ES細胞で赤血球を作製

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ラッセン 「ドルフィンエンチャントメント」 版画
http://auctions.yahoo.co.jp/jp/

ES細胞そしてiPS細胞を使った研究がいよいよ臨床応用の段階に
入ってきました。
ES細胞を使って赤血球を無限に作製するという報道。
血液疾患で再生不良性貧血や骨髄異形成症など輸血が必要な疾患は数多く
あります。
そういった疾患を持つ方に福音となりそうな記事を紹介させていただきます。

ES細胞を使って赤血球を無限に作製 マウスで理研めど

万能細胞の一種、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使って赤血球を無限に
作り出す方法にマウスでめどをつけたと、理化学研究所バイオリソース
センター(茨城県つくば市)の中村幸夫室長らが、6日付の米科学誌
プロスワンに発表した。
すでに人間のES細胞でも同様の研究を始め、別の万能細胞(iPS細胞)
を使った研究も計画している。
臨床応用できれば輸血用血液の不足を補えそうだ。

チームはこれまでに、人の骨髄などにある血液(造血)幹細胞から赤血球を
効率よく作る手法を確立しているが、血液幹細胞には寿命があり赤血球を
無限に作らせることはできなかった。

今回はマウスの8種類のES細胞株を使い、栄養細胞や増殖因子とともに
繰り返し培養した。
その結果、1年以上増殖し続ける赤血球の前段階の細胞(赤血球前駆細胞
の株を作ることに成功した。
前駆細胞は赤血球のもとで、赤血球を無限に作れることになる。

薬で急性貧血にしたマウスにこの前駆細胞を移植すると、赤血球の数や
ヘモグロビンの量などが増え、体内で前駆細胞から赤血球ができたことが
裏付けられた。
貧血症状も改善。
重症のマウスでは前駆細胞を移植した8匹のうち7匹が生き延びたが、移植
しなかった8匹では7匹が死んだ。

万能細胞から作った細胞では異常増殖などによるがん化が最も怖い。
一方、完全な赤血球まで分化させれば増殖にかかわる情報を持つ核が抜け、
がん化の心配はない。

今回作った前駆細胞株では、できた赤血球の9割に核が残り、分化は不完全
だが、放射線を当てて核が残る赤血球を完全に除くこともできる。

血液の細胞成分で無限作製への道が見えたのは初めて。人で実用化できれば、
輸血用赤血球の不足が解消され、輸血血液を介した感染リスクの低減にも
一役買いそうだ。
同じ血液型なら他人のES細胞が使える。

中村さんは「人の血液幹細胞から成熟した赤血球を作る手法がすでにあること
を考えると、臨床応用にかなり近づいた」という。

■臨床応用に期待
〈中内啓光東京大教授(再生医学・幹細胞治療)の話〉 
ユニークで実用性が高い成果だ。
赤血球は核がなく、移植の安全性も高い。
造血系や免疫系は人間とマウスで似ており、人間の万能細胞でもできる可能性
が高いだけに、近い将来の臨床応用が期待される。

asahi.comES細胞を使って赤血球を無限に作製 マウスで理研めど
2008年02月06日10時00分
http://www.asahi.com/science/update/0206/TKY200802060040.html
版権 朝日新聞社

<コメント>
この先、白血球や血小板と次々に研究成果が発表されそうです。
なんだかわくわくしてしまいますが、まだまだ乗り越えないなければいけない
ハードルがありそうです。


<番外編>

ES細胞から人の網膜細胞 再生医療実現へ一歩

万能細胞の一つ、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から人の目の網膜細胞を効率
よく作り出すことに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)
などのグループが成功した。
これまで0.01%程度だった効率が一挙に30%近くまで引き上げられ、網膜
の病気にからむ再生医療の実現性が高まった。3日付の米科学誌ネイチャー・
バイオテクノロジー電子版に掲載される。

作製に成功したのは、小坂田文隆研究員ら。網膜の主要な細胞である光を感知する
視細胞と、網膜に栄養を供給する網膜色素上皮細胞を作った。

グループは05年、マウスでES細胞から視細胞をつくった。
ただ、成分が不明な牛の血清を使うなど人に応用するには安全面の問題があった。
今回使ったのは、人のES細胞。培養時間を工夫して問題の成分を使わずに視細胞
の前段階まで分化させた。
さらに、視細胞への誘導には、レチノイン酸とタウリンが必要なことを突き止め、
誘導された細胞のうち30%近くが視細胞になった。

体のあらゆる細胞になる能力を持った万能細胞では、京都大の山中伸弥教授らが
作り出した人工多能性幹細胞(iPS細胞)が注目を集めているが、ES細胞
とでは倫理問題や安全性などで長所短所が違う。
比較研究をすることで、利点が明確になる上に、両者の万能性に違いがあるのかも
確認できる。
理研グループは、京大から提供を受けたiPS細胞でも網膜細胞の分化に成功し、
すでに機能を比べる段階に入っている。

網膜は傷むと修復が難しい。
今回の成果は、国内に約3万人の患者がいるとされる網膜色素変性や、高齢者の
失明原因となっている加齢黄斑変性などの治療法の開発に役立つ見込みだ。

asahi.com ES細胞から人の網膜細胞 再生医療実現へ一歩
2008年02月04日
http://www.asahi.com/health/news/OSK200802030034.html
版権 朝日新聞社