大豆で福は内

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岩戸敏彦 「花梨」油彩3号
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大豆で福は内、鬼は外

予防栄養学研究者 家森幸男先生

今年も早一月が過ぎ、節分を迎える(た)。
徒然草吉田兼好ゆかりの吉田神社には、鬼やらいの古儀式がある。
豆で疫鬼を追い払い、年の数プラス1個の豆を食べ、鬼が嫌うという
イワシを門(かど)に飾る風習も残っている。

大豆は今や健康・長寿の食べもの。
フランスの薬局では大豆を「食べる化粧品」として販売し、イソフラ
ボンの日本人並みの摂取が肌や血管の健康によいと説明している。
世界保健機関の協力を得た世界調査では、丸1日24時間の尿を、私
どもが考案した簡易採尿器(ユリカップ)で集めてイソフラボンを測
った結果、この摂取量が多い、すなわち大豆をたくさん食べている人
ほど心臓死は少なく、コレステロール値が低く、肥満も少ないことが
わかった。
女性では乳がん、男性では前立腺がんが少ない。
これらの死亡率が低い日本人は、平均寿命が女性世界1位、男性2位
と長い。
まさに大豆のおかげだ。

世界調査から、1日70~75ミリグラムのイソフラボンを摂れば健康
によいと推定できる。
米国食品医薬品局が勧める、心臓病のリスク低減に有効な大豆蛋白の
摂取量は1日25グラム。
この大豆蛋白量を摂るには、節分の炒り大豆なら2握りほどの約70
グラムあればよく、これには何と140ミリグラムのイソフラボン
含まれる。
これだけの大豆を毎日食べれば、まさに福は内、鬼は外。

おりしも節分は、厚労省の定めた生活習慣病予防週間(2月1-7日)
にあたる。
今年度の公募で決まったスローガンは「向き合おう 自分の体 自分の
生活」。
健康を正す「健康正月」の2月は、生活習慣を考えるよい機会だ。
大豆を食べて、鬼と共に生活習慣病も追い払いたい。

日経新聞・夕刊 2008.2.2
版権 日経新聞

沖縄の食事から学ぶ
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/01/15
家森幸男のエッセイです。
いろいろなイソフラボンの話題にリンクしています。

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<参考記事1>

大豆イソフラボン:成分含む健康食品、効果は?安全性は

大豆イソフラボン含む健康食品
骨粗しょう症の予防に」「乳がんが防げる」--さまざまなうたい
文句で、大豆成分「大豆イソフラボン」を含む健康食品が売られている。
一方で厚生労働省は、大豆イソフラボンを含む健康食品について、1日
の摂取目安量が30ミリグラム以下となるよう食品業者を指導する方針だ。
過剰摂取による健康影響を考慮したためだが、大豆食品そのものはたん
ぱく質やカルシウムに富む「重要な栄養源」(同省)だ。
大豆イソフラボンの安全性と効果は、どうなっているのか。

目安は1日に「30ミリグラム以下」
大豆イソフラボンは大豆の成分で、女性ホルモンに似た働きがある。
食品の中では炭水化物の糖と結びついていることが多いが、本体部分は
大豆イソフラボンアグリコン」と呼ばれる。
厚労省が健康食品としての1日摂取目安
量とする「30ミリグラム以下」は、アグリコンで計算した重さだ。

ただ、「大豆イソフラボン○ミリグラム」という表示は、糖も含めた重さ
のことがある。
この場合、アグリコンの重さは表示の62・5%になる。

食品安全委員会によると、豆腐1丁は60~80ミリグラム前後、納豆
1パックは30~40ミリグラム前後のアグリコンを含む。
豆腐も納豆も、食べ過ぎて健康被害が出たとの報告はない。

食品安全委の山添康・新開発食品調査会委員は「大豆食品は植物性
たんぱくなどを含み、栄養の観点から当然勧めるべきだ」と話している。

子宮内膜増殖症、発症増加の例も
しかし、大豆イソフラボンを含む健康食品となると、簡単に安全とは
いえない。食品メーカーが特定保健用食品(トクホ)としての表示許可
を国に申請したことを受け、食品安全委員会が今年5月まで2年余り
かけてその安全性を審査した。

各国の研究論文を調べたところ、イタリアで、大豆イソフラボン
アグリコン換算で毎日150ミリグラムずつ5年間摂取した女性129人
中6人が子宮内膜増殖症を発症したが、摂取しなかった133人に発症例
はなかったとの結果が出ていた。

