「ニコチン依存症」治療に飲み薬

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毎年5月31日は「世界禁煙デー」です。
当院へ来院される方の中に喫煙されている方はまだまだ多く見えます。
そんな方には禁煙を勧めるのですが、返ってくる言葉は「わかってはいるんですが・・・」
という返事。
その返事もこっちではわかっているんです。
そんな方にはそれ以上話しても時間の無駄。
さっさとこちらも話題を変えます。
一応医師としてはこれで注意したことにはなるんですから。

タバコを吸うのは個人の自由です。
そのことに異議をはさむ余地はありません。
しかし受動喫煙で奥さんが慢性閉塞性肺疾患COPD)になったり肺がんになったり
することもあるのです。
要するに吸わない人に迷惑をかけているという観点がまず必要です。
そして健康で長生きすることが出来ないかも知れないという覚悟も勿論必要です。

喫煙は「ニコチン依存症」という病気ととらえられており、ある種の薬物中毒です。
はっきりいって禁煙は簡単ではありません。
その手助けとして禁煙補助剤があります。

禁煙、新たな選択肢に期待

たばこがやめられない「ニコチン依存症」の治療に、飲み薬タイプの新薬「チャンピックス」
(一般名バレニクリン)が、保険適用になり、まもなく販売が始まる。
禁煙の成功率を高める新たな選択肢に期待がかかるが、カウンセリングや再喫煙を防ぐ環境
整備の重要性に変わりはない。

「大きい効果」、副作用に注意

東京都内の男性(60)は2005年、知人に誘われたバレニクリンの臨床試験への参加を
機に禁煙を決断した。
1日20~30本を35年間吸い続け、起床直後の1本や仕事の合間の一服が欠かせ
なかった。
禁煙前は、イライラをどう抑えればいいのかと不安だったが、参加してみて拍子抜けした。

「苦しさもなく、すんなりと禁煙できた。薬の効果が大きかったのだろう」と振り返る。
最初の1週間で徐々に薬の量を増やし、その後11週間は朝、夜の食後に1錠ずつ服用。
診察やカウンセリングも受けながら、禁煙を続けた。

男性の臨床試験を担当した医師は「イライラや気分の落ち込みといった離脱症状を抑えられ、
もし喫煙しても満足感が得られにくいなど、作用の仕組みがこれまでと違う」と新薬を評価
する。
 
すでに、禁煙治療で保険適用されているニコチンパッチは、はり薬で皮膚から吸収される
ニコチン量を次第に減らして禁煙につなげる。
しかし、皮膚のかぶれを気にする人もいた。
ニコチンガムは保険がきかない市販薬だ。
 
バレニクリンが作用する仕組みは、パッチやガムとは異なる。
喫煙による快感は、ニコチンが中脳にある受容体と結びつき、神経伝達物質ドーパミン
放出することでもたらされる。
バレニクリンは、ニコチンより受容体に結びつきやすいため、ニコチンが受容体に結合
できなくなる。
一方、バレニクリンと受容体が結合すると、ニコチンの半分程度のドーパミンは放出される
ため、離脱症状が抑えられるという。

国内19施設、計515人が参加した臨床試験では、12週間、1ミリグラムの錠剤を
1日2回服薬した患者の禁煙率は65・4%と偽薬を26ポイントほど上回った。
量が多いと成功率も上がった。
実際の治療では、パッチによる禁煙治療と同じく12週間が保険の適用。
当面は2週間ごとに医師の診察やカウンセリングを受ける。

日本循環器学会などによる試算では、自己負担3割の場合、12週間の治療費はニチン
パッチで約1万2千円だが、新薬は約1万8千円と割高だ。
だが、パッチで必要な開始日の完全禁煙は不要という利点がある。
バレニクリンでは、1週間かけて薬の鐘量を徐々に増やしながら、その間に徐々に喫煙
本数を減らす。
「喫煙者は離脱症状に不安を抱き、徐々に本数を減らしたいという気持ちが強い。
新薬は、禁煙への自信を深める助走期間があり、心理的ハードルを下げる」とある
医師は話す。
 
ただ、副作用には注意が必要だ。
臨床試験では1ミリグラム群の患者の24%に吐き気、10%に軽い頭痛がみられた。
因果関係は不明だが、米国では少数にうつ状態や自殺願望などが報告され、米食品医薬品局
(FDA)が注意を促した。


克服には工夫の積み重ねも

海外の研究によると、禁煙補助薬を使わない場合に比べて、バレニクリンで約3倍、
ニコチンパッチで約2倍、禁煙率を高める効果があった。
だが「魔法の禁煙薬」は存在しないことを肝に銘じて欲しいと専門家は指摘する。
 
禁煙治療では
�禁煙の意志を維持する明確な動機
�指導者からの適切なアドバイス
離脱症状を和らげる禁煙補助薬
の三つが達成率を高める。
今回の臨床試験でも、開始から52週後も禁煙が継続していたのは、1ミリグラ
ム群の患者で34.6%・偽薬との差は11ポイント余まで縮まった。
ただし、服薬終了後もカウンセリングは続けた。
 
苦しい離脱症状を起こすニコチン依存や、喫煙の記憶がいつまでも残る心理的な依存を
自力の挑戦で乗り越えるためには、自らの喫煙パターンを知り、つらいときはアメを
なめたり水を飲んだり、再喫煙の誘惑がある環境を避けるなどの工夫を積み重ねる必要
がある。
自力で禁煙を達成するには失敗を繰り返しながら、10年かかると一般に言われるという。

