ウイルス感染の有無、検査の現場は 兵庫の研究所
国内でも感染の確認が相次ぐ新型コロナウイルス。
どんな検査で感染の有無がわかるのか。
新型コロナウイルスの検査は、全国83の地方衛生研究所などが担うことになっている。
ここでは兵庫県(神戸市などを除く)で疑い患者が出た場合、陽性・陰性の「判定」をする。
「新型肺炎」の検査を受ける人は、医療機関でたんを取られたり、綿棒で鼻の奥をぬぐわれたりする。
たんや綿棒は、密封容器に入れた上、保冷剤入りの箱に入れるなど低温で保管。
保健所職員がこの窓口に箱を運んでくる。
研究所職員は受付で「箱」を受け取った後、検査エリアの中で、特に感染予防が厳重な「BSL 3実験室」直行する。
前室で使い捨ての防護服に着替えるが、実験室の室内は空気が外に漏れないようになっている。
検査中の感染を防ぐために、ここでたんなどの中のウイルスを試薬に漬け、感染力をなくす。
通常の実験室に移り、感染力を失ったウイルスから遺伝子を取り出す。
取り出した遺伝子が、新型コロナウイルスの遺伝子と同じかどうかで、「陽性」か「陰性」を判定する。
ただ、たんなどに含まれるウイルスの量は判定には少なすぎる。
このため、取り出した遺伝子を増やしながら判定する。
国立感染症研究所は流行を受け、新型コロナウイルスの遺伝子 にくっついて光る蛍光色素が混じった試薬(プローブ)などを検査機関に配った。
たんなどから取り出したウイルスの遺伝子と、プローブなどを混ぜた液をつくる。
その液を「リアルタイムPCR」の検査装置にいれる。
新型コロナウイルスであれば、遺伝子が増え、放たれる光の量も増加。
装置に内蔵されたカメラが測定し、横に置かれたパソコンのモニターに光の量が出る。
増えれば陽性、増えなければ陰性だ。
この検査だと、研究所にたんなどが届いて4~6時間で結果が出て、1日最大90検体を判定できる。
大阪府(独自検査の堺市を除く)で疑い例が出た場合は、大阪健康安全基盤研究所(大阪市)が検査する。
検査方法は原則、兵庫県と同じで、1日に約80検体を判定できる。
現状では、兵庫・大阪の両研究所ともに持ち込まれる疑い例に対応できているというが、感染がさらに広がった場合、人員の増強などを検討するという。
■初期なら陰性判定も・量に限界 唯一の手法「PCR」
PCRは今のところ、新型コロナウイルスへの感染を判断する唯一の検査方法だ。
ただ、能力は「万能」ではなく、誰でも受けられるわけでもない。
例えば、感染直後に検体を採った場合、体内のウイルス量が少なく、検出できずに陰性とされる場合がある。
理由は確定できていないが、大型クルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号から下船した人の中に、当初は陰性だったものの、その後、改めての検査で陽性となった人が複数いた。
検査できる量にも限りがある。公的機関だけでなく大学や民間企業への委託も始めたが、実際には地域差などがあり、十分に整っているとは言えない。
政府の専門家会議も「すべての人に検査をすることは対策として有効ではない」との見解を24日に公表し、重症化のおそれがある人の検査に集中させる必要性を述べている。
厚労省によると、産業技術総合研究所などが開発した、検査結果が15分程度でわかるPCRの迅速検査機器を3月中にも導入するという。
持ち運び可能で、保健所などで使うことを想定している。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.2.26
<関連サイト>
新型コロナウイルスの検査の流れ
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/909
【新型コロナウイルス感染症】 新たな検査法の開発が急ピッチで進む 検出時間を大幅短縮 今月中にも実用化か
http://dm-rg.net/news/2020/03/020293.html?pr=dmrg001
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の 患者血清中に含まれる抗ウイルス抗体の検出に成功
https://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/202003ryo_covid19.html