子どもの近視 進行防げ 就寝中レンズ装着/早期発見を
子どもの近視の進行を抑えようとする取り組みが本格化してきた。
特定の目薬やコンタクトレンズを使った治療法などが海外で報告され、国内でも自由診療で受けられたり、臨床試験などが進む。
遺伝だから仕方がない、などとあきらめることも多い子どもの近視だが、専門医は「早期発見や新技術により、対処できる可能性が広がっている」と指摘する。
治療すぐに決断
遠くのモノが見えにくくなる近視の多くは、遺伝や環境の影響で起こる。
目のレンズと網膜の間の距離(眼軸)が伸びてピントが合わなくなるのが主な原因だ。
目が発達する10代前半くらいまでは眼軸が伸びて近視が進みやすい。
オルソケラトロジーは、就寝中に専用コンタクトレンズを装着し、角膜の形を一時的に変えることで視力を回復させる。
国内でも承認済みの近視の治療法だ。
国内外の研究で、8歳ぐらいから10代前半までの目の発達期に使用することで眼軸が伸びるのを抑え、近視の進行を抑える効果があることがわかっている。
原則は大人向けだが、未成年にも条件付きで処方が認められている。
同センターでは、希望する親子には十分に説明し、自由診療で実施している。
同センターは最先端の近視の治療を手がけるために2019年に設置された。
近視は若いうちは進行することが多いため、視力が低下し、負担や不便を感じる。
中高年以降になると緑内障や網膜剥離などの合併症を起こすリスクも上がる。
一度低下した視力を戻すのは難しいため、進行はできるだけ抑える方がいいが、特別な病気を持つ人を除くと、軽く考えてしまう人が多いという。
近視の治療技術は進化している。
早期発見などと合わせて進行を遅らせる手法の確立と、その普及が望まれる。
国内では、治療用目薬の臨床試験(治験)も進む。
シンガポールや香港では子どもの近視の進行を抑制する効果が認められている目薬だが、進行抑制のメカニズムはまだ分かっておらず、人によって効果にばらつきがあるという。
このため、安全性や効果を日本でも確かめていく。
いろいろな治療手段を使えるようにすることで、国内で多くの子どもに対応できるようになることが期待される。
年3回は検査を
最新手法とならんで重要なのは、基本的な取り組みの徹底だ。
子どもでは早期発見が大切という認識を持つとよい。
遠くが見えにくいことで、生活習慣や発達に影響が出ることもあるため、適切な時期に矯正などのケアを始めることが大切だ。
幼児の視力の異変には気づきにくい場合もあるが、最近では近視や遠視、乱視、斜視を判定できるスクリーニング機器も出てきていて、小児科や眼科が取り入れ始めているという。
3歳児健診や小児科の受診から発見につながることがある。
異常を指摘されたら眼科を受診したい。
さらに、正しく矯正することも大事だ。
度が弱めのメガネをつけても、近視の進行が遅くなるわけではない。
目の発達にあわせて矯正した方が良いため、定期的に通える近くの眼科で年に3回は診察を受けたい。
視力0.3未満、40年で3.5倍に
2019年度の文部科学省学校保健統計調査によると、裸眼視力が0.3未満の小学生の割合は約9.4%で、高校生は約39%に達する。
1979年から約40年間で小学生は約3.5倍に増えた。
50年には全世界の人口の半数が近視になるとの推計もあり、国際的な課題だ。
積極的に手を打ち始めた台湾では、小学生に1日に2時間、外で活動させたところ、視力の低い小学生の割合が減った。
日本でも対応が必要だとされるが、前提となる子どもの近視の実態が把握できていない。
小中学校は、健康診断で簡易的な視力検査をするのにとどまる。
そのためには、「地域の病院などと連携して、全国の学校で専門スタッフを配置した調査をする必要がある」と専門家は指摘する。
子どもの近視予防や進行抑制のポイント
・学会ホームページで正しい情報を得る
・数カ月に1度、眼科を受診する
・眼鏡などを定期的に作り替えてきちんと矯正する
・本や画面から30分に1度、約5分間は目を離す
・なるべく外での活動時間を増やす
(目標は1日2時間)
・治験への参加や自費で受けられる治療法も
参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2020.2.3