肝機能障害

「沈黙の臓器」血液検査値に注意

会社の定期健康診断や住民健診で「肝臓の機能に異常がある可能性あり」としばしば判定される人がいる。
血液検査でAST(GOT)とALT(GPT)やγーGTPの値が高いためだ。
「自覚症状もないし、体重が増えて肝臓に脂肪がついただけだろう」。
そんな油断は禁物。
肝臓の病気の進行を知る重要な指標だからだ。


ASTとALTの値のどちらかが「30」を超えていると、肝機能障害が疑われる。
これらの値は肝臓などの細胞に含まれる酵素の濃度。
肝臓の細胞が壊されると上がる。
高いほど炎症の程度がひどいということを示す。
さらに、血液中の血小板数が減少傾向にあると、肝疾患が進行していることがより強く示唆される。

肝臓は「沈黙の臓器」。
障害を起こしていても、症状に表れにくい。
血液検査や問診などで早期に病気の兆候を知り、進行を食い止めることが重要だ。
実はASTとALTの正常値は医療機関でかなり差がある。
基準の違いで肝機能障害が見過ごされている可能性がある。
肝機能障害がかなり進むと、今度はALTの値が正常値以下になるので、この値が低いだけでは異常はないと判断できないので注意が必要だ。

慢性の肝炎が進行し、肝臓の細胞の破壊と再生が繰り返されると「線維」というたんぱく質が増え、肝臓の組織が硬くなり、本来の機能が失われる。
これが肝硬変だ。
元の状態には戻りにくい。
 
肝硬変になると、ホルモンの代謝異常で、手のひらが斑点状に赤くなったり、胸などで血管がクモの巣状に浮き出たりする。
肝機能が低下し、胆汁の成分ビリルビンの処理がうまくできなくなると、黄疸になる。

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肝臓に脂肪が過剰につく脂肪肝の人は、症状はほとんどないが、動脈硬化を誘発し、心疾患などのリスクが高くなる。
アルコールを飲まない人でも、肥満や糖尿病だと脂肺肝が進みNASH(非アルコール性脂肪肝炎)になり、さらに肝硬変につながる恐れがある。
 
肝機能を回復させるには、運動や食事制限で脂肪を減らすこと、アルコールを控えることが重要だ。
ただ、日本人の肝硬変の原因の7~8割は肝炎ウイルスだという。
一生に一度はB型、C型などの肝炎ウイルス検査をしたほうがよい。
40代以上で、輸血の経験があり、家族に肝臓病患者がいる人は肝炎ウイルスを保持している可能性がある。

肝機能障害を調べる検査項目は多岐にわたる。
血液検査などで肝機能障害が疑われる場合は、肝臓の専門医に診てもらうことが大切
だ。

まとめ
肝機能障害が起こっているかも
① ⬜︎ 血液検査でASTとALTのどちらかの値が30以上
② ⬜︎ からだがだるく疲れやすい
③ ⬜︎ 食欲がなく吐き気がする
④ ⬜︎ 発熱がある
⑤ ⬜︎ 手のひらが赤くなる
⑥ ⬜︎ 胸にクモの巣のように広がった血管が見える
⑦ ⬜︎ 男性で乳房が大きくなる
⑧ ⬜︎ 尿の色が濃くなる

①だと肝臓に何らかの異常があります。
加えて、②~④のどれかにあてはまれば、急性肝炎の可能性があり、とくに④はA型と
B型の急性肝炎でしばしば見られます。
⑤~⑦はホルモンの代謝異常を示し、肝硬変の比較的早い時期の症状です。
⑧は褐色尿といい、肝機能の低下が進んだ黄疸の症状です。
ただ、症状が出るのは、急性肝炎か進行した肝障害(肝硬変)で、慢性肝炎の場合、症状がでる人もでない人もいるので、①が1年以上続くようなら、肝臓の専門医に相談しましょう。


 
日本肝臓学会のサイト
http://www.jsh.or.jp
このサイトで、全国の肝臓の専門医がいる病院が分かる。
さらに、同学会が作る「慢性肝炎理解のための手引き」では、慢性肝炎の原因や診断、治療法などについて詳しく解説している。
手引きは、同サイト内からダウンロードできる。


参考
朝日新聞・夕刊 2013.8.22