薬とのつきあい方:3 処方薬もスマホで入手可能になるの?
これまで薬局に行かないと手に入れられなかった医師による処方薬が今秋までに、スマートフォンやパソコンで薬剤師の服薬指導を受けることで入手できるようになる。
自宅にいながら、医師の診察が受けられ、薬も入手できるようになる。
オンラインによる診療はすでに導入されているが、医師に処方された薬は患者が薬局に赴き、薬剤師から対面で服薬指導を受けなければならなかった。昨年11月の医薬品医療機器法(薬機法)の改正で服薬指導もオンラインでできるようになった。
オンライン服薬指導は国家戦略特区ですでに一部始まっている。
昨年12月、その一つの千葉市にある日本調剤椿森薬局でオンライン服薬指導が行われた。
薬局はテレビ会議システムを導入し、薬剤師がカメラに薬を映しながら、パソコン画面に映る患者に15分ほどかけて薬の説明をした。
薬剤師はこの患者に対面で服薬指導しており、面識があった。
少し音声が途切れることなどもあったが、信頼関係ができており、安心して服薬指導できたという。
日本調剤事業開発部では「システムの導入費用を含めてもオンライン服薬指導の導入は、思っていた以上にハードルが低かった」と言う。
ただ、オンライン服薬指導を受けるには、薬局が処方箋の原本を受け取らなければならない。
だが、郵送では時間がかかる。
また、すべての患者が受けられるわけではない。
厚生労働省は改正法の省令で対象をオンライン診療か、在宅で訪問診療を受けている患者に限る見込み。
複数の高齢者が生活する介護施設は、薬剤師が訪問して服薬指導することが望ましいとして対象外とする方針だ。
さらに、初診や新しい薬が追加されるなど薬の処方内容が変わった時は、薬剤師と直接会って服薬指導を受けなければならない。
2018年6月に離島や山間部などへき地の3地区で試験的に始まったオンライン服薬指導を利用した患者は、昨年8月時点で16人にとどまる。
全国に広がるには、処方箋の電子化や薬の配送体制などの課題が残されている。
日本オンライン診療研究会長で、千葉県いすみ市の診療所でオンライン診療に取り組む医師は「通院や薬局に行くことが難しい患者が自宅ですべて完結しようと思っても、これまでは服薬指導だけがアナログでネックになっていた。オンライン服薬指導は、オンライン診療を受けている患者にとっては朗報だ」と話す。
多くの専門家が今後、オンラインによる医療は増えていくとみているが、急速に広がるかどうかについては懐疑的な見方も多い。
どこまで公的医療保険の対象にするかなど、政策的な判断によるところが大きい。
同医師は「利便性だけにとらわれず、オンラインでの診療と服薬指導をうまく組み合わせることで医療の質の向上を目指すことが大切だ」と話す。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.1.29
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