老人性いぼ

老人性いぼ、気になる? 加齢に伴い顔・首・背中に・・・「美容で除去」増 皮膚がん心配なら受診を 

加齢に伴い発症する人が増えてくるのが老人性いぼ。顔や首、背中、胸などにできる良性腫瘍だ。

ただ、皮膚がんの初期病変に似ており、見た目では判断しにくい。

気になる人には皮膚科での受診を勧めたい。

 

「1年前から急にいぼができた」「目立つので気になる」。

東京都の某皮膚科には40代以上の中高年患者が多く訪れる。

この診療所の院長は老人性いぼの除去を月間100件ほど手掛ける。

件数は3年間で2倍以上に増えた。

患者の7割が女性で、年代別では50代と60代が3割ずつ。

院長は「営業職や接客業の方が多いようだ」という。

 

老人性いぼは他人に感染することはないが、家族の勧めで皮膚科を訪れる人も多い。

治療を受けた都内在住の会社員(59)は数年前から顔に複数のいぼができ、家族からは「いぼがうつるので風呂は最後に入って」と言われたという。

顔を拭くタオルも別々にされた。

「妻から受診を強く勧められた」ので、受診に踏み切った。

 

いぼの治療としてはハトムギから抽出したエキスを成分とする「ヨクイニン」を配合した市販薬もあるが、老人性いぼへの効果はあまり期待できないというのが皮膚科専門医の見解だ。

 

老人性いぼは専門的には「脂漏性角化症」や「老人性疣贅(ゆうぜい)」と呼ぶ。

色は茶や黒で、大きさは直径数ミリメートルから数センチメートルほど。

ほくろとは異なり、硬い隆起ができる。

しみのように見えることもある。

健康保険が適用される液体窒素による治療で除去できる。

患部に綿棒で液体窒素を塗布し、凍結治療する。

かさぶたができるが、たいていは1~2週間ほどで治る。

 

ただ、人によって傷痕が残ることもあるという。

このため、顔や首など目立つ場所は炭酸ガスレーザーを使う治療法が良い。

ただし健康保険の適用対象外なので、自己負担は1万~10万円程度となる。

治療後はかさぶたができ、1週間程度できれいに取れる。

 

液体窒素やレーザーによる治療はともに入院の必要はない。

治療時間は症状にもよるが、一般的には10分間程度で済むという。

レーザー治療の場合は、いぼを除去した部分の傷痕が残らないようにテープで保護する必要がある。

 

都内に住む女性会社員(41)は目の横に直径5ミリメートル程度のいぼが4~5個あるのが悩みの種だった。

「色が最近、濃くなってきた」ため、8月にレーザー治療で除去した。

「これで化粧する時も気にならない」と満足げだ。

 

都内の男性会社員(59)も顔のレーザー治療を受けた。

いぼの除去後は「同僚からも好評」と喜ぶ。

 

老人性いぼは良性腫瘍のため、見栄えを気にしなければ放置していても構わない。

ただ、皮膚がんの初期病変に似ているというのが少々気掛かりだ。

治療を数回受けたのに除去できなかったり、いぼが少しずつ広がってきたりする場合は皮膚がんの可能性を考える必要がある。

 

光を使用した虫眼鏡のような仕組みの検査装置を使って診察する。

いぼの様子を10~30倍程度に拡大して光を当てながら、色素の分布や血管の構造を調べる。

皮膚がんの疑いがあると判断すれば、細胞を調べる精密検査に移る。

ところで、老人性いぼはなぜできるのか。

ある皮膚科専門医は「加齢や紫外線によってできると言われているが、詳しい原因は不明」と話す。

治療法はほぼ確立されているが、発生源はなお未解明のようだ。

 

患者数、10年で3倍超

老人性いぼの患者数はここ数年、急増している。

厚生労働省が3年ごとに実施している調査によると、治療中の患者数は2005年の1万人から17年には3万4000人に増えた。

治療を終えた人や受診せずに放置している人は含まないので、発症者の数はさらに膨らむ。

背景には高齢化のほか、中高年者の美容意識の高まりがある。

 

皮膚の老化現象で中高年者にできる症状はほかにもある。

 

首や背中などにできる茶色や肌色の直径数mmの柔らかい小さなブツブツは「軟性繊維腫」。

皮脂の分泌が多い額や鼻、頬のあたりが黄色や肌色に直径数mm盛り上がる「脂腺増殖症」といった疾病もある。

 

これらも放っておいて問題ないが、鏡を見て気になる人は皮膚科専門医に相談した方が良い。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・夕刊 2019.9.18

 

 

 

<関連サイト>

脂漏性角化症

https://medicalnote.jp/diseases/脂漏性角化症

・単発・多発ともにあり、茶~黒色調で表面がカサカサ(角化)した隆起性病変です。特に中高年の方の顔、首、体にできることが多いです。

 

・紫外線や加齢による皮膚の老化が原因と考えられており、中高年に好発します 。 数が急に増えて、かゆみを生じる場合は、レーザートレラー症候群(Leser-Trelat syndrome)といい、内臓のがんと関連した症状であることがあります。

 

・顔面や頭部、体幹などに、はじめは平らなしみとして現れ、徐々に盛り上がってきます。

・通常大きさは2cmくらいまでで、色調は茶色から黒褐色までさまざまですが、なかには無色素性の(色のない)ものもみられます。

自然消退はなく、加齢とともに数が増えていきます。

 

・有棘細胞がんやメラノーマなどの皮膚がんの初期病変は脂漏性角化症に似ていることもあり、見た目では区別がつきにくいことがあります。

 

・より正確な診断にはダーモスコピーが有効です。

ダーモスコピーとは、病変部に超音波検査用のジェルを塗布してから、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を皮膚面に当て、皮膚に分布するメラニン色素や毛細血管の状態を調べる検査です。

 

・大きさや部位によって手術、凍結療法、炭酸ガスレーザーによる治療が行われますが、多くの場合は、診察にて行われる凍結療法で完治します。

 

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2019.5撮影

 

クライストチャーチ「紙の教会」

https://tabicoffret.com/article/73486/index.html