脂肪肝炎、運動・食事で治す

脂肪肝炎、運動・食事で治す

アルコールの飲み過ぎがなくても肝炎を起こす非アルコール性脂肪肝炎(NASH)。

患者数は200万人とされ、生活習慣が乱れている人は誰でもリスクがある。

放置すると肝臓がんや肝硬変につながるだけに早期の体質改善が必要だ。

 

朝食をしっかりとれば昼と夜の食欲が抑えられる。

昼や夜はコンビニエンスストアの食品を食べる機会も多い。

商品ラベルでカロリーや糖質などの数値を見て選ぶ習慣をつける。

続ける途中で尿酸値が異常値になった。

急に体重が落ちると尿酸値が急上昇することがある。

肥満時から体重を10%落とした状態を継続し、筋肉を強化する。

筋肉は糖分を代謝するため、肝機能の補助に良い影響がある。

 

糖質制限を通常に戻すのも課題。

糖質制限は2~3カ月で終えた方がいい。

糖質が少ない状態が長期間続くと筋肉が燃えやすく、体温調節の機能も弱くなる。

リバウンドせずに通常の食事に戻すには段階的な取り組みが求められる。

制限解除から最初の2週間はトレーニングした前後だけ、おにぎりなどを食べるようにする。

その後、1カ月は糖質類は1日1食のみにする。

その後は3食食べてもよいが、糖質をもとに戻す分、今度は脂質を大幅に下げ、全体のカロリー量は変わらないようにする。

こういった方法で男性の3割は完治する。

日常の食事管理とトレーニングを根気強く続けたい。

 

長丁場、仕事との両立がカギ

日本に脂肺肝の患者数は2000万人以上いる。

このうちNASHに進行する人は1~2割を占める。

脂肺肝はアルコールに由来するものと考えられがちだが、患者数は増えている。

NASHになると、10人に1人は肝硬変になる。

心筋梗塞脳梗塞などの心血管疾患にもなりやすい。

 

男性は30代後半から、女性は60代からなる人が多い。

薬物療法のみに頼ることはできず、食事管理と継続的な運動は必須になる。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・夕刊 2021.3.31

 

<関連サイト>

非アルコール性脂肪肝炎ってなに?

https://www.osakacity-hp.or.jp/juso/about/departments/gastroenterology/nash.html

・NASH (ナッシュ) とは?

脂肪肝とは、肝臓の中に中性脂肪が蓄積して肝障害をおこす疾患。

脂肪肝の原因はアルコール性脂肪肝と、ほとんどアルコールを飲まない人に起こる非アルコール性脂肪性肝疾患 (nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)に分かれる。

NAFLDは良性の経過をたどる単純性脂肪肝と、肝硬変や肝癌に進行する可能性がある非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分かれる。

わが国にはNAFLDが約1,000万人、NASHが約100~200万人いると推定される。

 

・NASH の診断はどうやってするのか?

肥満、糖尿病、 脂質代謝異常、 高血圧などを合併した患者さんは脂肪肝、 NASHの可能性が高いと考えられる。 

脂肪肝の診断は腹部超音波検査や腹部CT検査で可能。 

NASHの診断のポイントは以下の3点。

1 非飲酒者であること (アルコール摂取量1日20g*以下)

2 肝生検による組織像で脂肪性肝炎を認めること

3 他の原因による肝障害を認めないこと

現在、NASHの診断を確定する方法は肝生検のみ。

 

・どうしてNASH は問題なのか?

1 肥満は肝臓癌の危険因子
肥満の方はそうでない方と比較して癌になりやすい。

2 我が国の糖尿病患者の死因は肝疾患が多い
日本糖尿病学会による糖尿病患者の死因の調査の結果、肝疾患が13.3% (肝臓癌 (8.7%)、肝硬変 (4.7%))と全体の約8分の1。

3 肝炎ウイルス以外の肝臓癌患者が増加している
これまで、肝臓癌の多くはB型およびC型肝炎ウイルスに感染した患者さんから発生すると言われてきた。

しかし近年、肝炎ウイルスに感染していない肝臓癌患者数が増加傾向にある。この原因の一つとして、NASH由来の肝臓癌が疑われている。

 

・NAFLD/NASHとメタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に高血糖、 脂質代謝異常、高血圧のうち2つ以上を合併した状態。

メタボリックシンドロームの定義を満たす場合、心筋梗塞脳梗塞などの危険性が相乗的に高くなることから、予防・ 治療の対象とされている。NAFLD/NASHはメタボリック シンドロームの肝臓での表現型と考えられている。

実際、 メタボリックシンドロームの診断における各因子 (高血糖、 脂質代謝異常、高血圧)の保有

が多いほどNASHの可能性が高くなると言われている。

 

・NASH発症のメカニズムは?

NASH発症のメカニズムは現在も不明の点が多いが、現在最も広く受け入れられている仮説として「二つのヒット理論」というのがある。

第一のヒット

脂肪の過剰摂取などによって肝臓に脂肪が蓄積し, 脂肪肝になる。

第二のヒット

脂肪肝に脂質過酸化やサイトカイン、鉄などの酸化ストレスが加わりNASHに至ると考えられている。

 

・NAFLD/NASH の治療はどうするのか?

NASHの治療として現時点で確立されたものはない。

1 生活習慣の改善
NASHの治療の原則は食事療法、運動療法などの生活習慣の改善により、背景にある肥満、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧等を是正することだ。

2 薬物療法
生活習慣の改善のみでは効果が不十分の場合は、肝硬変への進展や肝発癌を予防するために積極的に薬物治療を行う。

抗酸化剤:ビタミンC、ビタミンE

糖尿病治療薬:チアゾリジン系薬剤、ビグアナイド系薬剤、シダグリプチン

   (コメント;最近ではSGLT2も期待出来る)

脂質代謝異常治療薬:フィブレート系薬剤、エゼチミブ、エパデール

肝庇護剤:ウルソ、グリチルリチン

3 除鉄療法
一部のNASHでは過剰な鉄が肝臓に負担をかけるため、体から鉄分を減らすことが重要。

瀉血療法(保険収載外)::1回300~400mlの血液を2週間毎に抜く。低鉄食:食事1日あたりの鉄分を6~7mg以下にする。