自己免疫病 分子出現が引き金

自己免疫病 分子出現が引き金  阪大グループ仕組み解明 
本来はウイルスなどの病原体を攻撃する抗体が体を傷つけてしまう「自己免疫病」の仕組みの一端を大阪大微生物病研究所のグループが解明した。
本来の居場所とは違う場所に現れた分子が、攻撃を「支援」していた。

荒瀬尚教授らのグループは今回、バセドウ病を対象にした。
呼吸や体温の維持などの代謝を制御するホルモンが甲状腺から過剰に出されて、脈が早くなったり体重が急に減ったりする。

これまでに、甲状腺にホルモンの分泌を促すスイッチのような機能を持った部分に、自分を攻撃する「自己抗体」がくっつくことで、過剰な分泌が起きることは分かっていたが、くっつく仕組みは不明だった。
 
グループが患者の甲状腺を調べると、本来は主に免疫細胞で発現し、正常な甲状腺にはないはずの分子が大量にできていた。
自己抗体は、この分子がスイッチと一緒の時にくっつき、スイッチだけだとくっつかないこともわかった。
 
この分子は「MHCクラスⅡ」と呼ばれ、多様なタイプがある。
一人一人異なるタイプをもつが、バセドウ病の患者では、特定のタイプを持つ人が多いことが知られていた。
何らかのきっかけで、甲状腺にこの分子が異常に現れ、それが特定のタイプだと、自己抗体ができることもわかった。
  
バセドウ病だけでなく、さまざまな自己免疫病で自己抗体ができる仕組みの解明につながる可能性がある」と荒瀬教授は話す。  

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2022.7.13

コメント
「MHCクラスⅡ」はウイキペディアにも掲載されている既知の分子です。
今回の記事では、どこが新たな発見なのかもう少し説明すべきです。

<関連サイト>
MHCクラスII分子
https://ja.wikipedia.org/wiki/MHC%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B9II%E5%88%86%E5%AD%90

MHC(major histocompatibility complex)分子とは
https://www.jbpo.or.jp/med/jb_square/autoimmune/immunology/im04/01.php

 

「BA.5」肺で増殖か

「BA.5」肺で増殖か 「BA.2」の18.3倍 病原性も高い可能性
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000261127.html

国内で置き換わりが進む新型コロナ・オミクロン株の亜種「BA.5」について、これまで主流だった「BA.2」よりも、「ウイルスが肺で増えやすい」可能性があることが最新の研究で分かった。

東京大学医科学研究所の佐藤佳教授らがヒトの肺の細胞を使って実験をしたところ、オミクロン株の「BA.5」は、「BA.2」と比べてウイルスが18.3倍増えていたことが分かった。

オミクロン株は気管で増殖し、重症化しにくいとされてきたが、「BA.5」では、肺でも増えやすい可能性があるという。

東京大学医科学研究所・佐藤佳教授:
「『BA.5』はデルタ株が持っていたL452Rという特徴的な変異を持っている。デルタ株が持っていたような肺で増えやすい特性を獲得したオミクロン株といえる」
ハムスターを使った実験でも同様に肺でウイルスが増えたという。

家族性アルツハイマー病「抑える傾向」 iPS創薬の治験 

家族性アルツハイマー病「抑える傾向」 iPS創薬の治験 
京都大学三重大学は30日、家族性アルツハイマー病の患者にiPS細胞を使って見つけた治療薬候補を飲んでもらう治験の結果、病状の進行を抑える傾向が見られたと発表した。

京大iPS細胞研究所の研究グループは、患者からつくったiPS細胞を使って、有効な薬の候補を探し、パーキンソン病治療に使われる「ブロモクリプチン」を見つけた。
特に、特定の遺伝子に変異がある家族性アルツハイマー病で高い効果が見込まれた。
このアルツハイマー病は平均の発症年齢が43歳と若く、進行も速い。

