後期高齢者医療制度 その1(1/2)

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4月から後期高齢者医療制度が始まり全国でブーイングの嵐です。
ある日の新聞で「後期高齢者医療制度」という記事が目にとまりました。
私のような開業医はもちろん、75歳以上の方やその家族の方にとっては
「高齢者担当医」という制度も多いに関心があるところです。

地方医師会 広がる反発

報酬定額 月 6000円の「担当医」 必要な検査を省く恐れ

4月に始まった「後期高齢者医療制度」(通称・長寿医療制度)に、地方での反発
が広がっている。
茨城や秋田などの県医師会は、外来診療の制限になりかねないと真っ向から反対。
地方議会でも「国会はお年寄りの気持ちを分かってない」と保守系議員が「制度廃止」
を求める。
ただ、従来の医療のあり方を見直す立場から、新制度に期待を込める医師もいる。

「みなさん、こんな高齢者いじめの制度が許せますか!」

茨城県内の病院や診療所にこんなポスターが張られている。

県医師会が今月、3千枚を作製して配布した。
撤回を求める署名活動も始めた。
日本医師会は最終的に賛成したが、患者を診ている我々からすれば不利
益な制度だ」と、県医師会常任理事の会沢治医師は話す。

問題視するのは、4月改定の診療報酬で新たに導入された「高齢者担当医」の
考え方だ。

お年寄りは、高血圧や糖尿病など慢性の病気をいくつも抱え、別々の病院に通う
ことも多い。
そこで、厚生労働省は、外来診療で「担当医」が、患者の同意を得て診療計画をつくる
などした場合、定額月6千円(患者負担は600円)の報酬を支払う仕組みをつくった。

ただこの枠組みでは、担当医は患者1人につき1人に限られる。
ほかの病院や診療所は、症状急変の場合以外は、検査や画像診断、湿布を張るなど簡単
な処置について医療費を請求できない。
担当医が行う場合も、検査などは1ヵ月で何度してもしなくても定額払いだ。

会沢さんは「何回検査しても同じ報酬なら、利益のために必要な検査を減らす医師が
でるかもしれない。1人の医師が患者を囲い込み、複数の診療科の医師で老人を支える
仕組みが壊れる恐れもある」と心配する。

このため同県医師会は、会員たちに「担当医」にならないよう呼びかける。

秋田県医師会も今月11日に導入を当面見送る方針を決めた。
山形、群馬、埼玉の各県医師会や青森市、神戸市など地域単位の医師会にも同様の動き
が広がっている。

足元からの反発に、導入を議論した厚労省の審議会委員だった日本医師会中川俊男
常任理事は16日の記者会見で「誤解もある。パニックに陥らないようにして欲しい」
と話し、現時点では緊急対応が必要な問題はないとの立場。
「包括化(定額払い)は基本的に反対。だが、ぎりぎりの決着で受け入れた以上、
モノが言いにくい」(幹部)と歯切れが悪い。

愛知県保険医協会も、10日、「後期高齢者診療料の届け出、算出は慎重に」と、会員
の開業医約3500人にファクスなどで呼びかけた。
包括払いではなく、従来通りの出来高払いに、と会員に促す内容だ。
事務局の澤田和男さんは「日本の医療の良さは地域の開業医の専門性が高いこと。
それを自由に受けられる仕組みをしばれば、地域崩壁につながる」と懸念する。

朝日新聞・朝刊 2008.4.18
版権 朝日新聞社

<コメント>
■「高齢者担当医」については私自身正直よく理解できていません。
この記事の中のように、医師会によっては見解を出しているところもあるようですが
私の所属する医師会では何の通知もありません。
「高齢者担当医」の件で患者さんが来院されたらどうしようと、この記事を読んで
から思うようになりました。
4月の診療報酬改定ではいっぺんに多くのことが変わってしまい現場は大混乱です。

■「後期高齢者医療制度」(通称・長寿医療制度)。
正式名称は「後期高齢者医療制度」のままなんですね。
われわれは「長寿医療制度」といってお互いに気を使い、役所仕事では「後期高齢者
医療制度」という言葉のまま。
私もそんな日本がつくづくイヤになってきました。

定年後は海外へ脱出。
団塊世代の方の中には、そんな夢を持ってみえた方も多いではないでしょうか。
円の価値が下がり、海外の物価が上昇して海外脱出をやむなく断念。
そんな方も実際おみえになります。

国内の人口の自然減に加えて海外脱出。
外国人の流入による増加。
後者については昨日のテレビ番組でもとりあげられていました。

■みなさん日本医師会にはどのような印象をお持ちでしょうか。
多分あまりよい印象をお持ちではないと思います。
文中にあったように県医師会と温度差があり、また県や市の医師会と医師会員
との間にも考えにギャップがあるのです。
医師専門のブログがあり、その中ではさまざまな不平不満(ほとんどが正論)
がわれわれ現場の医師の間で渦巻いているのです。

■きょうの朝日新聞朝刊に、全国世論調査(電話)の結果が一面トップ記事に
出ていました。
この制度を「評価しない」が71%、「評価する」が18%。
意外や意外。
2割の人もが評価しているのに驚きました。
もっとも、「評価する」人達は当事者でも医療関係者でもないのでしょうが。
自分が当事者になった時に事の重大さに気づいても・・・。


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