尿路結石

   女性も用心、尿路結石 食生活見直し・運動の習慣を

脇腹周辺に激しい痛みなどが出る尿路結石は、暴飲暴食といった食生活の乱れなどが原因となって発症する。
中高年男性に多い病気だが、最近はサプリメントを多く摂取する若い女性などが受診する例も増えているという。
手術などで結石を取り除いても再発する例も多いので、生活習慣の見直しが重要だ。

 

関西地方に住む50代の男性Aさんは、朝目覚めると背中に軽い痛みを覚えた。
トイレに行くと血尿が出て、背中の痛みは徐々に悪化した。吐き気もしたので、たまらず近くの病院に駆け込んだ。
 
超音波装置でみると左の腎臓が腫れており、尿路結石が疑われた。
ある大学病院でコンピューター断層撮影装置(CT)などを使って改めて調べると、案の定、尿路結石だった。
Aさんはその後、尿道から内視鏡を入れて尿路に詰まった石を除去する手術を受け、症状は治まった。
 
尿路結石は、尿中のカルシウムやシュウ酸が結晶化してできる。
結石のある場所によって「腎臓結石」「尿管結石」「膀胱結石」などに分かれる。
例えば、石が尿路などに詰まると、尿が出にくくなって腎臓が腫れ、激痛などの症状が起きる。

 

小学生や20代にも
尿路結石の患者は増加傾向にあり、男性は7人に1人、女性は15人に1人が生涯で一度は発症するといわれる。
その背景にあるのが、食事の欧米化や運動不足といった生活習慣の問題だ。
これらは生活習慣病のリスクを高めるメタボリック(内臓脂肪)症候群の要因でもあるが、尿路結石の発症リスクも高める。
 
男女とも中高年の発症が多いが、なかには小学生や20代の女性の事例もある。
外で遊んだり運動したりする機会の減少とともにサプリメントなどの過剰摂取によって、体内で石ができやすくなっている。
また、人間ドックなどで結石に気付くケースもあるという。
 
尿路結石の治療法は結石の大きさにより異なってくる。
5ミリメートル未満の場合は自然に体外に排出される確率が高いため、水分を多めに取り、経過観察することが多い。
石を排出しやすくするため、尿路を広げる薬を使うこともある。
 
石がある場所にもよるが、大きさが5ミリ~1センチメートルになると、衝撃波を当てて石を砕いて小さくして体外に排出する「ESWL」と呼ぶ方法が選択肢になる。
尿道から内視鏡を入れてレーザーで石を砕く「TUL」という方法もある。

 

衝撃波を使う方法は治療後に日帰りも可能な利点がある半面、砕いた石を医師が取り出すことはできないので、体外に確実に排出されたかどうか追跡しにくい。
一方、内視鏡を使う場合は確実に取ったことが分かるものの、全身麻酔が必要で入院する必要がある。
1~2センチの結石の場合、内視鏡を適用するケースが増えてきている。

 

2センチメートル以上の大きさになるとこうした治療法では難しくなる。
ここまでになると腎臓の中にサンゴのように結石ができている人もいる。
患者の背中から針を腎臓に通して穴を広げ、石を取り出す手術などで対応する。
 
腎臓は細かな血管が張り巡らされている。
このため手術時の出血リスクが高く、難しい手術になる。
関西医大では超音波の画像を活用し、血管を避けるように針を通す手法を約2年前から手掛けている。
これまでに40例以上を実施し、出血量は従来の約10分の1に減ったという。
 
豊田厚生病院(愛知県豊田市)では、関西医大と同様の手法を用いて患者約100人を治療した。
手術時に輸血が必要になったのは2%弱と少なかった。
行徳総合病院(千葉県市川市)、八戸平和病院(青森県八戸市)など他の医療機関でもこの方法を実施している。
 
ただ、尿路結石は治療で取り除いても再発しやすい。
一般に3年後で約3割、5年後に約半数の患者で再び結石ができてしまうという。
これまでの生活習慣を変えるのはなかなか難しいことも一因だ。
「発症は生活習慣を改めるためのサイン」ととらえ、本腰を入れて食生活の見直しなどに取り組むきっかけにしたい。

 

脂身控え水分多く
例えば、脂身の多い肉などを控え、野菜を多めに食べる。
専門家は水分を1日2リットル以上とって尿の量を増やすよう推奨している。
ただし、ビールなどは飲み過ぎない。
運動も適度に実践しよう。
生活習慣病を防ぐ取り組みが尿路結石の予防にもつながる。
 
尿路結石は命に直結する病気ではなく、一時的な痛みを我慢してやり過ごしてしまうケースもある。
しかし腎臓などの炎症は、腎機能の低下につながる恐れがある。
異変を感じたら、早めに医療機関を訪れるようにしたい。

 

尿路結石にならないための取り組み例
・水分を1日2リットル以上とる (水が望ましい)
・野菜類をバランスよくとる。ホウレンソウは小魚などと一緒に食べる
・肉類など脂っこいものを食べすぎない
・甘いものを食べすぎない
・アルコールを飲み過ぎない
・適度な運動を心がける

 

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2014.12.12