コロナも強敵 がんも強敵

コロナも強敵 がんも強敵

緊急事態宣言が解除され、一時収まったかに見えたコロナ禍だが、社会活動の制限の緩和に伴って感染者の数が再び増えている。

しかし、無症状の陽性者が多いのもこの感染症の特徴だ。

 

PCR検査の件数が増えれば、陽性者数も増えるのは当然のこと。

感染した人の数に一喜一憂するのではなく、重症者、死亡者の数をより重視する必要がある。

死亡者は全国的にほとんど増えていない。

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あくまでも2020.7時点に書かれたものであり、現時点とは異なります。

 

感染者、死者とも全国の3分の1を占める東京都でも、7月に入って死者数はゼロが続いた。

重症者の数は全国的に見ても、東京都に限ってもおおむね減少傾向にある。

マスクの着用や手洗いをする人が増えたためと思われるが、インフルエンザの患者数は激減している。

厚生労働省の推計によると、3月1日時点の全国の累計患者数は約397万人で、前年同期の4割弱だ。

ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎もインフルエンザと同様に、例年よりずっと減っている。

皮肉なことに、今年は、ウイルス感染症による死亡が例年より少ない年になるかも知れない。

 

がんは流行性の感染症と違い、高齢化とともに、増え続けていく。

新型コロナウイルス感染症にばかり関心が集中すると、バランスを欠くことになる。

 

現在、1年間に日本人男性の57万人強、女性の44万5000人ほどががんと診断されている。

そして、国立がん研究センターの長期予測によると、2035~39年の平均では、男性は64万人、女性は53万人と推計されている。

男性で1割以上、女性では2割近く増加すると見込まれている。

過去5年以内にがんと診断されて生存している「有病者」については、現在、男性約173万人、女性約140万人、男女合わせて313万人とされている。

しかし、35~39年の平均では、男性は184万人、女性は167万人と推計され、有病数は男性で6%、女性では19%も増加する見込みだ。

新型コロナウイルスを甘く見てはならない。

しかし、がんという、まだまだ高くて厚い壁の存在を忘れてはならない。

執筆

東京大学病院・中川恵一 准教授)

 

参考・引用一部改変

日経新聞・夕刊 2020.7.22