治験は2020年から始め、このタイプの患者5人にブロモクリプチンを飲んでもらった。 
1日最大10ミリグラムを20週間服用したところ、認知機能のスコアが下がったのは1人だった。
一方、偽薬を飲んだ患者は3人中2人でスコアが下がった。
行動、心理症状でもブロモクリプチンの服用者で進行が抑えられる傾向にあった。
 
研究チームによると、今回の治験で対象となった特定の遺伝子に変異がある家族性アルツハイマー病の患者は国内で約100人いる。
今後、他のアルツハイマー病患者への治験も検討する。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2022.7.1

 

関連サイト
ブロモクリプチン
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00063081

家族性アルツハイマー病の遺伝子診断
https://www.senshiniryo.net/column_a/23/index.html
家族性アルツハイマー病の特徴は、家族や親戚に多く発症することに加え、発症年齢の若さです。多くのアルツハイマー病は70〜80歳に発症年齢が集中するのに対し、家族性アルツハイマー病の場合は、40〜50歳代で発症するケースが珍しくありません。「一般的なアルツハイマー病よりも20年以上も前倒しして発症してしまうのです」と山本講師は話します。

 

コロナワクチン「救った命は1980万人」

コロナワクチン「救った命は1980万人」英チーム推計 恩恵に格差 
新型コロナウイルスのワクチンによって、2020年12月~21年12月の1年間に、世界で1980万人の命が救われた。
そんな推計結果を、英インペリアル・カレッジ・ロンドンのチームが発表した。

新型コロナのワクチンは20年12月、米ファイザー社製のmRNAワクチンが英国で初めて使用が許可された。
その後も複数のワクチンが実用化され、製薬会社と直接契約を結ぶなどした高所得国を中心に、接種が進んだ。

チームは185カ国・地域を対象に、新型コロナの流行パターンなどを踏まえて、ワクチンがないと仮定した場合の死者数を予測。
そこから接種が進んだ影響を考慮した死者数を差し引いて算出した。
1980万人という数字は、ワクチンがない場合に推計される死者数の63%に相当するという。

ほとんどはワクチンによる直接的な効果と考えられたが、ワクチンの普及で感染者数が減少し、医療逼迫が避けられたことによる間接的な効果も少なからずあったとしている。

経済的に豊かな国・地域ほど接種率が高かったため、ワクチンによって命を救われたと推計される人数も多くなった。

高所得国(接種率約7割)ではワクチンがない場合に推計される死者数の66%が、上位の中所得国(同5割)では37%が、下位の中所得国(同3割)では22%が、低所得国(同1割未満)では3%が、それぞれワクチンによって命を救われたと推計された。
 
今回のパンデミック(世界的大流行)では、経済的にワクチン確保が難しい国には、世界保健機関(WHO)などが主導する枠組み「COVAX(コバックス)ファシリティーズ」によって供給された。
対象国での接種率を「21年末までに人口の20%」にすることが目標だったが、十分な量
のワクチンが確保できなかったことなどもあり、達成されなかった。
もし対象となる83カ国でこの目標が達成されていれば、さらに15万人以上の死亡を防げたとみられたという。
 
チームは今後、もっと公平にワクチンが分配されるためには、供給量の問題だけでなく、分配のためのインフラなども改善する必要があるとしている。
 
論文は英医学誌ランセット関連誌に掲載された。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2022.8.28

<コメント>
「ワクチンの普及で感染者数が減少し、医療逼迫が避けられたことによる間接的な効果も少なからずあった」という表現は、ワクチンが感染予防に有効かどうか、ということについて、どう捉えればいいのか微妙な表現です。
今回の研究は、「救命」率を知るのが目的のため、感染予防効果については一切触れられていません。
一方、感染しなければ重症化もしないわけですから、ワクチン接種者と非接種者の死亡率を単純に比較したほうがよさそうに思えます。
そもそも「新型コロナの流行パターンなどを踏まえて、ワクチンがないと仮定した場合の死者数を予測」というアプローチが不可解(理解困難)です。

 

夜10時台の就寝が最適?

