グルコサミン その1(1/2)

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中年以後、膝の痛みで悩んでみえる方は多いのではないでしょうか。
整形外科へ通うある程度の年齢異常の方の多くは、この膝の痛みか腰痛といっても
過言ではありません。
この膝の痛みの原因のほとんどは「変形性膝関節症」です。
最近、サプリメントの広告などで「グルコサミン」という言葉を目にする機会が
ふえました。
服用でどれだけ吸収されるだろうかという疑問もありますが、きょうはこの
「グルコサミン」をとりあげてみました。

ひざ痛み緩和  医学界も関心

薬局に並ぶグルコサミンには「立つとき座るとき気になる方へ」とか「活動的な毎日を」
といった表示が目立つ。
薬と違い、効果や効能はうたえない。
それがかえって、どんなデータがあるのか、正確に知ることを難しくしている側面もある。

大手原料メーカーの甲陽ケミカルで加工前のものを見せてもらった。
白い粉末で、水にもよく溶ける。
原料は?
「東南アジアの養殖エビのむき身を取った後の殻を使
っています」と武中大輔・専務。
殻を酸やアルカリで処理し精製する。
カニの殻も原料になる。
ただ、坂本廣司・企画開発部長は「人間には殻を分解する酵素がないので、殻を食べても
グルコサミンをとったことにはなりません」と話す。

グルコサミンは、私たちの体内でどんな働きをしているのだろうか。
日本医科大の中村洋・准教授(リウマチ科)に聞いた。

ひざなど関節の軟骨は、動きを滑らかにし、歩いたり走ったりする際の衝撃を和らげる
クッションにもなる。
その軟骨の成分の一つがグルコサミンだ。
「アミノ糖」という、ブドウ糖アミノ酸の一部分がくっついた物質で、炭水化物と
たんぱく質をもとに体内でも作られている。
コンドロイチンという、多糖類の一種も軟骨成分の一つで、薬になっているものも
あるそうだ。

    ■ □ ■

慢性的なひざ痛は、年とともに軟骨がすり減り、炎症や変形を起こしていることが多い。
「変形性膝関節症」で、患者は1,000万人と推測される。
治療は、運動療法で症状の悪化を抑え、痛みを薬で和らげるのが中心。
根本的な治療法はない。
人工関節手術に頼ることもある。

中村さんによると、西欧では30年ほど前から、経験的に関節痛のサプリメントとして
使われてきた。
「ただ医師の関心は低く、効果にも否定的だった」。
ところが、90年代後半、米国の医師が著作で効能を説いてブームが起きた。

2001年にはベルギーを中心とするチームが英医学誌ランセットに「有効性が認めら
れた」という論文を発表した。
212人のひざ痛患者を無作為に2組に分け、一方に1曰1.5gのグルコサミンを、
もう一方に似せた物質(プラセボ=偽薬)を3年間飲んでもらった。
すると、痛みが改善したほか、X線写真を比べるとグルコサミンを飲んだ組のほうが
軟骨のすり減り具合が少なかったという。

「疑問も多く示されたが、医学界としも無視できなくなった」と話す中村さんらも、
50人余りの患者を2組に分けて3カ月間研究。
グルコサミンを飲んだ組は、ひざの痛みなどの指標が改善したという。
中村さんは一定の効果はあると思うが、科学的には賛否両論あり、まだ決着がついて
いない状態です」と話す。

グルコサミンを取り過ぎて弊害はないのか

日本医科大の中村さんは「もともと体内で作られているので代謝の仕組みも備わっている。
多少とりすぎても蓄積されることはありません」とい
う。
糖の-種ということを考えると糖尿病に影響しそうだが、「標準的な摂取量は1日1.5グラム。
この程度ならほとんど心配はない」と中村さん。

ただ、原料のエビやカニに食物アレルギーのある人は念のために注意が必要だという。

朝日新聞・朝刊 2008.3.23
版権 朝日新聞社