「禁煙補助薬は離脱症状をやわらげる。カウンセリングでは、つらさが続く期間を示し、
次の目標をはっきりさせて不安を取り除く。並行して本人の禁煙意欲を支えている」と
ある医師は話す。
 
新薬やパッチの処方を含む禁煙治療を保険適用で受けられるのは、禁煙外来などがある
約5200施設。
日本禁煙学会のウェブサイトで調べられる。
保険適用には喫煙期間やニコチン依存度が一定以上などの条件がある。

出典 朝日新聞・朝刊 2008.4.20
版権 朝日新聞社

日本禁煙学会
http://www.nosmoke55.jp/


漫画、テレビアニメ「NANA」の喫煙描写に対する抗議文・要請
http://www.nosmoke55.jp/action/0606nana.html

禁煙補助薬 国内初の飲み薬/成功率パッチの1・7倍
http://www.business-i.jp/news/for-page/naruhodo/200804250005o.nwc
国内初の飲む禁煙補助薬「チャンピックス」=写真=が来月8日にファイザーの日本法人
から発売されます。
最近では、オフィスでの全面禁煙はもちろんのこと、タクシーやホテル、飲食店など
公共的施設でも禁煙が広がりをみせています。製薬各社は、これを商機ととらえ、
新製品を続々と投入する計画です。
禁煙補助薬の市場はますます拡大傾向にあります。

日本で最初に禁煙補助薬が発売されたのは1994年。
医療用の禁煙ガム「ニコレット」です。ニコチンが成分で、ニコチン依存状態にある
喫煙者にガムを与えてタバコを我慢させながら、だんだんとガムの数も減らしてもらい
禁煙を実現させるというもので、99年には皮膚からニコチンを吸収させて禁断症状を
緩和する付けるパッチタイプの貼り薬も販売されました。

禁煙ガムは、2001年に大衆薬に承認され、一般の薬局・薬店で購入できるように
なりました。
現在は1000円程度から購入できます。一方のパッチタイプも、06年に保険診療
によって治療が受けられるようになったことで、自己負担率が下がり、予約が殺到
するようになりました。
価格は診療代を含め、1万2000円程度とガムに比べて高いのですが、ガムに比べて
禁断症状が少ないといった声もあるようです。現在は、ガムと同様に大衆薬版を開発中
で、安価になる見込み。さらなる普及拡大が見込まれています。

今回発売する「チャンピックス」は、これまでの禁煙補助薬と違い、ニコチンを補充する
のではなく、脳内のニコチン依存にかかわる仕組みに直接作用します。
ニコチンを使わずに、喫煙による満足感や禁煙に伴うイライラを抑制するのが特徴で、
保険がきく薬として認められており、医療機関で使われます。
価格は1万8000円程度と、パッチに比べてさらに高額ですが、禁煙成功率は1・7倍
程度高まるそうです。

世界保健機関(WHO)によると、18年の日本の喫煙率は29・6%で、先進国の中
では高レベル。
保険診断によって、治療が受けられるようになったのも、喫煙率の高さがその理由のひとつ
に挙げられます。

また、医療経済研究機構によると、喫煙者の医療費、間接喫煙者の医療費、逸失される
労働力の損失、火災による損失を含めて、喫煙による経済損失は年間7兆3000億円
にのぼるとの試算もあります。
タバコ税による税収2兆8000億円を差し引いても5兆5000億円の損失だそうです。

大阪府立健康科学センターの中村正和氏は、「禁煙は意志の強さで決まると思われがち
ですが、立派な病気。治療を受けましょう」と呼びかけています。
一方で、嗜好(しこう)品としてタバコを吸う愛煙家がいるのも事実。
協調して共存できる社会が望ましのは、いうまでもありません。

FujiSankei Business i. 2008/4/25

禁煙ガイドライン
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/saisin/20051212ik09.htm?from=goo
日本人の喫煙率は成人男性46%、女性14%。他の先進国と比べ男性はとりわけ高く、
女性も比較的低いとはいえ、若い世代で増加傾向にある。
年間30万人が死亡するがんの
3分の1は、喫煙が関係しているとされるほか、糖尿病や脳卒中心筋梗塞(こうそく)
などの危険性を高める。
国も、禁煙を生活習慣病の予防策の柱に掲げている。

指針は、禁煙治療を一部の専門家が行うだけでなく、一般の医師、歯科医師が、普段の
診療を通じて指導することで、喫煙率の低下につなげるのが狙いだ。



製薬世界最大手、米ファイザーの日本法人は28日、医療機関で禁煙治療を受けた従業員に、
一律5000円を支給すると発表した。標準的な禁煙治療の自己負担額の4割程度にあたる
という。同社は近く経口禁煙補助薬「チャンピックス」を発売する予定で、まずは社員に
禁煙を促す。

4月1日~10月31日の間に禁煙治療を終えれば支給し、実際に成功したかどうかは
問わないという。
さらに、5月31日の「世界禁煙デー」を機に、昼食時などを除いて勤務時間中の喫煙を
全面的に禁止する。

ここ数年は、喫煙するMR(医薬情報担当者)の「出入り禁止」を宣言する病院が増えて
おり、製薬会社として禁煙の姿勢を強くアピールする考えだ。
(2008年3月29日 読売新聞)

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