スポーツの秋にも脱水症に注意

急な発汗 のど乾く前に補水

 
脱水症になると体温をうまく下げられず、熱中症になりやすい。
水分をどのタイミングで、何を飲めばいいのか。
水分量や体温を一定に保つための汗や尿の仕組みを知り、体調管理に役立てよう。
 
水は私たちの体を維持するのに欠かせない。
男性は体重の約60%、女性は約55%を占める。
体重kggの男性なら、36リットルの水を含んでいることになる。
 
体重の約2%の水が失われると脱水症になるともいわれている。
60kgの男性なら1.2リットルを失うと危険ラインということになる。
最初はのどの渇きを感じ、脱水が進むと、全身のだるさや頭痛、嘔吐、めまいが起きる。
 
2時間で脱水も
暑いところで体を動かしたときの汗の量は1時間に500~600ミリリットル。
2時間動けば脱水症になってもおかしくないほどの汗が出る。
脱水症になると汗が止まり、体の熱を逃せなくなって熱中症になりやすい。
 
では、どう水分をとればいいのか。
ポイントは、汗のかき方やかいた時間の長さで、適した飲み物が違うということだ。
汗は、皮膚の汗腺で血液からつくられる。
血液中の塩分をいったん汗腺へしみ出るが、汗をじわっとかきはじめた段階では大部分が回収されるため、失われるのは、ほぼ水のみ。
この時点なら、水や麦茶で水分だけを補給すればいい。
 
ところが、1時間以上にわたり汗をかき続けたとか、激しい運動で大量の汗をかいた場合は、塩分の回収機能が追いつかず、汗にもれ出てしまう。
体内では水分だけでなく、塩分も不足するので水を飲むだけでは不十分だ。
スポーツ飲料などで塩分も一緒にと補いたい。
塩分を含むアメもいい。
私的コメント';
この前、ある人からいただきましたが結構まずいです。

水分は、のどの渇きを感じる前から少しづつ摂ろう。
急激に汗をかくと、のどが渇いてから水分をとっても、必要量の3割程度しか補えない。
 
参考
発汗量が
◎少ないと、
 塩分はきちんと血中に再吸収される     塩分の少ない汗
 
◎多いと、
 血中への塩分の再吸収が間に合わない    塩分の多い汗

汗腺で塩分を再吸収するしくみ
①血液から汗をつくる
②作った汗から塩分を再吸収

汗の濃度は0.2 ~ 0.3%
血中の塩分濃度はいつも0.9%
 
 
ビール・緑茶・コーヒーは逆効果
汗をかいた後のビールは危険だ。
ビールは利尿作用が強く、1リットル飲むと1.5リットルの尿が出るといわれている。
水分補給どころか脱水が進む。
脱水状態での飲酒は、悪酔いや二日酔いしやすく、脳卒中などのリスクも高める。
ビールを楽しみたければ、飲む前の水分摂取を忘れてはいけない。
私的コメント';
これではビールがおいしくありません。

緑茶やコーヒーなど、カフェインを含む飲み物も利尿作用があるので、汗で失われた水分の補給には向いていない。
 
塩分濃度は一定
そもそも脱水症になると、どんな問題が起きるのか。
失われるのは水と塩分。
この2つは体内で精密に制御されている。
体を作る細胞が生きるためには、浸っている体液の塩分濃度が、正確に0.9%でなくてはいけない。
高くても低くていけない。
大量の汗で水と塩分が急速に失われると、制御できなくなってしまうことがあるが、これが脱水症の本体だ。
 
もちろん体には、0.9%を維持するための仕組みが備わっている。
最も関わっているのが腎臓だ。
周知の通り腎臓は尿を作る臓器。
汗をかけば尿量を減らし、大量の水分を取れば尿量を増やす。
尿量を変えて、体液の塩分濃度を一定に保つよう働いている。
汗をかくと、尿の色が、濃くなった経験はないだろうか?
これは、腎臓が尿量を絞ったことで、尿の黄色い色素であるウロビリンが濃縮されて起こる。
汗もかいておしっこの色が濃くなっていたら、脱水のサインといえる。
そんなときはできるだけ早く水分をとろう。
 
脱水症が怖いなら、空調完備の室内にこもる方が安心、という人がいるかもしれない。
しかし、本末転倒。
汗は蒸発しながら体の熱を逃がし、体温を上昇を抑える作用があるため、熱中症を防ぐには、汗をきちんとかくことも欠かせない。
ある研究によると、普段から運動をする人に比べて、しない人は、汗をかく力が3割ほど低い。
汗をかく力が弱いと、熱がこもり熱中症になりやすい。
意識して汗を出し、体温を一定にする力をつける必要がある。
 
運動のほか、入浴時は湯船に浸かり汗をかこう。
そしてしっかり水分補給。
「汗」と「水」を味方につけることが大切だ。


番外編① 汗で大事な脳を冷却?
体温調節のために汗を利用する動物は、人間と馬など、ごくわずかな種類しかいないという。
貴重な水を捨ててまで体温上昇を抑える仕組みを進化する中で備えたのは、そうまでして体を冷やすことが生存上有利だったから、と解釈できる。
 
人間は何を冷やす必要があったのか? 
一説に「脳の大型化に対応するため」といわれる。
数百万年前、私たちの祖先の脳が肥大化を始めた。
脳は活動するとかなりの熱を発する。
大きな脳には強力な冷却システムが不可欠だ。
この仕組みを身につけたものだけが、脳の巨大化に成功した。
汗は、人類の知能を支える重大なカギだったのかもしれない。


番外編②
体の中で水分のバランスは・・・
水の4つの出口
・汗は水分を排出し、気化するときに体温を下げる働きを持つ
1. 呼気
2. 汗
3. 尿
4. 便

・1日に出入りする水分は2.5リットル
摂取 飲み物      60%
食物       30%
代謝       10%

排出 尿         60%
   肺や皮膚の呼吸 28%
   発汗と便 12%


出典
日経新聞・朝刊 2015.8.29(一部改変)