頚椎症

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手や足にまで しびれやマヒも 転倒などで悪化に注意


東京医科歯科大学 四宮謙一教授

「借金しすぎて首が回らなくなった」という言葉があるように体の中でも首は
最もよく動く部分のひとつだ。
必然的に痛みも多い。
東京医科歯科大学の四宮謙一教授(整形外科学)は「症状や生活パターンをよく
見る必要があるが、手などにしびれのある場合は将来を考えると早めに手術を
した方がよい」と言う。

首の痛みにはいろいろ種類があります。
多いのは頸椎(けいつい、首の骨)にかかわるものです。

「私たちの体を支えている脊柱(せきちゅう)は、頭の側から頚椎(7個の椎体骨
で構成)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙骨に分けられます。
椎体骨の間には椎間板(ついかんばん)があって、椎体骨同士をくっつけ、クッシ
ョンの役割をしています」

「頸椎の椎間板や椎体骨は加齢とともに変性・変形し、脊柱内を通っている神経を
圧迫します。頸椎は胸椎、腰椎に比べて大きく動くので、それだけ変性・変形する
のも早いと考えられます。人によって異なりますが、40歳代以降の中高年は
予備軍と見てよいでしょう。加齢のほかにラグビーなどの首に大きな力ががかる
スポーツや、重いものを持ち上げることも原因になります」

'''首の痛みをもたらす変性疾患を頚椎症と呼んでいますが、この中にも脊髄(せきずい)
や神経が圧迫されて症状を出すものがありますね。'''

頚椎症性神経根症と頸椎症性脊髄症があります。頸椎症性神経根症は脊髄から出て
肩や腕にいく神経が圧迫されて起き、頸椎症性脊髄症は脊髄が圧迫を受けるため起きます」
 
「神経根が圧迫された症例では、首や肩に痛みがあるほか手の指のしびれなどをもたらし
ます。頸椎症性脊髄症では箸(はし)がうまく使えない、うまく字が書けないなどの症状
が表れます。重度になると足にも症状が表れ、歩行や排尿が困難になることもあります」

どのような治療をしますか。

「椎間板や背骨の関節などが原因の頚部(けいぶ)痛では周囲の筋肉まで収縮して痛み
をもたらしますから、これを和らげるのがまず大切です。筋弛緩(きんしかん)薬や
消炎鎮痛薬を使いますし、加温や圧痛点へのレーザー治療なども行います」

「神経根が押されて手の指にしびれが出ている神経根症では、薬や首のカラー固定で
比較的短期に症状が軽減することが多いので経過を見るようにしています。
しかし、手足に症状が出た脊髄症の人には私は早めの手術を勧めています。
脊髄の圧迫は多くは治りませんから、時がたつとともに脊髄そのものの変性が強く
なっていきます。将来を考えると早めに手術をしたほうがよいでしょう。脊髄や神経根
の圧迫をのぞくと痛みやしびれがなくなる人は多いようです」

「しびれや麻痺(まひ)を伴った頚椎症性脊髄症では、激しい運動や転倒で悪化する
ことがあります。美容室で髪を洗う時に反り返って首の麻痺が強くなったという例も
あります。痛いからと整体に行くことはやめた方がいいでしょう。 頚椎に無理な力を
かけることになりますから」

靱帯が固くなる骨化症でも痛み

首の痛みやしびれをもたらすものとしては頸椎症のほかに靱帯(じんたい)骨化症が
ある。
靱帯は脊柱を縦走し椎体骨をつないでいる組織で、前縁(腹側)を走っている前縦靱帯
と後縁(背中側)を走っている後縦靭帯、それに黄色靱帯があり、これらが固くなる。
靭帯は胸椎、腰椎にもあるが、よく動かす首の靱帯が問題になることが多い。

中高年で発症し原因はいくつかの遺伝子と環境要因 と考えられている。
比較的多いのが後縦靱帯骨化症で全人口の2-3%で生じるといわれるが、脊髄
(せきずい)を圧迫し発症しているのはその一部だ。

日経新聞・夕刊 2008.3.25 
版権 日経新聞社 

<コメント>
■ 神経根や脊髄の圧迫といっても変形した骨や固くなって肥厚した靭帯などが原因の
場合と椎間板ヘルニアのように比較的軟らかいものによる圧迫では異なります。
前者は進行性なのに対して後者の9割は症状が軽減するといわれています。
経過をみていてどんどん悪くなるようなら前者であると大体診断がつくわけです。
治療方針は異なるので両者の鑑別はとても大切です。
しかし実際は区別がしっかりつかない場合や両方が起こっている場合もあります。
■ 頚椎の手術は整形外科だけではなく脳外科でも行います。
日本では脳外科といいますが、諸外国では神経外科(neurosurgery)といいます。
そのことがわかれば脊椎の手術を脳外科が手行う理由もわかっていただけると思います。