夜10時台の就寝が最適? 英調査 心臓・循環器の疾患少なく

普段午後10時台に就寝する人は、他の時間帯に寝る人より心臓や循環器の疾患を発症するリスクが低い可能性のあることが、英エクセター大などの研究チームによる調査で明らかになった。

研究チームや英PA通信によると、2013年から15年にかけて英国内の43~79歳の男女約8万8千人を対象に、ウエアラブル装置を手首に装着させて就寝時間のデータを7日間収集。その後、平均して6年弱にわたって健康状態を調べた。

その結果、3100人強の人が心臓や循環器の疾患を発症。
就寝時間ごとに詳しく分析すると、午前0時以降に寝る人の発症リスクが最も高く、午後10時台の就寝より25%高かった。
 
午後10時より早く寝る場合は24%、同11時台に寝る場合も12%それぞれ高かった。
 
研究チームは、睡眠と心疾患の発症に因果関係があるとは結論付けられないものの、午後10時台以外に就寝した場合は「体内時計を狂わせ、心臓や血管の健康状態に悪影響を及ぼす可能性がより高いことを示している」と説明した。 
(欧州心臓病学会誌ヨーロピアン・ハート・ジャーナル(電子版)で発表)

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2021.11.13

新型コロナ、さらなる変異の先は

新型コロナ、さらなる変異の先は 来年にかけ、オミクロン株系続く可能性

感染拡大に一定の落ち着きが見られる新型コロナウイルス
感染者数は減少傾向を示している。
そして、この夏は大きな流行の可能性は低いという見方が出ている。
ただ、その先は未知の領域だ。
変異ウイルスのゆくえはどうなるのか。

・「しばらく状況は悪くならないとみられるが、再び感染拡大はありうるので、機会があればワクチンを打ち、基本的な感染対策をすることに尽きる」
(脇田隆字・国立感染症研究所所長 2022.6.1 )
 
・海外では、この夏は乗り切れそうだ、という期待も出ている。

来年にかけオミクロン株系続く可能性 
・「今年から来年にかけてはオミクロン株系統の連続的な進化はさらに続く確率が高そうだ」
(トレバー・ベッドフォード・米フレッドハッチンソンがん研究センター教授 2022.4)

・オミクロン株は、先に流行していたデルタ株から離れた系続から突如現れた。
感染に使うたんぱく質の突起の変異が、従来の流行株と比べてずっと多い30ヶ所以上もある。
 
・同様に、変異を増やし、世界中に流行するような株は現れるのか。
ベッドフォード教授は、すぐに現れる可能性は大きくないと推定。
感染や追加接種で、免疫を持つ人も増えているため、当面は感染拡大を抑えられる。
免疫の効果が下がり、再び感染者が増えても、オミクロン株の系統なら、重症化率はさほど高くないと期待する。
 
・ワクチンの開発も進む。
欧州連合EU)の専門機関、欧州医薬品庁(EMA)のワクチン戦略の責任者、マルコ・カバレリ氏は5月5日の会見で9月末までにオミクロン株に対応した新ワクチンが承認される可能性があるとの見通しを示した。
コメント
オミクロン株が流行し始めた頃、「mRAワクチンなら1か月あれば開発可能だ」と某大手製薬メーカーが豪語していました。その後、一向に市場に出ないまま現在に至っています。あの話は何だったんでしょうか。
参考;
ファイザーなど、オミクロン対応ワクチン開発遅れ
https://www.chemicaldaily.co.jp/ファイザーなど、オミクロン対応ワクチン開発遅/
オミクロン株の感染流行がピークを過ぎた地域も増えていることから、同株に特化したワクチンの必要性も踏まえて再検討する。
(コメント;ということは、商業ベースの話のようです。いずれにしろ、オミクロン株がこれほど長く「蔓延(はびこ)る」のは意外でした。そもそも、変異種に対する新しいワクチンの開発は、開発費用に見合う収益が得られるかどうかというリスクがメーカーが背負うことになります)

