増えている大腸がん 早期発見で5年生存率は?
日本人の2人に1人は何らかのがんにかかると言われている。
がんの発症には食生活の欧米化や運動不足、飲酒や喫煙など、さまざまな生活習慣が影響する。
人口の高齢化に加え、検査技術が大きく進歩し、かつては見つからなかったがんを発見できるようになったことも、がん増加の背景にあると言われている。
そんながんの中で、このところ目立って増えてきたのが大腸がんだ。
最新の統計では、大腸がんの罹患率(人口10万人当たり:2017年)は、男女合わせて1位(男性3位、女性2位)。
死亡率(人口10万人当たり:2018年)も男女合わせて2位に上がってきた(男性3位、女性1位)。
大腸がんで亡くなる人は、年間5万人を超える。
大腸がんにかかる人も、亡くなる人も多いと聞くと、「大腸がんは、かかったら死を免れない怖いがんなのだ」と思う人もいるかもしれない。
ところが、実はそうとも言いがたい。
他のがんと比べると、大腸がんはおとなしいがんだといえるのだ。
罹患率も死亡率もかなり高いがんなのに、おとなしいとは一体どういうことなのだろうか。まず、がんと診断された人が5年後に生存している割合、「5年生存率」を見てみるとわかる。
全てのがんの5年生存率の平均は66.4%だが、大腸がんに限ると72.6%と、平均を上回っている。
5年生存率が10%を切るほど低い膵臓がんなどと比べれば、ただちに命を脅かすがんではないわけだ。
大腸がんにかかる人の数自体が増えているため、人口10万人当たりの死亡率もある程度は高くならざるを得ない。
それでも、罹患率3位の肺がんと比べて死亡率が低く抑えられているのは、治療効果が高いことが一因だと推察される(肺がんの死亡率は1位)。
他のがんに比べると、大腸がんは治療効果が非常に高いという特徴がある。
手術で治しきれる可能性が高く、万一進行しても、抗がん剤による化学療法が比較的よく効くがんなのだ。
他のがんでは、転移後の治療が難しいことが少なくない。
一方、大腸がんは転移しても、手術で切除すれば生存率を延長できる可能性が高いという。
例えば胃がんでは、「腹膜播種(はしゅ)」という転移がよく起こる。
腹膜播種とは、胃や肝臓などを覆う腹膜にがん細胞がばらまかれるように転移するもので、手術で取り除くのは困難だ。
しかし、大腸がんで腹膜播種を起こす頻度は高くない。
多いのは肝臓や肺などで、転移した部分を切除すれば生存率を高めやすいのだ。
しかし、いかに大腸がんの治療効果が高いといっても、それは早期に発見・治療してこその話となる。
大腸がんは早期に発見して治療すれば5年生存率が95%を超えるものの、進行すればガクンと急降下し、20%を切ってしまう。
「大腸がんは治療効果が高い」という恩恵にあずかるためには、いかに早く病気の存在に気づくかが大切になる。
便潜血検査を受け続ければ、大腸がん死亡が6割減るとの報告も
現在、最も一般的な大腸がんの検診は、職場の健康診断でもおなじみの、便を採取して提出する「便潜血検査」だ。
このほか、人間ドックであれば、大腸内視鏡検査やCTによる検査など、便潜血検査以外の方法を選択することも可能となる。
検診を受けていれば、症状がない早期のうちに大腸がんが見つかる可能性が高くなる。
便潜血検査を受け続ければ、大腸がんによる死亡が約6割も減るという報告もある。
こうした検診の機会を逃さずに利用することが、大腸がんで命を落とさないために非常に重要と言える。
参考・引用一部改変
日経Gooday 2020.12.28
<関連サイト>
大腸がんの予後