ポトマックの桜とネズミ

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小川久雄 富士山眺望(桜) 油彩8号
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最近新聞に掲載された予防栄養学研究者の家森幸夫先生のエッセイの
紹介です。


桜は日本の花だが、今や世界的な名所の一つに、米国の首都ワシントンの
ポトマック河畔がある。
かつて日本から贈られたソメイヨシノが大切にされ、毎年見事な花を咲か
せる。
40年前、ワシントン郊外にあり世界最大の医学研究所といわれるNIH
(国立医学研究所)に留学していたころ、この桜の美しさを満喫できた。

その頃のワシントンでは、日本からの贈り物は桜とネズミ(高血圧や脳卒中
を遺伝的に確実に起こすラット)だとよくいわれた。
このラットはNIHでは永久保存種となり世界に分与されることになった。
その後世界中の降圧剤の多くがこのモデルから開発されたことを考えると、
まんざらアメリカ人特有のユーモアを交えたお世辞でもなかった。

当時日本では脳卒中が死因の第一位、今でも三大死因の一つである。
寝たきり、認知症の最大の原因でもある脳卒中を、食事で確実に予防する知恵
を与えてくれたのもこのラットだ。
高血圧関連の心臓病や、腎臓病などの治療、予防にも貢献した。

昨年11月、山中伸弥京大教授らが、ノーベル賞もと噂(うわさ)される
快挙として「万能細胞の作製成功」を発表したとき、ブッシュ大統領の賛辞が
世界中に流れた。
現在の米国にも似た経済的困難の時代に救世主のように現れた元映画俳優の
レーガン大統領は、現職中に世界の有名人一人ひとりに誕生カードを送っていた。
何と、高血圧ラットを開発した私どもの恩師、故岡本耕造京大教授(病理学)
の誕生日にも米国からカードが届いた。
「人類の健康、福祉に尽された偉大な貢献に感謝して」と書かれ、自筆の
サインがあった。
米国には今も昔も基礎研究への理解と励ましの精神がある。

出典 日経新聞・夕刊 2008.4.5 「あすへの話題」より
版権 日経新聞社 

<コメント1>
医学生の子供が、3月より短期留学で米国東海岸のある大学の医学部に行って
います。
先日ワシントンに遊びに行ったみたいで川岸の桜の写真をメールで送ってきて
くれました。
日本とほぼ同時期に開花することが不思議です。

<コメント2>
家森先生のことは、このブログで今までに数多く紹介させていただきました。
すべて表示をクリックしていただいて内容検索で家森
調べていただくとご覧いただけます。





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