・ただ、「欧州の感染者数は落ち着いてきたが、秋以降、流行の波がくる可能性がある」と話す。
 
・ワクチンがウイルスの進化を促すことも考えられる。
「理論的には、ワクチンで免疫を獲得したヒトが増えれば、免疫を逃れるウイルスの進化が早くなる」
「免疫から逃れて進化するウイルスは病原性が強くなる傾向がある」
(総合研究大学院大・佐々木 顕教授)
 
・オミクロン株の病原性はデルタ株よりも強まらなかったが、次もそうとは限らない。
長期的には、過去の人類が乗り越え「普通の風邪」になったウイルスと同じ道をたどる可能性はあるが、次の変異ウイルスの病原性や、出現するタイミングはわからない。

落ち着くまで2~10年?「臨機応変に」
・流行の波はどうなるのか。
英政府に科学的な助言をする非常時科学諮問委員会(SAGE)は2月に中期的な四つのシナリオを示した。
最悪ケースはこうだ。
変異ウイルスの出現が続き、重症化率や死亡率が上がり、毎年、新しいワクチンが必要になる。
ワクチンの効果が低い場合は行動の規制も必要になるという。
一方で、最良ケースはずいぶん穏やかだ。
病原性も強くならず、今のワクチンを使うことができ、重症化リスクが高い人だけに毎年
追加接種をする。
いずれのシナリオも落ち着くまで2〜10年かかり、途中で別のシナリオになる可能性もあるとした。
シナリオに影響を及ぼす懸念材料は山ほどある。
過去に感染した変異ウイルスの種類、ワクチンの接種時期などで、人の免疫は均一ではない。
世界で複数の変異株が同時に拡大したり、新しい変異株に備えてワクチンを大規模生産している間に、感染がピークに違したりする可能性もある。
 
・「しばらくは、変異ウイルスの監視体制を維持し、感染状況や重症者の把握をきちんとして、臨機応変に対応を変えていくことが必要になる」
(大阪公立大・福島若葉教授)
   
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2022.6.14


<関連サイト>
新型コロナウイルス・オミクロン株に対する現行のmRNAワクチンの有効性と 再感染リスクの検証
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00166.html

山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信
https://www.covid19-yamanaka.com/

モデルナの開発中ワクチン  オミクロンヘの抗体1.75倍に

モデルナの開発中ワクチン  オミクロンヘの抗体1.75倍に
新型コロナウイルスのワクチンについて、米モデルナは8日、新たに開発中のオミクロン株に対応したワクチンを追加接種(ブースター)すると、従来のワクチンを追加接種した場合に比べ、オミクロン株に対する抗体の量が1.75倍になるとする臨床試験の結果を発表した。
同社は「今年秋のブースターの主な候補となる」としている。
 
新たなワクチンは、モデルナ製の従来のものと、オミクロン株に特化したものを含む2価ワクチン。
437人が参加した臨床試験では、追加接種によってオミクロン株に対する抗体が接種前に比べて8倍に増えた。
この値は従来のワクチンを追加接種した場合に比べて1.75倍という。
 
同社は「オミクロン株に対する優れた抗体反応が得られた」とし、同社の最
高経営責任者(CEO)は「予備的なデータを規制当局に提出し、夏の終わりごろには利用できるようになるという希望を持っている」とする声明を出した。
 
米国では5歳以上のすべての人が1回目のブースター接種の対象で、50歳以上や免疫が低下している人などは2回目のブースター接種の対象となっている。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2022.6.9


<関連サイト>
モデルナが3日でワクチンを作れた理由 
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB26D6A0W2A420C2000000/

新型コロナで化けたmRNA医薬の巨人、米モデルナの次の一手
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00110/053100124/