マスクと頭痛

マスク引き金、頭痛に注意 神経刺激、雨や深呼吸で予防

新型コロナウイルス感染症が流行する中、マスクをつけていることで頭痛が引き起こされる人がいる。

在宅ワークで同じ姿勢を続けることで起きる頭痛もある。

片頭痛を予防する新しい薬が登場し、注目される。

 

「マスクが気になって仕方がない」と訴える患者が増えている。

清知覚神経が過敏になっている予兆と考えられる。

放っておくと、強い片頭痛に襲われることが多く、注意が必要だ。

 

15歳以上の人のうち1割ほどにいるとされる片頭痛の患者はもともと、顔や頭に広がる三叉(さんさ)神経が過敏な傾向がある。

マスクによる皮膚への刺激が脳に興奮を引き起こし、片頭痛につながりやすいとされる。

 

帰宅してマスクを外したときも注意が必要だ。

リラックスした状態になると、脳の血管が拡張し、片頭痛が起きやすくなる。

 

普段は片頭痛がない人でも、特に緻密な不織布でできたサージカルマスクを長時間つけていると、片頭痛を起こすことがある。

呼吸が十分にできず、血中の二酸化炭素濃度が上がり、脳の血管が広がって頭痛が起きると考えられている。

 

こうした症状を防ぐために、マスクをつけているときに、ブドウ糖を含んだあめをなめるとよい。

ブドウ糖には、脳の血管を収縮させる効果が期待できる。

 

のどが乾燥すると口内の三叉神経が刺激されるため、マスクを湿らせておくことも予防につながる。

マスクを外せる場所では外し、深呼吸をすることも有効だ。

 

神経由来の頭痛だけではなく、在宅ワークで同じ姿勢をとり続けるなど、筋肉の緊張が原因の「緊張型頭痛」もある。

背中の筋肉を緩めることで和らぐ。

 

ただ、片頭痛では体を動かすと脳の血管が拡張し、痛みが増してしまう。

頭痛の原因別に対応することが必要だ。

 

頭痛予防の観点からは、脳の血管を収縮させるカフェインを含むコーヒーやお茶に少量のブドウ糖(砂糖)を入れて飲むのがよい。

 

片頭痛の新薬に期待

寝込んだり、仕事に集中できなかったりといった片頭痛が起きる場合は、日本頭痛学会が認定している専門医や脳神経内科医、脳神経外科を受診した方がよい。

痛み止めを多用していると頭痛を悪化させることがあり、注意が必要だ。

 

予防薬の開発も進む。

1月には「ガルカネズマブ(商品名エムガルティ)」の製造販売が承認され、注目されている。

 

これまで片頭痛の予防には、脳などの中枢神経の機能を調整するカルシウム拮抗薬、抗てんかん薬、β遮断薬などが使われてきた。

 

一方、ガルカネズマブは三叉神経から分泌され、片頭痛を誘発するとされるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRPC)の働きを阻害することで発症を予防する。

このように病気の原因となる物質に対する抗体を作り出して薬にしたものを抗体医薬といい、片頭痛では初めてだ。

既存の薬が効かなかった患者には、治療の選択肢が広がることになる。

 

ガルカネズマブは1カ月に1回、皮下注射で投与する。

中枢神経に作用する薬で生じやすい眠気やめまいといった副作用は、この薬ではないとされる。

 

ただ、米国では1本約570ドル(約6万円)と高価だ。

日本ではまだ薬価が決まっていないが、既存の薬で治療が難しい患者が試すことになりそうだ。

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2021.3.24