万能細胞の先行く幹細胞 その2(2/2)

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患部再生し治療  臨床研究が進む

幹細胞は損傷した細胞の代わりになるばかりではない

細胞が分化するのではなく、ほかの細胞の働きやすい環境をつくって回復を促す
場合もある」と国立循環器病センター研究所の田口明彦・脳循環研究室室長は
強調する。
同研究所などは骨髄から取り出した幹細胞を注射して脳梗塞(こうそく)を治療
する研究をしている。
ここでは注射する幹細胞自体が脳神経になって治療が進んでいるわけではない
という。

体内には神経細胞を作る細胞がもともとあり、損傷部位を治せる。
すでに死んだ部位は無理だが、死にかけているもののまだ周辺部なら、栄養源
となる血液が届けば神経細胞を治せるという。

ただ治療にはタイミングがある。
発症後7~10日後でないと効果がでない。
詳細なメカニズムはわかっていないないが、患部周辺のさまざまな物質の状態に
左右されるためとみられる。
「幹細胞をただ入れただけでは効果はでない。活動しやすい環境を整えることが
重要だ」(田口室長)という。

幹細胞は骨髄だけでなくさまざまなところにある。
相性の良い細胞を見つければ、心筋や血管、骨や神経などの再生だけでなく、
肝臓疾患の治療にも役立つ可能性がある。

国立がんセンター研究所や国立国際医療センターなどは脂肪から採取した幹細胞
を肝臓に注入して肝疾患を治療する研究に取り組んでいる。
マウスの実験で、この幹細胞を注射すると肝機能が回復することを見つけた。
がんセンター研の落谷孝広がん転移研究室長は「肝炎の進行を遅くできる可能性
がある」と期待する。

ただ、回復のメカニズムは分かっていない。
�もともとあった細胞と細胞融合して活動が盛んになる
�幹細胞が元の細胞を活性化する物質を出す

などの要因が考えられるという。
肝臓は500もの機能があり、さまざまな影響を詳細に調べて治療への可能性を
探っている。

幹細胞は部位によってさまざまな種類がある。
種類と働く場所が合わなければ機能しない。
動物実験などで安全性を十分に確かめて、組み合わせを見つけたところから臨床試験
が進んでいる。
患者に実施する場合は厚生労働省の厳しい審査を受けなければならない。

万能細胞として注目されるiPS細胞が実用化するまでには5-10年かかる
ともいわれる。
それよりも先に、体性幹細胞を使った治療が本格的に花開くかもしれない。

<キーワード>
体性幹細胞  拒絶反応起こさず
骨髄や脂肪、血液などに微量含まれている未成熟の細胞。
成長すると血液細胞になる造血幹細胞、骨や脂肪などになる問葉系幹細胞、脳の神経
になる神経幹細胞などがある。
患者自身の細胞を採取して利用できるため、成長させた組織などを移植しても拒絶
反応が起きず臨床応用しやすい。
日帰り手術などで比較的簡単に採取できる。
すでに造血幹細胞が白血病治療に以前から使われ効果や安全性が認められつつある。
まだ研究用だが乳歯の中にある幹細胞を集めた保存バンクもできた。

日経新聞・夕刊 2008.1.20 
版権 日経新聞


幹細胞のいま
http://osaka.yomiuri.co.jp/stem-cell/
(読売新聞に掲載された、体性幹細胞編とES細胞編のそれぞれのシリーズの目次です)


Yahooo!ニュース 幹細胞研究
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/science/human_stem_cell_research/
最新のニュースが紹介されています。
ちなみに今日は
「<ES細胞>網膜細胞作成に高効率で成功…理研
が紹介されていました。

特集:再生医学の最近の動向
-幹細胞を用いた再生医学について-
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt008j/feature1.html
かなり専門的な内容です。

<自遊時間>
「みんなを笑わせるポケットジョーク」(二見書房)より
■主義 
母が妹に、「学生は勉強が仕事なんだから、勉強しなさい」としかった。
妹は、「家に仕事は持ち込まない主義だから」と言い訳した。
■もうけ話 
某新聞の広告に「一万円遅れ、もうけ話伝授」と出ていた。
さっそく送金すると、返事が来た。「私とおなじことをしなさい」
■日本酒 
紙パックの日本酒を買った。「お酒はゆっくり適量を」と書かれた
すぐ横に「開栓後はお早くお召し上がりください」と書かれていた。
■試供品 
試供品を配るおねえさんいわく「持ってって、持ってって。
買うと高いのよ」。買ってほしいのかほしくないのか、わからない。
■日曜大工店 
うちの近所の日曜大工店は、日曜日が定休日だ。

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