冬の「ヒートショック」にご注意を

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ジェノベバ・マートレル 「瓶花」油彩6号
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皆さんヒートショックという言葉をご存知でしょうか。
ご高齢の方が家庭内で亡くなる原因の4分の1を占めているといわれているのが、
この「ヒートショック」です。
日本のほとんどの住宅は、リビングと廊下や水廻り部分を比べると、約6℃~10℃
の温度差があるといわれています。
マンションにお住まいの方などではそういったことはないかも知れませんが油断
はできません。
トイレ・洗面・浴室といった温度変化がご高齢の方には危険です。
その中でも浴室での死亡例が多いのです。
この入浴中に亡くなる人は、年間1万人を超えると言われており、この数は交通事故
で死亡する人より多いのです。
これらの浴室事故の70%は脳卒中などの循環器系障害によるものです。
もちろん「ヒートショック」は冬場に多く、特に厳寒期の12つきから2月に
集中します(統計上は12月が一番多いようです)。

「ヒートショック」とは?
「ヒートショック」とは、急激な温度変化が体に及ぼす影響のことをいいます。
室温の急激な変化によって血圧が急激に変化し、脈拍が早くなったりすることです。
これは、人の身体は体温を調節しようとするために血管を収縮させるので、室温の
変化によって血圧が急激に変化するために起こります。
ある研究では、正常血圧の健常な若い人でも浴室温度が10度の場合には血圧が
40mmHg変動するという結果が出ています。
高齢者や高血圧の人にとっては、心筋梗塞や脳血管障害などにつながり、命取り
になりかねないとても危険なことなのです。

「ヒートショック」は屋内の温度差が原因
一般的な日本の家は、居室は南側、トイレ・浴室・台所などの水回りは北側に設置
するのが標準的です。
皆さんの家庭はいかがでしょうか。
このため冬になると日当たりの悪いトイレ・浴室が特に冷え込み、ほかの部屋との
温度差が極端になる原因にもなっています。
真冬など、暖房をしているリビングとまったく暖房していない廊下やトイレとの
温度差は、10度を超えるといわれています。
温められていた身体が暖房のないトイレや廊下へ出たとたん、その温度差で
「ヒートショック」が起こるのです。
具体例として入浴を例にとってみましょう。
まず寒い脱衣場で脱衣をしたり、浴室に入り身体を動かすと血圧は急激に上昇します。
次に、浴槽に入ると熱い湯に触れることで心臓への負担が大きくなり血圧はさらに
上昇します。
しかし、湯につかっていると温熱効果で血流がよくなり、血圧は急激に下降します。
この血圧の乱高下は、高血圧のご高齢の方で特に動脈硬化が進んで血管の弾力性の
落ちた場合にみられます。
そして、温まった身体で寒い脱衣室に戻り着衣行動で体を動かすことによって、
再び血圧は上昇します。
このように、脱衣室や浴室の温度が低く居室や湯の温度との差が大きいと、血圧が
上がったり下がったりと身体に負担をかけることになり、ヒートショックが起こり
やすくなるのです。
循環器系の直接的なアクシデントだけでなく、急激な温度差で身体の調子を崩して、
風呂場やトイレで転倒して大けがをしたり、水死するケースもあります。

「ヒートショック」をなくす工夫
命取りにもなりかねない「ヒートショック」をできるだけ起こさないようにするには、
どうしたら良いのか考えてみましょう。
ヒートショック対策として有効なのは、リビングと廊下やトイレの温度差をなくために、
家庭内全体を温かくするいわゆる全館暖房が理想的です。
しかし家全体を暖かくするのは経済面からも簡単にはいきません。

浴室の寒さ解消のヒント
居室と浴室の温度差を少なくすることがポイントです。
そのためには、浴室を暖める必要があります。
脱衣所も裸になるところですからヒーターなどで暖かくしておく必要はあります。
狭い空間は火事などの心配もあるのでオイルヒーターが適して入るかも知れません。
浴室の暖房は日本では一般的ではなく普及率は5%ぐらいといわれています。
北欧では9割以上、韓国では50%ぐらいだそうです。

シャワー給湯
風呂に入る前にしばらく浴槽のフタを開けておいたり、マットやスノコを敷くといった
対策は経済的で良い方法です。
他に浴室を温める方法としては「シャワー給湯」といって浴槽に湯を入れる時、シャワー
を使って給湯すると効率よく浴室温度を上昇させることができます。
東京ガスの調べでは、シャワー給湯により浴室温度は15分間で約10度上昇させることが
できるとのことです。

入浴方法の注意点
一番大切なのは、入浴の際の注意です。
浴室での事故は、入浴温度41度を境にして死亡者数の増加がみられるということで、
それ以下の温度にすることを心がける必要があります。
高齢者や血圧の高い人は一番風呂を避けることも大切です。
家族が入浴した後の二番湯に入れば、浴室が温まっていますから、ヒートショックも
起こりにくくなります。
これは一番簡単な方法かも知れませんが、間をあけて入っては意味がなくなります。
「かけ湯」や「半身浴」を組み合わせるなど入浴方法を工夫しましょう。
これは心臓や肺を水圧の負担から守るので、高血圧の人、高齢者、心臓や肺機能が
弱い人には最適な入浴方法と言えます。

コツとしては
1)お湯は41度以下
2)カラスの行水(5分前後)
3)酒を飲んだら入らない
ということになります。

ご高齢の方がみえる家庭では段差解消や手すり設置などの設備のバリアフリーだけ
ではなく、温度のバリアフリーも考える必要がありそうです。

医療専門のブログは別にあります。
井蛙内科開業医/診療録 
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葦の髄から循環器の世界をのぞく
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