早めの胃がん検診を

早めの胃がん検診を

胃がんは長い間、日本人のがんの代表だった。

胃がんの原因の98%とされるピロリ菌の感染率が高かったことが主な原因だ。

 

冷蔵庫の普及などで、ピロリ菌の感染率が低下し、胃がん罹患率、死亡率とも減少傾向にある。

それでも、罹患数では第2位、死亡数では第3位と、まだまだ、手ごわいがんの一つだ。

バリウムによる胃がんの集団検診は、1960年に開始された。

2014年には、バリウムに加えて、胃カメラ胃がんの住民検診に加わった。

しかし、コロナ禍によって、今年度は胃がん検診の受診者数が大きく減っている。

これによって、今、胃がんの治療が激減している。

がんは症状を出しにくい病気のため、検査が行われなければ、患者が減るのは当然だ。

 

前立腺がんや子宮頸がんをはじめ、多くのがんで、手術と放射線治療は同程度の治癒率をもたらしている。

しかし、胃がんの治療はなんといっても手術が中心となる。

東大病院の放射線治療部門でも、胃がんへの照射例はきわめて少ないのが実情だ。

その胃がんの手術が減っている。

国立がん研究センター中央病院のデータでは、今年の4月から10月に行われた外科手術の件数は90例だった。

昨年の同じ時期の件数は153件だったから、41%の減少となる。

東大病院でも43%の減少がみられている。

驚くほどの減少だが、もちろん、胃がんが減っているのではなく、検査が実施されておらず、発見されていないだけだ。

胃がんもそうだが、1センチ程度にならないとがんを診断することは困難だ。

そして、たった一つのがん細胞が分裂を繰り返してこの大きさになるまでに20年といった長い年月がかかる。

しかし、1センチのがんは1、2年で進行がんになると考えられます。

今年度、コロナ禍で検査数が減り、早期胃がんが見つからないために、手術件数も減っているわけだ。

来年度以降、進行胃がんが増えることになる。

特に、症状が出てから発見される人が多くなる可能性が危惧される。

執筆

東京大学病院・中川恵一 准教授

 

参考・引用一部改変

日経新聞・夕刊 2020.12.2

 

 

胃がん検診の受診推奨年齢は?受診頻度から費用までを解説

https://www.docknet.jp/media/cancer-21/

国立がん研究センターの統計によると胃がんは、がんの部位別死亡数で第3位、罹患数では第2位と上位に入るがん疾患です。男性では40歳以上になると、胃・大腸・肝臓など消化器系のがんによる死亡割合が高くなります。

 

胃がん検診」と「胃がん予防」

https://www.akiramenai-gan.com/prevention/medical/86736/

・がん予防には、がんにかからないように生活習慣などを改善する「一次予防」、がんを早期発見・早期治療し、がんで亡くなる人を減らすための「二次予防」、がんが進行した後に再発や重症化を防ぐ「三次予防」があります。がん検診は二次予防にあたります。

国立がん研究センターが公表している胃がんの5年生存率では、早期のステージⅠで「94.7%」と高率になっていますが、進行期のステージⅣでは「8.9%」と生存率が大きく低下しており、できる限り早期に発見し、早期に治療を行うことが大切といえます。