イオン飲料、子どもには注意 ビタミンB1の不足誘発
気温が高い季節は、熱中症や脱水を防ごうとスポーツドリンクなどのイオン飲料を選ぶ人が多い。
飲み過ぎるとビタミンB1が不足し、特に子どもは身体の不調や深刻な症状に陥りやすい。
運動後や汗をかいたときの水分補給に、イオン飲料をとる人は多い。
糖分と塩分を含む飲み物を指し、身近なのはスポーツドリンクだ。
体に良い飲み物という印象から、子どもに日常的に与える親もいる。
近年は飲み過ぎで「かっけ」になる子どもが、離乳期を中心に増えている。
かっけは戦前に多かった病気だ。
ビタミンB1欠乏症の一つで、手足のしびれやむくみが起き、歩きにくい、一人で座りづらいといった神経症状が出る。
重症化すれば心不全を引き起こす。
ビタミンB1が欠乏する原因は、スポーツドリンクの糖分だ。
100ミリリットル当たり約5グラムの糖分を含む。
ビタミンB1は体内で糖を分解してエネルギーを作るために必要。
豚肉やウナギなどに多く含まれ、現代の食生活では不足しづらい栄養素ではあるが、スポーツドリンクを1リットル飲むごとに体内のビタミンB1を約0.1ミリグラム消費する計算になる。
イオン飲料と同様に糖質の多い即席麺類の場合、日本即席食品工業協会(東京・台東)は1993年、指針の下でビタミンB1の添加を始めた。
一方で大半のイオン飲料はビタミンB1を含まないため、不足を防ぐには食事からの補給が必要になる。
ある小児科医は、全国5千件以上の子どもの尿検体の調査で、10人を「かっけによる心不全」と診断した。
主治医への聞き取りで、離乳期の9人が十分な食事を取らず、代わりに1日1リットル以上のスポーツドリンクを飲んでいたと判明した。
一般的なスポーツドリンクは本来、大人が運動時にエネルギーを補給するための飲み物だ。
汗をかいて失った塩分と糖分を一緒に取ると、体への水分の吸収を促すため、下痢や発熱で脱水症状になったときに医師がスポーツドリンクを勧めることもある。
ところが脱水状態でない子どもがイオン飲料を飲むと、塩分で喉が渇き、飲み続けてしまう。
さらに、子どもは甘い味に慣れると、薄味の離乳食を欲しがらなくなる。
小食を心配する親が、食事代わりにスポーツドリンクを与えてしまう例もあり「食事からビタミンB1を取らないことになり、ますます不足する」という。
同様の理由で心不全を起こした子が、全国の救急現場に運び込まれている。安易にスポーツドリンクを与えるのは危険。
脱水状態の子どもの水分補給には、糖分の少ない経口補水液が望ましい。
経口補水液は脱水時の水分補給を目的に、塩分と糖分の濃度を調整したイオン飲料だ。
薬局やドラッグストアで手に入る。
糖分が2%前後と、スポーツドリンク(約5%)より低いのが特徴で、脱水状態ではない人が飲むと、塩っぽく感じることがある。
発熱や下痢、嘔吐などで脱水になったときの一時的な飲み物として活用したい。
脱水症状が改善したら飲むのはやめよう。
ビタミン不足は様々な体の不調を引き起こし、疾患リスクを増やすことがある。
熱中症対策や体調不良時など、状況によってイオン飲料は効果的な水分補給の助けになる。
大切なビタミンを大きく減らす飲み方は本末転倒だ。
子どもに限らず、大人も水代わりに飲まないように気を付けたい。
参考・引用一部改変
NIKKEIプラス 2017.6.24
<関連サイト>
イオン飲料、子どもには注意