のウイルスの濃縮やモニタリングにも利用することができるという。

加えて、ナノボディ抗体は遺伝子工学による改変がしやすいことから、ヒト抗体よりも数千倍安価に生産することが可能であることから、今回の研究で得られた知見に基づき、より中和活性の高い改変ナノボディ抗体を作成し、臨床応用を目指すとしている。

なお、京大、阪大、コグナノでは、さまざまな感染症について、ウイルス学的な解析や、中和抗体やナノボディ抗体の構造解析についての研究に取り組んでいるとしており、具体的には新型コロナ以外に、エイズウイルス(HIV)、ネコエイズウイルス、サル痘などとしているほか、がん免疫を明らかにするための研究も推進しているとしている。 

参考・引用一部改変
マイナビ・ニュース 2022.7.15
https://www.excite.co.jp/news/article/Cobs_2447733/?p=2

切れた血管、つながる仕組み発見

切れた血管、つながる仕組み発見 治療応用に期待 日本医科大・宮崎大グループ

切れた血管が修復されるメカニズムを、日本医科大学宮崎大学の研究グループが新たに発見した。血管は上流側(心臓側)からは伸びず、下流側からだけ伸びてつながることが明らかになった。
心臓の病気やがんなどの治療に応用できる可能性があるという。

解明したのは、日本医科大学・病態解析学のグループと宮崎大学医学部・血管動態生化学の研究グループ。
 
ゼブラフィッシュという魚の血管を切断し、つながっていく過程を「蛍光イメージング」という手法を使ってリアルタイムで観察した。
すると、従来は両方向から伸びるとされていた血管が、下流側からだけ伸びた。
 
さらに「血管は圧力がかかると伸びない」ことも証明。
研究グループは「上流側には心臓が血液を送り出す圧力がかかっており、その圧力を血管が感知し、伸びなくなる仕組みもわかってきた」としている。
 
今回の発見を発展させて血管を伸ばす治療法ができれば、毛細血管が切れることで起こる褥瘡(床ずれ)や、血管の詰まりが原因となる狭心症の治療につながることが期待される。
また、「いかに血管を伸ばさないか」という視点では、がん組織での無秩序な毛細血管の異常発生を抑え、有効な治療手段になる可能性も秘めるという。
 
さまざまな疾患や疾病にかかわる血管や毛細血管の、「伸びる」メカニズムの一端がわかったことで、将来的な応用範囲も広がることが期待でき、画期的な成果だと考えられる。

参考・引用一部改変
朝日新聞・夕刊 2022.6.17