メタボリック症候群ブーム

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三塩清巳 「ばら」油彩3号
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いよいよ4月より「メタボリック症候群」の概念を取り込んだ特定健診・保健指導
制度がスタートします。
今さらメタボリック症候群をテーマとして取り上げることにはいささか抵抗があり
ますが、最近の週刊誌でこんな記事が目にとまりました。
私自身、4月から医療機関として健診を施行する側に立っています。
以下の文を紹介するにはちょっと抵抗がありますが、私の考えの一部の代弁者として
紹介させていただきます。
CKD(慢性腎臓病)という言葉も最近よく聞かれますが、この疾患概念にも驚くほどの
製薬メーカーなどのバックアップ(協賛)があるのです。

メタボリック症候群ブームは製薬企業がつくっていた

京大教授・福島雅典(京大病院探索医療センター検証部教授)

「男性はウエスト85センチ以上、女性は90センチ以上でご用心」。
世は空前のメタボリックシンドロームブーム。
メタボ解消に取り組む男性がジョギング中に急死するという悲劇すら引き起こした。
だが、このブームの裏では、収益アップを狙う製薬企業がうごめいていた。

学者として、メタボリックシンドロームという概念自体に疑問を持っている。
これまで薬を必要としなかった患者を病院に走らせてしまう可能性が高いからだ。
メタボの診断基準となる高血圧や高脂血症などは、実は運動療法と食事療法だけで十分
改善が見込める。なのに突然、なぜこうした概念が出てくるのか?

背景には高血圧や高脂血症などの生活習慣病の治
療薬は市場規模が莫大だ、という理由がある。
生活習慣病の治療薬には、年間売上高が1千億円を超えるといわれるヒット製品が多い。
多額の売り上げが見込め、製薬企業には収益の”生命線”と言っても過言ではない。

世界的に多額の研究費が必要な新薬開発は年々困難になっており、製薬企業は”病気”を
新しくつくり出す必要がある。
すでに市場に出回っている薬を、より多くの患者に使用できる仕組みをつくるためである。

具体的に言えば、治療ガイドラインで病気の基準と
なる数値を下げれば対象患者が増え、薬の需要が創出できる。
メタボの基準は、単独の血圧値やコレステロール値では高血圧症、高脂血症と診断されない
値でも、複合すればメタボとなる。

メタボは日本だけが大騒ぎしているが、国際的な糖尿病学会では、日本の学会が定めた
診断基準を否定する意見も出ている。

メタボの啓発活動を行っている団体に「メタボリックシンドローム撲滅委員会」があるが、
この団体には、厚生労働省やマスコミに加え、診断基準をつくった医師が参加している。
さらに、運動を支える協賛企業には製薬会社をはじめ、健康食品などを販売する企業が名
を連ねている。

これはあくまで個人的な見解だが、啓発活動を行っている団体が製薬会社にお金をもらう
ことは、運動の正当性に対する説得力が欠けると思う。
なぜなら、学者と企業が癒着してしまう「利益相反」となりかねない土壌を生み出すからだ。
癒着が表面化しているといわれても仕方がない。

どんなキャンペーンが張られようとも、太り気味な人は毎日朝夕30分間歩き、最低でも
週2回の運動を1回に1時間行えば、メタボ対策は十分だ。

週刊朝日2008.2.15


メタボリック症候群に科学的根拠なし!
http://ajapoo.iza.ne.jp/blog/entry/172367/
#診断基準の1つに「ウエスト85cm以上は要注意」とあるが、180cmの人と160cmの人が同じ
でいいのか?
#ウエスト測定は、日本ではおへその位置で測定する。女性は腸骨が発達してる人が多いので、
へその位置で測定すると内臓面積より腸骨の大きさを反映する
#血圧は年齢にかかわらず85/130mmHgが超えてならぬ数字になっている。
しかし、高齢になるほど正常血圧は上昇する傾向にある。
#米国糖尿病学会と欧州糖尿病研究学会が,メタボリック症候群という概念そのものを疑問視
する共同声明を発表していたのです。
#06年1月にフジサンケイグループが立ち上げた「メタボリックシンドローム撲滅委員会」の
協賛には 多くの製薬企業が名を連ねている。
http://www.metabolic-sankei.jp/
厚労省はメタボ対策で医療費抑制を図ろうとしているが、逆に医療費が増えるという指摘
もある。

メタボリック・シンドローム・ネット(メタボリックシンドローム撲滅委員会)
http://metabolic-syndrome.net/


第14回「危ないジェネリックと汚いメタボリック~厚生労働省の新基準で国民の9割が
不健康に」
http://ameblo.jp/urayominews/entry-10018570223.html

腹囲論争
http://wellfrog.exblog.jp/7416058
#女性の腹囲は80センチを基準に メタボ診断、東北大発表 '07/10/19


特定健診・保健指導制度
http://wellfrog.exblog.jp/8124369
#現制度では非肥満の糖尿病予備軍が取りこぼされる
#特定保健指導の実践には大きな負担と課題

体重と全死因死亡率
http://wellfrog.exblog.jp/8233407
#やや過体重のほうが好結果
全死因死亡率の有意な低下に関連
#適正体重が最良ではない
#若干の過体重では生存率増加

こんな新聞記事もあります。
<メタボ健診>自治体6割「専業主婦などに対応できない」
2月3日2時30分配信 毎日新聞
4月から始まる特定健診・保健指導(メタボ健診)で、夫が会社員の専業主婦など、
被用者保険(組合健康保険など)の被扶養者に、指導を受けられない人が大量に出る
恐れがあることが、厚生労働省の調査で分かった。該当する被扶養者は約880万人
いるが、主に指導を担う市町村などの約6割が調査に「対応できない」と答え、
約3割も「未定」と回答。メタボ健診には医学的根拠に疑問の声が出ているが、
実施体制の不備も浮かんだ。

メタボ健診は40~74歳が対象。メタボリックシンドローム内臓脂肪症候群
対策として、保険者(国民健康保険は市町村など、組合健保は健康保険組合)に実施
が義務付けられる。腹囲などの基準に該当する人は保健指導の対象となる。被用者保険
は加入者本人には職場などで実施し、被扶養者は住所地で受けるよう、主に市町村など
へ委託する。都市部以外では、民間業者など他の委託先が少ないためだ。


<コメント>
きょうはかなり辛口になってしまいました。

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