冬の唇荒れ

侮れない 冬の唇荒れ 放置せず 病潜む恐れ

空気が乾燥する冬は唇が荒れがちだ。

放置していると重症化しかねない。

また、胃腸障害など他の疾病が潜んでいることもある。

決して侮らずに、唇荒れにつながる習慣を見直し、予防、改善に努めよう。

 

なめるのは逆効果 / 歯磨き剤が刺激も

冬は唇の荒れが気になる季節だ。

ユースキン製薬(川崎市)が10~40代の女性1000人を対象に行った調査で

は、85%の人が唇の荒れを自覚。

そのうちの半数以上が軽度のかさつき、約20%が皮むけや軽度のひび割れ、約10%がひび割れて出血や痛みがあると答えている。

 

唇は粘膜と皮膚の境目にあり、他の部位の皮膚とは構造が異なる。

油分を保つ皮脂膜がほとんどなく、皮膚の外側の角層が非常に薄い。

そのため、水分が蒸発しやすく、バリア機能を保ちにくい。

外的刺激の影響も受けやすい。

 

唇荒れに最も影響するのは、気温や湿度の低下による乾燥だ。

乾燥により唇が乾くと、なめてうるおそうとしがちだ。

だが、唾液とともに唇に残る水分まで蒸発するので、かえって乾燥が進む。

 

唇が荒れると気になって、なめるほか、かむ、唇を巻き込んでぎゅっと閉じる、皮をむくといった癖が生じやすい。

そうした癖が、唇荒れを助長する悪循環につながってしまう。

 

また、冬には見落とされがちだが、唇は紫外線の影響も受けやすい。

乾燥が進みバリア機能が低下した状態で無防備に紫外線を浴びると、唇

が荒れるだけでなく、外縁に点々とシミができることもある。

 

歯磨き剤に含まれる洗浄成分が刺激となって、唇荒れを起こしているケースもある。

唇荒れが気になるときは、歯磨き剤の使用を中止し、歯ブラシでのブラッシングやフロスのみで様子を見ると、改善することもある。

 

唇の荒れを防ぐには、保温と紫外線対策をすることが大切だ。

保温にはワセリンなどをこまめに塗る。

特に就寝前にしっかり塗ると効果的だ。

冷たい外気に触れる外出時にはマスクを着用をしよう。

スキーやゴルフなど野外で長時間過ごすときは、保温だけでなく、紫外線防止効果のあるリップクリームなどでのケアも忘れないようにしたい。

 

唇の皮むけやひび割れが悪化すると、唇や口角に亀裂や出血、ただれなど生じる口唇炎や口角炎になることもある。

その場合は治療効果のある医薬品のリップクリームを使うといい。

 

顔の皮膚が新しく生まれ変わるまでの日数は約1ヵ月間。

一方、唇は3.5~10日間と短い。

しっかりケアをしていれば、唇の荒れは肌荒れよりも改善しやすい。

それにもかかわらず、症状が長引く場合は、乾燥以外の原因も考えられるため皮膚科を受診したい。

 

例えば、口角炎がなかなか治らなかったり、繰り返したりする場合は、胃腸障害や自己免疫性疾患の可能性がある。

口腔内に違和感を伴う場合は、食物や金属などのアレルギーとの関連が疑われる。

 

また、風邪や疲労などから免疫力が低下すると、唇に水疱ができる口唇ヘルペスを発症することがある。

口唇炎と症状が似ているが、それぞれ治療薬は異なる。

市販薬を誤って使用すると症状が悪化することがあるので、安易な自己判断は禁物だ。

 

唇は会話中などに意外と目につきやすく、荒れていると不健康、不衛生といった印象を与えることもある。

保湿や紫外線対策で、うるおいのある健やかな唇を維持しよう。  

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2019.12.14