コレステロールの摂取目標量が撤廃

卵1日1個はウソ?  コレステロールの真実  摂取目標量が撤廃されたワケ

健診のなかでも、コレステロール値は引っかかる人が多い項目だ。

コレステロールの目標量がなくなったワケ
「食事摂取基準」というものがある。
これは、日本人が健康を維持・増進するために摂取するべき各栄養素やエネルギーの基準量で、厚生労働省により5年ごとに発表される。
2010年版では、コレステロールの目標量は、成人男性は1日750mg未満、成人女性は1日600mg未満だった。
しかし、2015年版では、コレステロールの摂取基準(目標量)がなくなった。
 
コレステロールは体内で合成できる脂質で、食事で摂取するコレステロールの影響は少ないということが分かってきた。
摂取目標量を決める科学的根拠が少ないため、最新版の食事摂取基準では、コレステロールの目標量がなくなった。
 
食事からの影響が少ないというのは、具体的にはどういうことなのだろうか。
 
実は、私たちは肝臓で多くのコレステロールを合成している(体重50kgの人で1日当たり600~650mg)。
これは、意外に知られていない。
コレステロールは、細胞膜や胆汁酸、ホルモン、ビタミンDをつくる材料になる成分で、毎日新たに一定量必要になるため、食事だけに頼らなくていい仕組みになっているのだ。
 
食事でとったコレステロールのうち吸収されるのは、体内でつくられるコレステロールの3分の1~7分の1程度にすぎない。
また、コレステロールは食事でとる量が少なければ体内で多く合成され、食事でとる量が多ければ、少なく合成される。
常に一定量が保たれるようになっているため、食事からの影響は少ないのだ。
 
つまり、「食事摂取基準」からコレステロールの摂取目標量がなくなったのは、健康な人においては、食事中のコレステロールの摂取量と血中コレステロール値の相関を示す、十分な科学的根拠がないことが分かったためだ。

今、異常がなくてもとり過ぎに注意したい人も
コレステロールを多く含む食品として、もっともよく知られているのは卵だ。
鶏卵1個には210mgのコレステロールが含まれていて、確かに多い。
かつて、卵は1日1個までと常識のようにいわれてきたため、それを守っている人も多いだろう。
 
体内でコレステロールを合成する量や使われ方には個人差があり、遺伝も影響する。
つまり、コレステロールを食事でどれくらいとるべきかは、人による。
健康な人はむやみに制限する必要はない。
しかし、既に高コレステロール血症と診断されている人や、親が高コレステロール血症の人は、とり過ぎには注意したほうがいい。
 
日本人間ドック協会の調べによると、高コレステロールは、健診で引っかかる人が非常に多い項目だ。
しかも、近年急増している。
年代的には、40代、50代は要注意だ。
そもそも、コレステロールは体内で合成されるため、摂取不足で欠乏症が出ることはない。
つまり、コレステロールは本来たくさんとらなくてもいい栄養素だといえる。
逆に、制限がなくなったからといって、卵をやみくもに、例えば1日に3個も4個もというペースで毎日食べ続けていいかというと、そういうわけでもなさそうだ。
 
卵はコレステロールが多いため、コレステロールの摂取量を制限している人は、卵を食べなければ上限が守りやすくなる。
もっとも、卵は血液中のコレステロール値に影響しないという報告もある。
これは、卵黄に含まれるレシチンに、LDL(悪玉)コレステロールを減らして、HDL(善玉)コレステロールを増やす働きがあり、余分なコレステロールが血管に沈着するのを防ぐためと考えられている。
 
卵はなにかとやり玉に上げられがちだが、コレステロールが多い食品はなにも卵だけではない。
卵は安くて栄養価が高い食品であるという側面もあることは覚えておきたい。

●食事がコレステロール値に与える影響は少ない
●とはいえ、高コレステロール食品のとり過ぎには注意したほうがいい(特に、高コレステロール血症の人や親が高コレステロール血症の人)
●卵は適量摂取を心がける
 
これらの点をふまえて、食生活を見直してみてはどうだろうか。

参考
日経Gooday 2016.10.3