ねずみが人類を救う

イメージ 1



今年は、皆さんご存知のようにねずみ年です。
昨日まで時々転載させていただいだ本の著者の家森先生は実は、ねずみと
大いに関係のある先生なのです。
そのことは文中にも少し出ていましたが、先生が最近新聞に書かれた
エッセイを読んでいただければそのことがわかっていただけます。
私自身、循環器科が専門の内科医です。
したがって、昔から高血圧や実験ラットの開発の件はよく知っていたのですが、
肩書きを「元○○大学医学部教授」とか「○○大学名誉教授」と書かずに
「予防栄養学研究者」とされているところに先生の飾らぬ性格や心意気が
現れていると感じ入りました。
定年退官後もまだまだ現役の学者として活躍されているというわけです。
さて前置きが長くなりましたが、新聞記事を紹介させていただきます。


ねずみが人類を救う

予防栄養学研究者 家森幸男
今年はねずみ年。
ねずみが神様の遣いとされる神社もある。
医学の分野では、ラット、マウスは実験動物の主役、医学の進歩に大きく
貢献している。
皮膚細胞からあらゆる臓器ができる可能性を示した京大、山中伸弥教授の
再生医学の最先端の業績も、まずマウスの実験で成果が出た。

高血圧はヒトで最も多い病気で、脳卒中を起こし、寝たきり、認知症
最大の原因である。
医学部を卒業した45年前、恩師の岡本耕造教授らによって、高血圧を
遺伝的に発症する白ねずみが京大で開発された。
脳卒中が死因の第1位になった頃で、祖父母を脳卒中で亡くした私は、
この高血圧ラットで脳卒中の研究に打ち込んだ。
この高血圧ラットは自然の状態では脳卒中にならないが、ストレスを与え
続けたら見事に脳出血が起こった。
高血圧+ストレスで脳卒中が起きると、鬼の首をとったように興奮した。
   
だが同じストレスでも脳卒中が起きたり起きなかったり、どうも家系が大切
だと気付いた。
そこで予(あらかじ)め高血圧ラットを増やし、親が少しでも脳卒中の病変
を起こした子孫のみを残し続け、ついに100%脳卒中を起こす
脳卒中ラット”が開発された。

この半世紀の間に世界中で次々に高血圧の新薬ができた。
ヒトと同じような高血圧、脳卒中を起こす、かけがえのないモデルのおかげで、
今では脳卒中や高血圧の遺伝子の研究が飛躍的に進んだ。
何よりの朗報は遺伝的に脳卒中になるラットでさえ、大豆、魚、野菜の栄養を
充分与え、減塩食にすれば、脳卒中を予防できることである。
予防栄養学が人類の健康長寿の未来を約束する新しい扉を開いた。
まさにねずみからの福音だ。

出展 日経新聞・夕刊 2008.1.5
    「あすへの話題」より
版権 日経新聞

医療専門のブログは別にあります。
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科専門医向けのブログです)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)