脳梗塞

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マックナイト 神戸シリーズ「Kobe Coast At Night」

ある週刊誌に掲載された、「脳梗塞」の最新治療の紹介です。
3時間以内に治療が必要で、それ以上たってからの治療ではかえって悪くなる可能性があるというものです。
したがって入院中の患者さんが脳梗塞を発症してこの治療に間に合うかどうかというぐらいのものです。

脳梗塞 年間の死者は約8万人 後遺症が残ることも多い


川崎医科大学病院 脳卒中医学教室 木村和美教授

昨年11月16日、当時のサッカー日本代表の監督だったイビチャ・オシム氏が突然倒れた。
12月末にはリハビリ専門病院に転院し、「移籍はサッカーにつきものだからな」と、冗談まじりに言えるほど回復したとされるが、「脳梗塞」の恐ろしさを再認識した人も多いだろう。

脳梗塞は、脳の血管が血栓(血のかたまり)によって詰まり、酸素が欠乏して脳細胞が壊死する病気だ。
年間の死者数は約8万人。
命が助かっても、手足にまひが残ったり言葉がうまく話せなくなったりして
しまう人も少なくない。

脳卒中は、「脳梗塞」「脳内出血」「くも膜下出血」など、脳の血管が詰まったり、破裂したりする病気の総称だが、このうち脳梗塞は全体の約6割を占める。

だが、素早く血栓を溶かす治療を受ければ、後遺症が残らないケースが増えるとされている。
それに関与するのが2005年10月に認可された「tPA」という薬剤だ。

この薬剤は脳梗塞のなかでも、心臓にできた血栓が脳に詰まって起こる「心原性脳塞栓症」を劇的に改善させることがある。
心臓に持病を抱えていたオシム氏以外にも、巨人軍の終身名誉監督長嶋茂雄さんやコメディアンの坂上二郎さんも、このタイプの脳梗塞だった。

ただし、発症後に時間がたってから t-PAを投与すると、血管が再開したとしても破れて出血しやすいため、「3時間以内に投与する」という厳格な基準がある。
オシム氏は自宅で倒れてから病院に搬送されるまで、かなり時間を要したことが明らかになっており、tPAで治療ができなかったのではないかと伝えられている。
つまり、一刻を争う治療なのだ。

Mさん(仮名・76歳)は、以前に心筋梗塞を患い、近くの総合病院に通院していた。
ある日、t-PAについて書かれた新聞記事を読み、心筋梗塞の患者が脳梗塞になる危険性が高いことを知った。
Mさんは「オレもなるかもしれん」と妻に告げ、自宅の電話機の近くに記事に載っていた、ある大学病院の電話番号を書いておいた。

電話機の横に貼った電話番号が命を救う
約2週間後、悪い予感が的中し、Mさんは自宅で左側の手足のまひに襲われる。
妻は救急車を呼ぶと同時に、この大学病院にも連絡した。
救急隊員にも同院を搬送先として伝え、発症から49分後、同院に到着することができた。

Mさんの症状を救急隊員から聞いていた専門医は、すぐにMRI(磁気共鳴断層撮影)と、同じ装置で血管を見るMRA(磁気共鳴血管搬影)で検査、重症度が高い脳梗塞であることを確認。
すぐにt-PAを投与すると、約1時間後にはうそのように半身まひが治った。

治療を担当した脳卒中医学教室の教授はこう話す。

「Mさんの場合は、脳の動脈のなかでいちばん太い中大脳動脈が詰まったのですが、細い先端だったのが幸いしました。また、ご本人が連絡先を書き、発症から49分という速さで病院に着いたことが、t-PA治療で成功した大きな理由ですね」

同院では、24時間365日態勢で患者に対応する脳卒中集中治療室(SCU)や、医師と救急隊員が直接電話でやりとりするホットラインも整備している。
所有する「ドクターヘリ」では、9例ものt-PA治療を実施した。

とはいえ、同院の調べでは、3時間以内に到着できたのは全症例のわずか33%に過ぎないのだという。

投与までのリミットは3時間と区切っているが、MRIの検査時間などが必要なので、発病2時間以内に病院に着く必要がある。

t-PAは、使用量の1割を急速に静脈注射し、そのあと1時間かけてゆっくりと点滴で入れることになる。
同院ではこれまで偲人63人の患者に投与し、かなりの治療効果をあげている。

国内で約2500例にのぼる3カ月後の治療成績では、社会復帰できた人は32%。
半面、約20%の患者さんが亡くなる。
この病院の成績はそれなりによく、社会復37%、死亡者も、10%だが、「夢の治療薬」ではないことも事実だ。

脳梗塞によって、頭蓋内への出血はごくまれに起こりうるが、t-PAを使うと危険性は約10倍に高まる。
また、くも膜下出血などに間違って投与すれば死はまぬかれず、投与前の入念なチェックも欠かせない。
CT(コンピューター断層撮影)画像に現れにくい脳の腫れなどの読影は専門医でなければむずかしく、t-PAの治療ができる病院は限られてくる。

週間朝日 「名医の最新治療」 より
版権    朝日新聞社

この新薬が使えるのは、治療にとりかかるまでの時間が重要です。
まず本人や周囲の人が脳梗塞を起こしたことに気づく必要があります。
もう一度、脳梗塞の初期症状をまとめてみます。

* 顔や体の片側にしびれ、マヒが出る
* 言葉がうまくしゃべれない
* 相手の言葉が解らない
* 力が入るのにフラフラする
* 片方の目が見えない、2重に見える




脳梗塞t-PA適正使用に関するお知らせ
http://www.jaam.jp/html/info/info-20051116.htm


t-PA認可により脳卒中診療はどう変わるか
http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/medicina/zadan4302/


脳梗塞の画期的治療薬「t-PA」投与と周辺実情
http://blogs.yahoo.co.jp/hip_hop_dreams/49636936.html
(このブログでは「報道ステーション」にとりあげられた内容が紹介されています)


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