酒飲まなくても脂肪肝 肝硬変・肝臓がんに進行も

酒飲まなくても脂肪肝、注意 肝硬変・肝臓がんに進行も

健康診断で「脂肪肝」と指摘された場合、放置してもよいのだろうか。

お酒をあまり飲まない人でも、自覚症状がないまま、肝硬変や肝臓がんに進む場合もある。

どういう人が悪化しやすいのか、リスクを調べることはできるのか。

 

自覚症状、ないまま

市立吹田市民病院(大阪府)に入院していた70代の男性に、肝臓がんが見つかった。

自覚症状がなく、気づかないうちに、脂肪肝から肝臓がんに進行していた。

 

男性は糖尿病だった。

これをきっかけに、病院が糖尿病患者約500人を過去にさかのぼって調べたところ、同じように脂肪肝から進行したと推定される肝臓がんが5人に見つかった。

脂肪肝から肝臓がんなどになる人を減らそうと、病院は2017年に「脂肪肝専門外来」を開設した。

 

脂肪肝は、肝臓に「中性脂肪」がたまった状態だ。

 

なぜ、肝臓に脂肪がたまるのだろうか。

肝臓にはアルコールを分解する働きがあり、その際に肝臓で中性脂肪の合成が進む。

そのため、かつては脂肪肝の原因は酒の飲み過ぎだと考えられていた。

 

しかし、お酒をあまり飲まない人でも脂肪肝になることが1980年代に報告され注目されるようになった。

 

飲酒習慣がない脂肪肝患者といっても、ゼロの人ばかりではない。

日本消化器病学会と日本肝臓学会の診療指針によれば、1日あたりの飲酒が、純アルコール量で男性は30グラム未満、女性は20グラム未満の人も含まれる。

20グラムは、おおよそ日本酒1合にあたる。

 

また、肝臓には食事でとったエネルギーが余ると、中性脂肪に変える働きもある。

肥満や糖尿病の増加で、飲酒習慣がない脂肪肝患者は増え続けている。

横浜市立大の中島淳教授によれば、推定で約2千万人。

男性は30~60代で3~4割にのぼるとされる。

女性は50代以降の閉経後に増える。

 

脂肪肝はかつて「ほうっておけばいい」とされがちだった。

飲酒習慣がない脂肪肝の大部分は「非アルコール性脂肪肝(NAFL)」と呼ばれ、ほかの病気に進行しないと考えられていたからだ。

コメント;

通常、NAFLDと呼ばれることが普通です。

参考

NAFLD/NASHガイドQ&A

https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/nafld.html

 

しかし、一部は肝炎につながり、肝臓が硬くなる「線維化」が起きて「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」になる。

NASHが進行すると肝硬変や肝臓がんになる。

 

さらに、中島教授は「全身のいろいろな病気のリスクが高いことがわかってきた」と指摘する。

最近、大腸がんや乳がんなどのリスクも高くなるとの報告が海外から出てきた。

健康診断などで脂肪肝を指摘されたら放置せず、生活習慣を改善し、医療機関を受診することが大切だ。

 

■リスク、血液検査などで判断

飲酒習慣がない人の脂肪肝から、肝硬変や肝臓がんに進行するリスクはどう見分けるのか。

見分ける方法の一つが、血液検査などの結果から計算する「FIB―4インデックス」だ。

血液検査で肝臓の働きを調べるAST(GOT)とALT(GPT)、血小板、年齢から、専門医でなくても肝臓が硬くなる「線維化」のリスクがわかる。

 

進行するリスクがある人を早期に見分けて適切に対応することが重要だと考えられるようになった。

 

リスクがある場合、専門医を受診して詳しく調べることが勧められる。

針を肝臓に刺し、一部をとる「生検」で、炎症や線維化など肝臓の状態を調べる。

最近では痛みや出血がなく、入院が必要ない画像検査も登場。

超音波を使う方法と、MRIを使う「MRエラストグラフィ」がある。

 

健康診断で使われる通常の超音波検査では、脂肪の量が約20%以上にならないと判別できず、それ以下だと見逃される可能性がある。

脂肪の量が5%以上だと脂肪肝だ。

特殊なMRIや一部の超音波検査法では、精度が高い脂肪量の推定もできるという。

 

<まとめ>

正常な肝臓 → 非アルコール性脂肪肝(NAFL)→ 非アルコール性脂肪炎(NASH)→ 肝硬変 → 肝臓がん

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2021.1.13