認知症リスクとしての高齢者の難聴

耳チェックのすすめ シニアの難聴は認知症リスク

耳の聞こえが悪いことは、認知機能の低下に影響すると言われる。

加齢によって難聴が進むケースのほか、まれに耳あかが詰まって聞こえなくなるケースもある。 

2017年、英医学誌ランセット認知症とそのリスクについての論文が載った。

認知症にかかわる要因のうち、避けうる最大のものが「難聴」だったという。

耳の聞こえが悪くなることは認知能力の低下と関係が深いが、難聴の進行を食い止めることで、リスクを抑えることができるかもしれないことを示唆している。

 

耳の聞こえが悪いとなぜ、認知機能の低下を招くのか。

大きく二つの仮説がある。

 

「カスケード仮説」はこうだ。

耳から入ってきた音は鼓膜から聴覚の神経を通じて、脳で処理される。

耳から入る音の「入力」が減ると、聴覚の神経の活動が低下。それが脳の神経にも影響し、認知機能の低下につながるというもの。

 

もう一つは「認知負荷仮説」で、耳から入ってきた音の処理と、認知的な作業の負荷のバランスが変化するというもの。

聴覚の負荷が大きくなると、その処理が重視されるため、認知的な作業に割く「資源」が少なくなってしまうという考え方だ。

 

さらに、高齢者などでは耳あかのたまり過ぎによって、聞こえが悪くなっている人もいるという。

 

国立長寿医療研究センターによる老化に関する長期縦断疫学研究で、60代以上の地域住民792人の耳の内部をビデオ撮影で調べた。

80代では右耳で21%、左耳で13%の人が、鼓膜が見えなくなるほど耳あかがたまっていたという。

コメント;

自分で耳掃除をする際に、右利きの人は右耳の掃除のほうが得意なはずです。

しかし、この調査では右耳のほうが耳あかが溜まっていたという結果でした。

この左右差には何か意味があるのでしょうか。

 

通常、耳の入り口にあたる「外耳道」には、耳あかを外に出す「自浄作用」が働くため、普通の大人に耳掃除は必要ないという。

ただ、加齢とともに動きが悪くなり自浄作用が低下すると、耳あかがたまっていく。

日本人を含むアジア人には少ないが、湿った耳あかを持つ人は長時間放置すると詰まる危険性がある。

 

認知機能が下がっている人では、耳掃除をしなくなったり耳の不快感を訴えなくなったりして耳あかがたまる。

刺激が低下し、さらに認知機能の低下が進むといった悪循環が起きている可能性があるという。

 

また、補聴器を使えば聞こえがよくなるケースなのに、付けない人が多い。

手術が有効なケースがあるほか、適切な音を耳の中に届けることができる補聴器は重要なツールとなる。

視力が落ちればメガネをかける。

同じように補聴器を使ったほうがよい。

 

日本補聴器工業会(東京都)によると、過去にはハウリングによる騒音や、耳の穴に入れることによる圧迫感が気になって装着を避けるケースがあったという。

それでも、技術の進歩によって機器が小さくなり、ハウリング対策も進んだ。

カラフルな補聴器も登場している国内の補聴器の出荷台数は少しずつ増え、1998年の計40万3183台から、2018年には計58万5255台になったという。

 

ただ、補聴器を付けたり耳掃除をしたりするだけで、認知症が改善するわけではない。

耳の聞こえがよくなることで、家族や友人知人との会話を楽しむようになるといったことが重要なようだ。

 

米国では毎年、推定1200万人が耳あかの除去のために医療機関を訪れているという。

自分の耳はもちろん、ご家族の耳を近所の耳鼻科で調べてもらい、今の聴力を確認するところから始めてはいかがだろうか。

コメント;

こんな簡単な統計は、米国のデータを持ち出すまでもなく国内で数字が出せそうです。

医療事情も違うので国外のデータはあまり意味をなしません。