薬とのつきあい方⑤ 広告のウソや誇張

薬とのつきあい方⑤ 広告のウソや誇張、なくならないの?

「免疫機能を高めて細胞を活性化。傷が治る」。

ドラッグストアの店頭に置かれた、化膿を止める塗り薬を紹介するチラシには、そう書かれていた。

実際にはそのような効能はなく、菌を殺すのが本来の効能だ。

 

ある市販のかぜ薬は「効き目新しい」とテレビCMで宣伝された。

だが、商品名を変えて発売しただけで、薬の成分などは前の商品と変わっていなかった。

 

いずれも、都道府県が広告をやめるよう指導した例だ。

虚偽・誇大広告の違反は後を絶たない。

厚労省によると、2017年度の虚偽・誇大広告の違反は102件に上った。

13~16年度をみても年間57~84件で推移している。

 

薬や医療機器の広告は、チラシやテレビCMのほかにも、雑誌や新聞、ウェブサイト、SNSなどいたるところにある。

本来ない効能、効果をうたったり、誇大に表現したりした広告は、医薬品医療機器法(薬機法)で禁じられている。

ビタミン剤などの医薬部外品、化粧品も対象だ。

 

都道府県は、違反が見つかった場合、軽微なものならやめるよう伝え、悪質な場合は改善命令や刑事告発する。

罰金は最高で200万円。

罰金を大幅に上回る利益が出れば、製薬企業は違反してでもあえて広告を出す可能性があり、抑止効果に疑問があった。

 

医師が処方する薬は一般の人に広告すること自体、禁止されている。

製薬企業の営業担当者らが医師に効き目などを資料をもとに説明する。

ただ、安心はできない。製薬企業が提供する製品のデータに偽りがあれば、医師は患者に適切な治療ができなくなる。

 

13年に製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬「ディオバン」の論文に用いられたデータの改ざんが発覚した。

虚偽データで薬の有用性が水増しされていた。

論文で不正なデータを用いることが虚偽広告にあたるかどうかが争点となり、現在最高裁で係争中だ。

14年には武田薬品工業の高血圧治療薬「ブロプレス」の効果を示すグラフが、広告と基になった論文とで食い違っていることが判明。

国会で不正が問題視され、規制強化の機運が高まっていた。

 

昨年11月、薬機法が改正され、課徴金制度が盛り込まれた。

企業は罰金に加え、虚偽・誇大広告をしていた期間の対象商品の売り上げの4.5%を課徴金として納付する。

医薬品には年間の売り上げが1兆円を超えるものもあり、制度が適用されれば課徴金が数百億円に上る可能性もある。

厚労省は、医師が処方する薬の販売指針を設け、昨年4月から運用を始めた。

 

指針を守らなかった先には課徴金があり、企業は評判を落とす。

課徴金が違反の抑止力になることが期待される。

市販の医薬品については、医療用の医薬品と比べると効能や効果に大きな差があるわけではない。

大げさな表現の広告には注意し、薬剤師などに相談したい。

 

参考引用・一部改変

朝日新聞・朝刊 2020.1.31