経口補水液

熱中症対策で注目される経口補水液の中身は?

経口補水液といえば熱中症対策のイメージが強い。
もともとは発展途上国の子どもたちをコレラの被害から救うために考え出されたものだ。

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一般の人にとったアンケートによると、経口補水液という名前を知っている人は70%を超えるのに、中身を知っている人は20%ぐらいに過ぎない。

大塚製薬経口補水液 OS―1は、ノロウイルスなどが流行する冬の商品でしたが、熱中症が大きな問題になった2010年ごろから逆に夏の方が売れるようになったという。
 
OS―1は、軽度・中等度の脱水状態の人の水分などの補給に適していると消費者庁から「病者用食品」という表示が認められている。
脱水による体重減少が9%ぐらいまでの人が中等度です。
 
コレラノロウイルスなどによる感染性の腸炎では、下痢やおうとで体の水分が失われ、脱水状態になります。
熱中症でも汗が出て脱水状態になります。
 
これらの脱水状態では、水だけでなく、食塩(塩化ナトリウム)などの塩分も出て足りなくなります。
水とともにナトリウムやカリウムなどの塩分も補えるよう工夫されたのが経口補水液です。
 
コレラで命を落とすのは細菌そのものの毒などによるのではなく、脱水症状が主な原因です。
食塩の濃さを血液と同じぐらいにした「生理食塩水」の輸液を重体の患者に点滴すると助かることが19世紀ごろからわかっていました。
 
しかし、途上国では、大量の患者に点滴をするには資源も設備も人も足りない。
そこで経口補水液が考えられました。
1971年にインドの難民キャンプでコレラがはやり、患者の3分の1が亡くなりました。
3700人の患者に経口補水液が使われると、死亡率が30%から3・6%へと劇的に減りました。

80年代から普及が盛んになり、WHOの集計では、年間100万人の子どもが経口補水液の治療で救われているそうです。
 
体内への水の吸収は95%が小腸で起きます。
この際、ナトリウムとブドウ糖と水がいっしょに取り込まれます。
食塩水とブドウ糖液を様々な比率で混ぜ、健康な人で水の吸収具合が試されました。
結果はナトリウムとブドウ糖の濃さが同じぐらいだと水の吸収が速かったのです。
血液より少し薄い方が水やナトリウムの吸収にいいこともわかりました。
 
こういった研究をもとに、WHOが経口補水液の塩分や炭水化物の推奨濃度を決めています。
 
先進国は輸液の点滴が治療の中心でしたが、近年、子どもの中等度までの脱水症にはまず経口補水液を使うようになってきました。
 
WHOの推奨に比べ、先進国は塩分などが薄めになっています。
コレラの発生が少なく、ロタウイルスノロウイルスなどに的を絞っているためです。
コレラ患者の下痢では便のナトリウム濃度が高いので、推奨も濃いめにされました。
コレラ以外の患者の便はナトリウムの濃度が低いのです。
 
水やお茶などの水分だけを取ると、体液の塩分濃度が下がるので、脱水状態の改善にはよくありません。
また、スポーツドリンクは味をよくするため、塩分を抑え、糖分を多めにしているので、やはり塩分補給に不向きです。
 
経口補水液の代わりに、食塩と砂糖で代替品をつくれます。
ただし、手作りは衛生的な保存に十分な注意が必要です。
また、下痢やおうとで多く失われるカリウムの補給ができないので、腸炎による脱水状態には向きません。

 
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参考
朝日新聞・朝刊 2016.7.16


 
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   蓼科・彫刻公園  2016.7.17 撮影
      
    
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           冬はこんな感じになります。
           http://resort-hotel-tateshina.jp/institute/