いつもスマホが招く脳過労 物忘れが増えたら要注意
パソコンやスマートフォンの使い過ぎで、脳が過度に疲弊している人が増えている。
「脳過労」になると、認知症やうつに近い症状がでることもある。
リスクを知り、デジタル機器の使い方を見直したい。
ここ10年ほどで働き盛りの30~50代が「もの忘れ外来」を受診するケースが増えている。
パソコンやスマホの使用頻度が高まり、文字や写真、動画などの情報過多によって脳が疲弊し、「脳過労」の状態になっていることが大きな要因と考えられる。
私たちの脳は視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を通じて情報を「入力」し、前頭葉と呼ばれる場所で情報を取捨選択して「整理」を行い、言葉や行動として「出力」している。
入力される情報量が多くなると、処理しきれずに氾濫し、脳がゴミ屋敷のような状態になる。
そのまま情報を入力し続けると脳過労を引き起こす。
情報の整理を行う前頭葉のなかにある前頭前野という場所が、思考や意思決定、記憶や感情のコントロールなどをつかさどっている。
脳過労になると前頭前野の機能が低下し、「単純なミスが増える、物覚えが悪くなる、イライラして怒りっぽくなる、意欲や興味がわかない」などの問題が生じてくる。
仕事でパソコンを使って複数の作業をこなしたり、家事を同時並行で行ったりしている上に、息抜きにスマホでSNS(交流サイト)を見たり、ゲームをしたりしているという人は要注意だ。
スマホは文字に加え写真や動画を通じて色、光など情報量が多く、ただでさえ疲れた脳にさらに負荷をかける。
特に、テレビを見ながらスマホを使うといった「ながらスマホ」は、脳に過度のストレスを与える。
わずかな空き時間でもスマホをいつも操作している、仕事や家事の段取りが悪くなった、物忘れが増えたといった兆候が複数見られる場合は、脳過労になっている可能性がある。
脳過労を改善・予防するためには、前頭葉での情報処理がスムーズに行われる状態をつくることが大切になる。
カギとなるのが「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という脳の回路だ。
DMNは思考など意識的な活動をしていないときに活発に働く。
ぼんやりしているときや眠っているときに顕在化し、情報や記憶を整理する役割を果たしている。
DMNの働きで脳がメンテナンスされる。
仕事でパソコンに向かい、プライベートでも四六時中、スマホを手にするような生活では、DMNが機能する機会が奪われる。
スマホは便利だが、使用目的や時間を限って活用するのが賢明だ。
トイレや浴室、寝室にはスマホを持ち込まない、食事中や会話中にはスマホを出さないといった工夫で、手放す時間を増やすといい。
皿洗いや拭き掃除などの単純作業や、ゴルフの素振り、散歩など単調なリズム運動を行うと、自然とぼんやりした状態になれる。
夜の睡眠を十分にとるほか、昼休みなどに15分程度の昼寝をするのも有効だ。昼寝が難しい場合は、イスに腰掛けたまま、目を閉じて姿勢を正し、5分ほど呼吸に意識を向けるだけでもDMNの効果がある。
スマホをいつ、何に、どれくらい使っているかを記録してみて、本当に必要な場面を見直すことから始めてみよう。
参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2020.2.22
<関連サイト>
スマホによる脳過労
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/904
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4249/
情報過多でストレスフルな毎日から抜け出す方法。
https://www.workport.co.jp/plus/articles/4075
情報過多のストレスから“脱出”する、たったひとつの方法
https://wired.jp/2017/06/01/garbage-fire-news-cycle/
情報過多の時代!何をするのも疲れたときに実践したいこと