安全委はこの研究の「150」を2で割った75ミリグラムを、みそも
豆腐も健康食品も合わせ毎日摂取しても安全な「1日上限摂取目安量」
と決めた。

通常は害が出た量を10で割って安全量を決めることが多いが、山添さん
は「日本人の経験を考えて、10でなく2で割ることにした」と説明する。
厚労省の国民栄養調査(02年)で、日本人の5%が1日70ミリグラム
以上の大豆イソフラボンを食品から摂取していると推定されたからだ。

一方、普通の食事をしている日本人女性に、1日57ミリグラムずつの
大豆イソフラボンを追加摂取させたら、血中の女性ホルモンが減ったと
いう研究もあった。
安全委は「57」を2で割るなどし、「通常の食事以外に健康食品として
上乗せ摂取しても安全な目安量」を、1日30ミリグラム以下と算出した。

豆腐、納豆は被害報告なし--厚労省、摂取量制限指導へ
では、効果はどうか。
トクホとして国が認めた大豆イソフラボンを含む健康食品は、13種類
ある。
いずれも「骨の健康が気になる方に」との表示を認められている。

認めた根拠は、女性に大豆イソフラボン40ミリグラムを10週間食べ
させたデータだった。
骨の量を直接測ったデータではないが、血液を分析した結果、骨が減る量
の目安となる「骨吸収マーカー」という物質が減っていた。

一方、米国心臓協会は今年1月、健康補助食品サプリメント)としての
大豆イソフラボンに関する世界の学術論文を調べ、「(効果の)根拠は
乏しく副作用の可能性も残る。
摂取は推奨できない」と勧告した。

閉経後の女性の骨の量の減少防止については多数の研究があり、1日80
ミリグラムから110ミリグラムの大豆イソフラボンを半年から2年程度、
人間に食べさせて、骨の量や密度の変化を測るなどの内容だった。
トクホの根拠になった研究より食べさせる量が多く、期間も長い。

しかし「効果があった」という研究と「なかった」という研究が混在し、
有効とも無効とも断定できなかった。
また、血圧やコレステロールを下げる効果は乏しく、火照りなど更年期
障害の改善効果や乳がんなどの予防効果も証明はなかったという。

国立がんセンターがん予防・検診研究センターの津金昌一郎・予防研究
部長は「大豆イソフラボンサプリメントを勧める根拠はない。
サプリメントは一般に、取り過ぎで害が出たとの報告が多いので注意が
必要だ」
と話している。

ことば 「特定保健用食品
個別に国の許可を受けて、特定の目的で健康の保持・増進に役立つこと
を表示できる食品のこと。
ただし、医薬品と誤解されるような表現は認められない。
具体的な表示としては「血圧が高めの方に」「おなかの調子を整える」
「骨の健康が気になる方に」などがある。許可を受ける際は、特定の
機能について、科学的根拠を示す必要がある。
毎日新聞・朝刊  2006.7.31 

<参考記事2>

大豆イソフラボン配合食品、妊婦・子ども「推奨せず」

大豆に含まれる栄養成分「大豆イソフラボン」を配合した特定保健用食品
について、内閣府食品安全委員会の専門調査会は9日、妊婦や子どもの
摂取は「推奨できない」とする安全性評価をまとめた。

男性や妊婦以外の女性は、ふだんの食事以外に追加して摂取する上限量
の目安を「1日30ミリ・グラム」とした。ただし、大豆食品自体は
たんぱく質源として健康的」とし、安全性に問題はないとしている。

大豆イソフラボンは女性ホルモンと似た働きがあり、骨粗しょう症
乳がん更年期障害などの予防に役立つとされ、特定保健用食品のほか、
錠剤などサプリメント(栄養補助食品)としても市販されている。

しかし、海外での研究によると、大豆イソフラボンの錠剤を5年間に
わたって毎日150ミリ・グラム摂取した女性に、健康上の問題は
ないものの、子宮内膜が増える影響が見られた。さらに、妊娠した実験
動物に大量投与した場合、子宮や胎児の生殖機能に異常がみられたこと
なども報告された。

このため、同調査会で検討を始め、妊婦や子どもが健康食品として毎日
摂取した場合、安全性や健康上の利益が科学的に証明できないと結論付
けた。
読売新聞・朝刊 2006.3.9

<コメント>
過ぎたるは及ばざるがごとし

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