薬とのつきあい方④ 年をとったら薬は増えるしかないの?
糖尿病や高血圧などの病気を抱える、関西地方在住の60代後半の男性は、三つの医療機関にかかり24種類の薬を処方されていた。
毎日4回薬をのむ。
朝は最も多く、粉薬1包、錠剤19錠をのんだ。
以前通っていた病院で処方された薬はそのまま処方され続け、別の病気にかかって新しい薬ものむことになって増えた。
のみ忘れで多くの薬が余っていた。
「本当に必要な薬をのんでもらおう」と、薬剤師と担当医が相談した。
まず、処方された経緯がわからないビタミン剤、整腸薬など5種類をやめた。
さらに、自分の糖尿病の状態や自己管理を学ぶために入院し、検査で数値を確認してさらに2種類やめた。
7カ月間かけて薬を減らし、男性は薬をのめるようになった。
多くの薬をのみ健康に害を及ぼすなど、必要以上の薬を服用する状態を「ポリファーマシー」という。
新たな病気になる度に別の医療機関で処方を受け、別の薬局で薬をもらうことで、担当医や薬剤師に情報が共有されずに起こる。
処方した意図がわからなくなった薬がそのまま処方され続けたり、効能が同じ薬を重複して処方されたりしていることも少なくない。
多くの薬を併用すると、相互作用で薬の効果が強くなったり弱くなったりすることもある。
のむ時間を間違えたり、のみ忘れたりすることにもつながる。
場合によっては、ふらつきや食欲低下、便秘などが起きる。
薬の副作用で出た症状を別の薬で対処することで薬が増え悪循環に陥る。
年をとると持病が増えて薬は増える。
厚労省の統計(2017年)によると、全国の保険薬局で処方された薬の種類を年齢別で見ると、65~74歳の14.4%が5~6種類、13.5%が7種類以上の薬を処方されていた。
75歳以上の患者だと16.3%が5~6種類。
7種類以上が24.5%を占めた。
昨年11月に医薬品医療機器法が改正され、都道府県が認定すれば、薬局は「地域連携薬局」を名乗れるようになる。
患者がのむ薬の情報をすべて把握し、副作用の有無やきちんと薬をのめているかなどを継続して確認する、かかりつけ薬局の役割をめざす。
医療機関と連携して処方の提案などをすることで、減薬につなげていく。
日本薬剤師会のW常務理事は「まずは、地域の医師とすでに関係が築けている薬剤師には認定を受けてもらいたい」と話す。
ただ、課題もある。
厚労省は地域連携薬局をそれぞれの中学校区に1カ所以上、約2万件の設置を目指す。
だが、薬局にメリットが少ないとの声があがっており、手をあげる薬局がどれだけあるかは不明だ。
地域連携薬局は夜間や休日も対応するのが認定の要件で、患者の退院時には関係する医療機関などと話し合って患者の対応を決めることも求められる。厚労省の担当者は「夜間や休日は近隣の薬局が輪番で対応するなど認定の要件を関係者と相談して決めていきたい」と話す。
参考引用・一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.1.30
<関連サイト>
服用する薬が増える例
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/839