健康診断 ここに注目

健康診断 ここに注目 基準値 ≠ 正常値/数値の変動が重要

職場で受ける健康診断をどう生かせるかは分かりにくい。
ただ、自分の体の状態を知るこの通信簿を正しく活用できれば、健康づくりに役立つ。
データをどう読み、受診したらいいのか。ポイントを専門家に聞いた。

「総ビリルビン(基準値0.2~1.2)が1.4って何が異常なんだろう。病院に行かなきゃいけないかな」。
都内勤務の40代の男性は会社の健康診断の結果を受け取って悩んだ。
γ―GTPなら酒が影響しているらしいと聞いたことがあったが、総ビリルビンって知らない項目だ。
 
ずらりと並ぶアルファベット項目と数値を理解するのは難しい。
また、それぞれの基準値に入っていないと慌てがちだ。
 
基準値は健康な人の平均値で、正常値ではない。
これを超えるか超えないかばかりを心配するのは誤り。
基準値への過剰反応は禁物だ。

個人差があるため、基準値を外れても健康な人がいれば、基準値内であってもどこかに異状を抱えた人もいると覚えよう。
 
むしろ重要なのは過去の検査数値と比べて違いを分析すること。
数値が大きく変動しているなら基準値内であっても、体に何らかの問題が起きていかねない。
経年変化で気になる項目があれば、かかりつけ医師に相談しよう。
 
冒頭の男性の総ビリルビンとは血液の中の赤血球が寿命を終えるときにできる物質の量。
肝臓の病気を判断する項目だ。
医師に相談したところ、前年値も変わらず、高めの体質の可能性があるとして「様子を見よう」と指示を受けた。
見比べたいのは毎年の健康診断の項目。
大切に健診結果を保存してこそ意味がある。
 
特に肝臓は悪くなっても痛みを感じにくく、沈黙の臓器といわれる。
手遅れになることもある。
肝臓障害の関連項目はほかにγ―GTP、AST(GOT)、ALT(GPT)がある。
例えばγ―GTPだけが高値を示した場合は、アルコールの飲み過ぎの疑い。
酒を控えれば回復可能だ。
 
ただAST、ALTも一緒に前年の数値より100程度、上昇していると赤信号。
慢性肝炎、肝硬変などの疑いが高まる。
 
コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、LDL(悪玉)コレステロールは心臓病や脳卒中に関連する動脈硬化の状態を知る項目だ。
コレステロールが高いと狭心症心筋梗塞脳梗塞を引き起こす危険性がある。
基準値を下回る低さだと貧血、甲状腺機能亢進症、肝臓病が疑われる。
3つの中でHDLだけの数値が低いと高血圧や糖尿病、肝硬変を引き起こしやすい。
 
各項目と別に、総合判断では項目ごとに異常なし、経過観察、要精密検査、要治療などと書いてある。
でも「要精密検査とあっても経過観察なら無視。要精密検査ならインターネットで調べてみて、必要そうなら病院へ」(通信大手の男性、40代)という人もいる。
これでいいのか。
 
しかし、素人判断は危険だ。
要精密検査は問題ありの意味。
必ず医師の診察を受け、原因を突き止める必要がある。
ネットなどにあふれる情報は参考程度にとどめよう。
 
病院で再検査を受けたことで思わぬ病気が見つかることもある。
ある女性(50代後半)の場合、LDLコレステロール値が高く、健康診断で要精密検査の指示を受け内科を受診した。
肥満でも過食でもなく、症状はない。
精密検査を受けたところ、甲状腺機能低下が見つかり、橋本病と診断を受けた。
放置すると認知症の原因になりかねない病気だが、投薬などの治療を始め、快方に向かっているという。
 
痛みや違和感など症状が出てからでは手遅れになることもある。
血液や尿検査技術は急速に進んでいる。もう一度、健康診断結果を放っていないか、見直してみよう。

参考・引用
日経新聞・夕刊 2017.11.29